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第一九話 辿り続ける記憶たち クラース編

「カレフは教えてくれないの?」

「……愚生は、この回廊での必要以上の吐露はできません」

「そう……じゃあ、カレフは私を道案内とかしてくれたりは?」

「……いえ、もしもに備え奥方様が記憶の回収で必要な場所へ向かうための開錠を許すために参りましたので、それは出来かねます」

「か、開錠……?」

「……はい、外に出られなかったのはおそらく女神様が愚生を奥方様に会わせるために、空間の施錠されていたのかと」


 じゃあ、つまりあの女神は、追憶の回廊っていう家の風除室に私を入れさせたけど、家の中の鍵はカレフが持ってるから待っててねーとカレフに全投げした、ってことか?

 私にやれと投げておいて? 抜けてるのかあの女は。

 というか、どんだけおおざっぱなんだ、あの女神は。

 

「それでは、少々お待ちを」

「ええ、わかったわ」


 カレフは片手を出して、息を吹きかける。

 すると、カチャンと音がした。


「……それでは、奥方様」

「ええ、ありがとう」


 カレフは礼をして、スーッと消えていった。

 きっと今のが開錠、ということかな。

 それじゃあ、次……は、外に出られるようだしクラースかな。

 フィリーネは主人公なんだし、一番最後に取っておきたい。

 だとしたら、クラースの記憶は外の温室かもしれない。

 よし、行ってみよう。

 


 ◇ ◇ ◇



「……よし」


 花々が美しく咲いている温室には、真っ白のテーブルとイスが置かれている。

 クラースと最初に出会った時と一緒だ。

 ブン、と視界がテレビ画面が映像が乱れたように映るとそこには幼いレム嬢とクラースが一緒に座っていた。


『ねえ、クラース』

『なんです?』

『私の髪は、この国では嫌われて当然だというのは知っているわ』

『……はい』

『いっそのこと、女王が先祖返りをしてしまった(わたくし)を処刑しても問題はないのではないかしら』


 レム嬢は紅茶を一口、口にする。

 クラースは目を見開いて、驚いた顔を見せた。


『なぜ、そんなことを』

『お母様が、最近お父様と仲が悪いことくらい、気づいているわ。それに、メイドたちも噂話をしている……お母様が(わたくし)を抱きしめてしまうくらいにね』

『……っ』

『ねえ、クラース。この屋敷の中で貴方だけは私も寄りかかれるの……こんなことを口に出せるのは、きっと貴方みたいな人が他にいなかったからだとも言える』


 レム嬢は紅茶の水面を見つめながら、ぽつりと呟く。


『そんなことはございません、私は…………!!』


 クラースは席から立ち上がると、レム嬢はカップをソーサーに置く。


『クラース、今は何も言わないで。貴方が徒花の忌子にも優しくしてくれる人なのなら』

『しかし……』

『今は、席に座って。お願いクラース』

『……はい』


 クラースは席に座ると、レム嬢はうっすらと微笑む。

 それを見たクラースは、とても切なそうに目を細めた。


『ねえ、クラース。貴方だけは、お母様には優しい嘘はついても裏切りの嘘はつかないで。もし、する日がくれば(わたくし)は貴方を殺すわ』

『……その時が来ることはないと私は思いますが』

『そう願っていて、クラース。貴方には感謝してもしきれないくらいの恩があるのと同時に、最大の助言者だと私は思っているわ』


 その時のレム嬢の表情はとても子供とは思えない穏やかで優しい笑みだった。

 その二人のやり取りを見ている最中に胸に強烈な激痛が走る。


「う、ぁああああ……!!」


 私は涙を流しながら蹲ってからゆっくりと倒れた。

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