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弟を探しに逆さ虹の森へ

作者: 千代乃
掲載日:2018/12/22

あるところに、お姉さんと小さな弟がいました。

ある日、弟が出かけようとするので、お姉さんは「どこにいくの?」とききました。

弟は、「逆さ虹の森だよ」と答えました。

お姉さんはそんな名前の森のことを聞いたことがありませんでした。

「それはどこにあるの?」とお姉さんが聞くと、

「すぐ近くだよ」と弟は公園の方向を指さして答えました。

「そう。それならいってらっしゃい」とお姉さんは安心して言って、

「お昼には帰ってくるのよ」

と付け加えました。


しかし、お昼ご飯になっても弟はかえってきませんでした。

「おかしいわね」

とお姉さんは思いました。

お姉さんは近くの公園に行きましたが、そこには弟はいませんでした。

「きっと、お友達の家でお昼ご飯をいただいているのだわ」

とお姉さんは思いました。


しかし、おやつの時間になっても弟は帰ってきませんでした。

「おかしいわね」

とお姉さんは、また思いました。

近くの公園にまた行きましたが、弟はやはりいませんでした。

「きっと、お友達の家でおやつをいただいているのだわ」

とお姉さんは思いました。


しかし、夕方になっても弟は帰ってきませんでした。

「おかしいわね」

とお姉さんは思いました。

近くの公園に行きました。誰もいませんでした。

大きな声で弟の名前をよびました。

心当たりのあるお友達の家にも行ってみましたが、お友達は弟には会っていないと口をそろえて答えました。

お姉さんはとぼとぼと公園にもどりました。

ベンチに座って「わたしの弟はいったいどこにいったのかしら」と思いました。

やがてお姉さんは心配でたまらなくなり、しくしく泣きだしてしまいました。


お姉さんがしくしく泣いていると、「どうして泣いているんだい?」という声がしました。

お姉さんは、周りを見渡しましたが声の主は見つかりません。

すると、足元から「どうして泣いているんだい?」とまた声がしました。

みると、小さなへびがお姉さんを見上げていました。

お姉さんは驚きました。


「どうして泣いているんだい?」とへびがまた聞きました。

お姉さんは驚きながらも、「弟がかえってこないの。公園にもいないし、お友達の家にもいないのよ」と答えました。

「弟はどこにいるんだろうね」とへびがいいました。

「わからないわ」とお姉さんが答えました。

「逆さ虹の森に行くといってでていったきり、もどってこないの」


「逆さ虹の森だって?」

へびは驚いたようにいいました。

「逆さ虹の森を知っているの?」とお姉さんはききました。

「知っているとも。おれのすみかだよ。ついておいで」

そういってニョロニョロと公園の奥のほうへすすんでいきました。

お姉さんはへびの後をついていきました。生垣をくぐると、そこにはコンクリートでできたドーム型の遊具がありました。ドームはうずまき状にできていて、表面がでこぼこしていました。森の絵が描いてあり、ぐるりと虹が描かれています。

「こんな遊具があったかしら」とお姉さんは思いました。

ドームの中は真っ暗で、何も見えませんでした。お姉さんは弟の名前をよびましたが、返事はありませんでした。

「この中に弟がいるのかしら?」

お姉さんはへびにききました。しかしへびの姿はどこにもありませんでした。

「どこにいったのかしら?」とお姉さんは思いましたが、弟が心配なのでドームの中に入ることにしました。


お姉さんは、手と膝をついてドームをくぐりました。中は真っ暗です。

中をすすんでいくと、木の根っこのようなようなものが行く手をふさぎます。

木の根っこの間をなんとかすすみながらゆくと、ようやく光がみえてきました。

木の根っこの間から這い出すと、そこはたくさんの木の根っこがとびだした広場になっていました。


「ここはいったいどこかしら」

お姉さんはつぶやきました。

「根っこ広場だよ」と声がきこえました。

お姉さんは、周りを見渡しましたが誰もいませんでした。

「根っこ広場だよ。ここで嘘をついたらその根っこに捕まって、木の養分にされてしまうよ」

上をみると、コマドリがお姉さんに話しかけていました。

「私の弟を知らないかしら」お姉さんはコマドリにききました。

コマドリは首をかしげて、「知らないね」といいました。

お姉さんはいいました。

「わたしの弟が逆さ虹の森に行くといって出て行ったきり、かえってこないの。お昼になっても、おやつになっても帰ってこなかったの。公園にもいなかったし、友達の家にもいなかったの。わたしが泣いていると、小さなへびがやってきて、私をここに案内したのよ」

「へびだって?」コマドリは飛び上がりました。

「食いしん坊で、なんでもひとのみにしてしまうへびのことかい?そいつには気をつけな。お前さん、うかうかしてると、そのへびの腹の中におさまっちまってるかもしれないよ」

そう言ってコマドリは羽を広げて飛び立ちました。

「どうしても弟をみつけたけりゃ、ドングリ池にいくといい。よく澄んだキレイな池で、ドングリを投げ込むと願い事が叶うんだ」

お姉さんはドングリ池を探すことにしました。


しばらく歩いていくとキツネに会いました。

「どこに行くんだい?」とキツネは聞きました。

お姉さんは「ドングリ池に行きたいの」と答えました。

「この先のオンボロ橋を渡れば見えてくるよ。オンボロ橋は森を半分にわける大きな川にかかったつり橋なんだけど、気をつけて。今にも落ちそうなくらいボロボロで、落ちたら川におぼれて死んでしまうよ」

