第二三話 赤ん坊生活の苦悩と決意
私はベビーベットに寝っ転がりながら、私はぼーっと天井を眺めていた。
……レムに転生したのはいい物の、髪の毛とか目の色はそのままなのは、まあほっとしたところはある。で、異世界転生物にありがちな本当の異世界転生を経験したわけだけれど。
「あぎゃぁ、うぅ……っ」
「あら、お腹空いたの? ちょっと待ってね」
リリスフィアに抱き上げられ、ベットに座ると彼女は服を軽く捲り右胸の晒す。
――これだよ!! 赤ちゃんからの転生で一番精神ダメージあるの!!
転生したアニメなり漫画なり小説って、みんなどうやって乗り切ってるの!? え!? 転生前ならそういう個人的な記憶なんて持ってるわけはないけど、持ってるわけはないけれども!! 赤ちゃん期から記憶ある人、この羞恥を耐えられる猛者はなろう主人公なら、みんなこなしてきたんだろうけども……ああ、精神的羞恥がやばい、やばすぎる。
前世、シナリオライターの嫁だった女が、ゲーム世界に転生した悪役令嬢の母の母乳を飲むとか……精神的に、ハズイっ。
いや、確かに推しキャラの母乳を飲みたいなんて変態チックなことは、空吾と一緒に今どきのオタク男子高校生の性事情に突っ込んだ話題とか、いろいろ議論は重ねたことあったよ!?
あったけどさ、あったんだけどさ……っ、
「う、うぅ」
「どうしたの?」
――ええい、ままよ!! やるしかない!
「うー!」
「ふふ、お腹本当に空いていたのね、たくさん飲んでね」
私はリリスフィアの母乳を満足するまで飲んで、腹が満たされる。
――……背に腹は代えられないんだよ!! お腹が空くから!!
「レイクはいつも母乳を飲む時、顔が赤くなるわね? 季節的に暑くはないと思うのだけど……」
「う、うう! あー!」
「あら、お腹いっぱいで元気になった?」
「うー!」
リリスフィアがとんちんかんな発言はスルーだ。今はお腹を満たされた余韻なんかに浸らず、必死に純粋な赤ちゃんロールを行う。
シナリオライターの嫁として、転生した新しい自分として、こういう時の何かしらの魔法とか、二次創作で色々とみてきたじゃないか私! ゲーム世界だといったって、私がレムに転生したんだ。どんな展開が待っているかわからない。
後、一年か二年耐えれば、問題はないはず!! うん、切り替えていこう。
「……でも、レイクも私と似た青い髪よね」
「うぅ?」
リリスフィアが曇った微笑を見せる。
そうだよな、青髪はラディウスフロース王国では嫌われ者の髪色だ。
少なくともあのクソおやじであるエノクはレムが青い髪だったから差別していたわけだから、リリスフィアがレムに洗脳するきっかけにもなってくるんだろうけど。
……うーん、リリスフィアはレムが六歳になった時に洗脳するから、それまでの間にリリスフィアの好感度を上げておいて、洗脳させないようにしないと。
なんだかんだで、なんでリリスフィアがレムに洗脳するようになったのかはわかってないんだよな……続編の紺アマでわかったのかもしれないのかな。
それを知る術は今の私には持ってない。
だから、ここはリリスフィアにできる限り、優しく接するのが吉だな。
「あー!」
「……嬉しいの? レイクは」
「うぅ!」
私は満面の笑みでリリスフィアに笑って見せた。
くらえ!! 満面の悪役令嬢の笑顔を!!
「……そうよね、私とお揃いの髪だものね……っふふ」
「うぅ?」
「なんでもないわ、ありがとうねレイク」
さっきの曇った笑みから、喜色が見える笑顔に私は少なくともホッとする。
つまり、レムの代わりに私がリリスフィアのメンタルケアをしていけば、なんとかなっていくかもしれない。
リリスフィアはベビーベットに私をそっと置く。
「あー! うぅっ!」
「うふふ、レイクは本当に可愛いわねぇ」
「奥様、旦那様がお呼びです」
「ええ、わかったわ……またね、可愛いレイク」
チュッと、リップ音がほっぺから聞こえるのを聞いた後、リリスフィアは部屋から出て行った。
「うぅー……」
私は大の字になりながら目を閉じてうーんと考える。
とりあえず、今の私の目標はリリスフィアを攻略しつつ、勉学を完ぺきにこなすことだ。学生時代には主席も取っていたことはあるから、問題はないはず……よし、やってやろう。
レムが死ぬ未来を回避するためにも、そしてどこかで転生しているレムと出会うためにも、頑張るぞー!
「うー!!」
私は軽く手を上げて強く決意したのだった。