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第三二話

――――奥様、女の子ですよ!」


 誰かの、声がする。知らないいい年そうなメイドの声だ。


「おぎゃあ、」


 あれ、今声上げたの、私? ……いや、私以外、いないはず。

 さっきまでのレムとのやりとりも覚えている。私が、天手鎮花だったのも覚えている。

 そして、メイドの腕の中で、私はしっかりと今世の母をその目にした。

 私はより彼女を認識するためにメイドの腕の中で暴れた。


「おぎゃぁ、おぎゃぁああ!」

「きゃっ、暴れないで? 奥様、ほら抱きしめてあげてくださいな」

「え、ええ……」


 そっと私はメイドの腕の中から今世の私の母親であるリリスフィア・ヴィーゲンリート・アマリュリスの腕の中に自分はすっぽりと収まる。リリスフィアを見て、本当に私がレムに転生したのを自覚させられたのと同時に、赤ん坊のころから記憶がある状態にこれから絶望的な現実を突きつけられるのに戦うためにも、彼女をよりしっかりと見つめた。

 ……私、本当に赤ちゃんになったんだな。


「……ああ、可愛い。私の愛しい赤ちゃん」

「あぎゃ、うぅっ」


 言葉がうまく喋れないから、今の私は本当に赤ちゃんなんだと再確認する。


 ――――私、本当に転生できたんだ。レムとして、彼女本人として。


 転生したら急に赤ちゃんらしからず、普通に喋れる、なんてすごいパターンではなかったのに少なからず感謝した。だって、いきなり赤ちゃんが普通に喋り出したら怪談物の恐怖だよ。

 今ははじめての発声を連続することしかできないのは当然で、それでもリリスフィアの反応を見ようと私はリリスフィアに両手を伸ばした。


「おぎゃぁ、おぎゃぁ」


 ようやく落ち着いてくるとリリスティアが嬉しそうに微笑んでいた。


「あぎゃあ、うー、あぁっ」

「ああ、私の愛しい子。貴方の名前は決まっているのよ……レークヴェイム、お父様が決めてくださった名前よ。嬉しいでしょう?」

「あぁ、あぁいっ」


 あ、しまった。返事してるっぽい感じに言っちゃったっ!! だ、大丈夫、か……?


「ああ……お父様も、きっと貴方が産まれてきてくれたことを喜んでくださるわっ」


 リリスフィアは私の頭を優しく撫でると、その瞳から小さな涙が落ちた。

 ……私も、これから自覚していかなくてはいけない。

 レークヴェイム・オルトリンデ・アマリュリスとして。

 私の復讐劇は、転生した今日からスタートするんだから。

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