お姉さんはつり橋に向かって歩いていきました。


しばらく歩いていくとリスに会いました。

「どこに行くんだい?」とリスは聞きました。

「オンボロ橋をわたってドングリ池までいきたいの」

とお姉さんはいいました。

「ボクを手伝ってくれたら、お姉さんを助けてあげるよ」

とリスはいいました。

「妹のお誕生日にドングリをあげてびっくりさせようと思ったんだけど、どこに埋めたのかわからなってしまったんだ」

お姉さんは少し考えて「いいわよ」といいました。

お姉さんが隠してあるドングリを全部見つけると、リスは喜んで言いました。

「ありがとう。お礼にドングリをあげるね」

とお姉さんに一掴みのドングリをくれました。

お姉さんはドングリをポケットにしまうと、「妹さんによろしくね」といって別れました。


オンボロ橋につきました。ボロボロで今にも落ちそうです。

お姉さんは恐る恐る橋を渡りました。はるか下に川が流れています。

川の流れる音が「落ちてこい、ザアザア。落ちてこい、ザアザア」と聞こえます。

吹き上げてくる風が、「落ちてしまえ、ビュウビュウ。落ちてしまえ、ビュウビュウ」とあたります。

オンボロ橋が、「落としてやる、ガチャガチャ。落としてやる、ガチャガチャ」と揺れます。

お姉さんは必死に橋にしがみつきました。ポケットからひとつ、ドングリがおちました。

川の流れる音が、「落ちてきた、サラサラ。落ちてきた、サラサラ」と聞こえます。

吹き上げてくる風が、「落ちた、ヒュウヒュウ。落ちた、ヒュウヒュウ」とあたります。

オンボロ橋が、「落としてやった、カチャカチャ。落としてやった、カチャカチャ」と揺れます。

お姉さんは無事にオンボロ橋をわたることができました。


オンボロ橋を渡って少し歩くと、よく澄んだキレイな池がありました。

「これがドングリ池なんだわ」とお姉さんは思いました。

お姉さんはドングリをなげこみました。

「私の弟が、家に帰ってきますように」と目を閉じて願い事を言いました。

お姉さんが目を開くと、池の表面に波紋が広がっています。

ぷくぷくと、池の底から気泡が浮かび上がってきています。

やがて、とても大きなへびが姿を現しました。

「ここまでよくきたな。人間を食べるのはひさしぶりだ」

と大きな蛇はいいました。

「私の弟はどこにいったの?」とお姉さんはききました。

「家に帰るように願ったのだから、家に帰っているのだろう。お前は私の腹に入るのだがな」と大きなへびはいいました。

お姉さんはそれを聞いて、「私も家にかえらなくちゃ」といって走り出しました。


お姉さんはオンボロ橋を駆け抜けました。川の音も、風の音も、橋の音も聞こえませんでした。

「まてえ、まてえ」という声が後ろから聞こえてきます。

お姉さんは森を駆け抜けます。空のほうからも、「まてえまてえ」という声がきこえる気がしました。

やがて、木の根っこ広場にやってきました。

「まてえ、まてえ」という声が近づいてきます。後ろをちらりとみると、大きなへびがすぐ後ろまで迫っていました。

お姉さんは「待たないわ!待ったらたべられるもの!」といいました。

大きなへびは「食べないから、まてえ」といいました。

とたんに、木の根っこがへびをめがけて襲いかかります。

「しまった」とへびはいい、あっという間に木の根っこにからめとられてしまいました。


「ドングリ池にドングリは投げ込めたかい?」と木にとまったコマドリが聞いてきました。

「投げ込めたわ」とお姉さんは答えました。

「お願い事は言えたかい?」とコマドリは聞いてきました。

「いえたわ」とお姉さんはいいました。

「それなら、そこの木の根っこのトンネルをくぐってお帰り。願い事はかなっているよ」とコマドリはいいました。

「でも、きをつけて。トンネルの中では絶対に声を出してはいけないよ。振り返ってもいけないよ」とコマドリは付け加えました。


お姉さんは木の根っこのトンネルをくぐりました。両手と膝をついて、はいはいして進みます。

後ろから、「お姉ちゃーん」という声が聞こえました。

お姉さんはおもわず振り向きそうになりましたが、「振り返ってもいけないよ」といわれたことを思い出し、黙ってすすみました。光がみえてくると、後ろの声も必死になってきました。「いかないで、お姉ちゃーん」「おいていかないでー」と必死に訴えてきます。お姉さんが、光の出口にたどり着いたとき、「もう少しだったのに」という声がきこえました。それは「まてえ、まてえ」と空から聞こえていた声と同じものでした。


 お姉さんはドーム型の遊具から這い出しました。

 お日様は高い位置にあります。

 お姉さんはドーム型の遊具が、蛇がとぐろを巻いた形なのに気が付きました。

 お姉さんが生垣をくぐって公園に戻ろうとするとき、ちらりとふりむくと、ドーム型の遊具がなくなっていました。大きなへびの尻尾のようなものが、さっと木の陰に隠れるのがみえました。


 お姉さんはまっすぐ家に帰りました。

 時計をみるとちょうどお昼の時間です。

「ただいま」

 弟が帰ってきました。












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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)いや~凄くいいですね。絵本のような雰囲気があって、奥が深い。しかも子供が読んでもしっかりと世界観に浸れそう。今年の童話祭でみた作品のなかでもかなり気に入った作品になるかもです。作品全…
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