15話
――三日目
折り返し地点にて一度合流した千軸隊と亜門隊は、互いの情報を交換していた。
「加藤さん、あの人ヤバいですよ。Lv6くらいあるんじゃないですか?」
「我々の保護した人達も強者ばかりだった。ただこれは喜ばしいことではない。そうならざるを得なかったという事だからな。
現にここまで来て救助できたのは、たったの七人だ」
「うちもネカフェ組と加藤さん除けばゼロですからね」
一体どれ程の人間が食い殺されたのか、想像もつかない。
しかし今は亡くなった人のことを考えている暇は無い。一人でも多く、生存者を救わなくてはいけないのだから。
二人は引き続き、情報のすり合わせを始めた。
そして彼等とは別に話し込む二人の姿も。
「猿ヤバくね?」
「ん。巣に行ったけどもぬけの殻だった」
「あんま一人で危ない事すんな。奴等相当頭が切れるぞ」
「ん。ごめん」
「許す。……俺の予想では、猿はコボルト族を使役してる。
あとは猿の階級だな。茶色が雑兵、赤黒いのが部隊長、んで白い斑模様が王。
特区の中の強い人間には、監視の目がついてると思った方がいいぜ」
「ん。王は慎重で頭が良い。それくらいする。逃げ足の速さから見て、命令伝達系統も完成してる」
思った以上の強敵に、二人共唸る。
「……でもまぁ、自衛隊には伝えたし、藜組にも伝えた。藜さんが狙ってるのそいつだし、ぶっ殺してくれるでしょ」
「……ノエルも、藜なら大丈夫だと思う。多分ノエルより強いし」
しかし、とノエルは考える。
「ノエルはさ、俺と出会ってから、猿に会ったことあるか?」
「見つけた事はある。でも捕まえれた事はない」
「……お前、ちゃん言えよそういうの」
「だって、……殺せなかったの恥ずかしいもん(ボソ)」
(うっ)
頬を膨らませ拗ねる彼女の可愛さに、東条は何も言えなくなってしまう。
そして彼女が引っかかる点も、そこなのだ。
ノエルは思い出す。猿を見つけて全力で追っかけた時のことを。
奴等は決まって、見つかると物陰に隠れるのだ。
そして数舜後にその場所を見ても、猿の姿は無くなっている。
代わりに、呪術的な画が描かれた石を残して。
恐らく、というか確実に、何らかのcellの力。間違いなく危険。そこら辺のモンスターなら、地の底まで追いかけ惨殺しただろう。
しかし初めて猿の巣を襲撃した時に交わした、白猿との暗黙の不可侵条約。
睨み合いで結ばれたこの条約がある内は、猿共も監視はすれどちょっかいはかけてこない。
今までは白猿との死闘になるリスクを考え、それで妥協していたのだ。
だが自分が人間側についた以上、奴の存在は脅威でしかない。これを機に、藜に殺してもらえれば万々歳だ。
そしてその為には、白猿のcellに関する情報をできるだけ詳細に人間サイドに伝える必要がある。
ノエルは今まで見た情報を頭の中で整理しながら、対白猿を想定してこれからの自分達の行動を組み立て始めた。
今日から9話くらい、2日に1回投稿になりやす。




