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Real~Beginning of the unreal〜  作者: 美味いもん食いてぇ
4章

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196/1071

64

 

 ――「おまたー」


「ん」


 数分もかからず返ってきた東条を確認し、ノエルは立ち上がる。


 二人が向かって来るのを確認し、縛られている者達も再び呻き始めた。


 しかし、


「ちょっと寒いからこいつらの上着借りたいんだけど」


「……あげたの?」


「いや、ちゃんと後で返してもらうよ」


「……ならいい」


 彼等のことなど当然の様に無視し、東条は寒い寒いと肌を摩る。


 一度としてまともに取り合おうとしない二人に対して、仮面達も怒りよりも疲れが勝ってしまっていた。


「なんだなんだ。せっかく一緒に選んだのに、って悲しくなったか?お前も可愛いとこあんじゃおいっ⁉」


 ピエロのコートを引き千切って投げ渡すノエルに、苦言の眼差しを向ける。


 彼女はふんすと鼻を鳴らし、ようやく簀巻き達に目を向けた。


「アジトまで案内して」


 唐突にカメラを向けられたピエロは一瞬唖然とするが、猿轡を外されたと同時に溜まりに溜まった怒りを爆発させた。


「テメェ等只じゃ済まさねぇ‼殺すッ、ゼッテェ殺してやンゴっ⁉――」


「うるさ」


 騒々しさに耐え切れず、仮面をぶち抜いて木片を口に突っ込んだノエルは、次いで下っ端にカメラを向ける。


「教えてくれたら、生きたままモンスターに食わせるのはやめたげる。早い者勝ち」


 その言葉に、下っ端達は自分に待っている未来を察す。

 怒りなど霧散し、恐怖と懇願に俺が俺がと身を捩る。


「はい君」


 一際激しくアピールした一人が猿轡を外され、歓喜の表情を浮かべた。選ばれなかった他は絶望している。


「お、教えます!教えますからっ、命だけは助けて下さい!」


「んー」


「――ッ‼(こいつッ)」


 部下の醜態に激怒するピエロだが、今の彼には威厳も何もない。部下が言うことを聞くはずもないのだ。


「まさこれ持って」


「結局俺が運ぶのかよ……」


 簀巻きから伸ばした蔦を、一本に纏めた物を渡された。歩けば全員が引き摺られてついてくる。


 運び方が雑にも程があるが、こいつらに同情することなど何もない。


 下っ端の言う道を進もうと彼等に背を向けた、直後、


(舐めてんじゃ、ねぇッ‼)


 バレないよう静かに形成され、打ち出されたた二本の水の槍が、東条の背中を捉えた。


(ッ死にやが……は?)


 ピエロが幻視したのは、貫かれ、血を吹き出す東条の姿。


 しかし実際に目に映ったのは、背中に衝突すると同時に弾け飛んだ、水魔法の残骸であった。


「魔法食らったの久々だわ~!うわ、穴開いちゃってんじゃん。濡れたし!」


「この程度なら強化しなくても怪我で済んだ」


「怪我はやだよ」


 魔法が直撃したにも関わらず、楽しそうに会話する二人。

 その異質さに、ピエロはようやく恐怖を感じたのだった。


 細やかな実験を終えた東条は、無言でピエロに近づき膝を曲げる。

 慌てて形成される水魔法を平手打ちで叩き壊し、そのまま無言で髪の毛を掴み、丘の縁まで引き摺って行く。


「面倒臭いから、抵抗しないことっ」


「――っ⁉」


 言うが早いか、ピエロの頭部を水面に押し付けた。


 数秒藻掻き苦しませた後、引き上げる。


「――っブふっ、グフゥ、ブフッ」


「……抵抗しないこと」


「――っ⁉」


 ピエロは二度目の潜水の後、また引き上げられる。口に木片が詰まったままのせいで、全く息ができない。


 脳内を支配するのは、何の躊躇いもなく水攻めをするこの男への恐怖と、焦り。


「抵抗しないこと」


「んんッ――っ‼」


 三度目の潜水の瞬間、ピエロは必死に魔力を練った。


「……おお」


 その結果に、東条が少しだけ驚く。


 彼の顏の周りだけ、水が避けていた。他の場所に顔を押し付けるも、またも避けられる。


 精密且つ、大胆な魔法操作技術。荒く鼻呼吸を繰り返すピエロを、純粋に勿体ないと感じた。


「……抵抗しないこと」


「ブガっ⁉」


 足元のぬかるんだ土に、顔面を押し埋めた。





 ――「大人しくなってくれて良かったよ」


 完璧に戦意喪失し、茶色く汚れたピエロを引き摺って元の場所に戻る。


 待機していた他の簀巻きは、拷問とも呼べる光景に声すら出せなくなっていた。


「そうだ。お前水魔法使いなら服の水とれんだろ?」


「……」


「どーもどーも。んじゃ行くか」


「ん」


 煩わしい喧騒が無くなり、心地よい静寂が訪れた後、何事もなかったかのように歩を進める二人であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらずの容赦なさと手際の良さ。 そして自棄にもならず勘違いもせず、 人としての在り方でいられるのが 一番凄いのよ、あれだけの経験をしたのにね。 相手の提示した報酬からランクを下げるあた…
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