24話
アスレチック行った。股裂けた。
§
「おいおい何の音だ?」
カーテンを開ける藜の目に、遠方で立ち昇る火煙が映る。
にやりと笑う彼を見た笠羅祇は、よっこらせ、と立ち上がり刀を担いだ。
「来たか?」
「ああ。出るぞ笠羅祇」
「へいへい」
準備を始める二人の元に、慌てた部下が扉をノックし入ってくる。
「っボス!爆発です!」
「分かってる分かってる。俺と笠羅祇は今から出るから、お前達はこの場所を死守しろ。と言っても、ここにはあまり来ないだろうけど」
藜の予想では、奴等が攻めてくるとしたら恐らくここではなく、紅が守っている電力施設だと考えていた。
「うすっ。姉御の元には何人送りましょう?」
「いや、行かなくていいよ。あいつ等は一つの隊として完成してるからね」
「ああ。下手に助けに行くと、巻き込まれて主等が死ぬぞ?」
「う、うっす!」
ビシッとスーツを着こなし、ロングコートを羽織る藜と笠羅祇。
部下は二人の歩き出しに合わせて頭を下げ、扉を開けた。
その先に続くのは、ボスの復讐を見送る、部下達による壮大な花道。
「いってらっしゃいやせ‼」
「「「「――ッいってらっしゃいやせ‼」」」」
「……おう」
ビリビリと響く激励を闘志と殺意に変え、藜は怨敵との邂逅を夢見て、口角を獰猛に歪めた。
§
場所は皇居前発電所。
人の気配が全くなくなったその場所で、紅は一人空を見上げ、ゆったりと紫煙をくゆらせていた。
ポケットの中でなる携帯を取り出し、煙草を地面に捨て踏みつける。
「どうしたボス」
『いや何、死んでないかと心配でね』
「切るよ」
『悪い悪い、冗談だよ。猿はまだ来てないみたいだな』
「……丁度今、私の美貌に惹かれて集まって来たよ」
電力施設を囲む様に突如として現れた生体反応を感知し、紅は眼光を鋭くした。
『お、そうかい。それじゃあ、なるべく施設を壊さずに頑張ってくれよ』
「善処するよ。そっちも頑張りな」
『ああ。……死ぬなよ』
藜の真面目な声に、彼女は吹き出す。
「あははっ、誰に言ってんだよボス?私を信用できないって?」
『何を言う、切実な願いだよ』
「そんな事を考える前に、あんたにゃやらなきゃいけない事があるだろ?」
『……そうだな。お互い死なないよう頑張ろうや』
「ああ」
通話を切った紅は、一つ伸びをして新しい煙草を銜える。
バチッ、と電気が走り、先端に火が付いた。
「すぅぅ、ふぅ~……よくもまぁぞろぞろと。……(百、いや、百二十はいるな)」
探知圏内に入った敵の数を正確に割り出す。
彼女は魔力探知と属性を組み合わせることで、探知可能な範囲を大幅に広げ、且つ生物の生体電気を感じ取ることが出来る。
膨大な魔力量を誇る彼女の索敵範囲は、実に半径三百mを越えるのだ。それは電力施設を丸ごと覆える程。
三百六十度どの角度から近づこうと、紅にはその動きが手にとる様に分かる。
正面から下卑た笑みを浮かべ歩いてくる赤ゴリラに、獰猛な笑みを返す。
「ようこそ地獄へ。エテ公諸君、と、犬畜生」




