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皐月

ペンネームをかえました。

前回からの続きですが記憶があやふやです。

早いもんでもう5月。受験生特有のテストに追われた日々を私たちは過ごしていた。そんな部活も勉強も充実しててこれぞまさにリア充だよね☆と思っていた私は、机に足を折られる。




5月のある日

 机に足を折られる、なんと奇妙なことだろうか。机が自ら私に歩いてきて踏み潰したのか?いいや、違う。私が悪い。この世に100%はないと偉い人が言っていた気がするが、100%私が悪い。あれは掃除の時だった。



 今日も廊下をやろうかな、なんて呑気に机を持ち上げようとした時だった。その瞬間、私の机は持ち主である私の意志に反抗して足をスライドさせたのだ。そして、バランスを崩した机は私の足に、正確には左足の親指にクリーンヒットしたのだ。

「んんんんんんん!!!!!!!!!」

私は悲鳴と呻きの中間のような恐ろしい声を出したことを鮮明に覚えている。




「全治5週間です」

最寄りの整形外科によって告げられた残酷とも言える診断。しかも自然治癒。私は絶望した。部活に後れを取ってしまうという危機感が私の心をざわめかせた。

「じゃあ、これ松葉杖ね」

にこやかに渡されて、私は素直に受け取った。しかしこれは、地獄への一歩だったのだ……。



 松葉杖を使ってみて、なにより1番辛いのは脇。そう、脇。ともかく、擦れる。痛い。それに、全体重を支える手。皮がむけるんじゃないかというほどに痛かったのをまだ覚えている。


「大丈夫?荷物もつよ」

私はクラスに行動できる友達がいない状況だったので、移動教室の時はどうしたらいいのかわからなかった。しかし、この時話しかけてきた女子生徒Mの優しさに感涙した。心の中で。Mはこれから先どんどん頭がおかしくなっていくので、またの機会で書きたいと思う。

 ともかく、私はMのおかげで階段をクリアできた。ありがとう、M。



5月の下旬

 『ふるさと探求学習』なるものが私たち3年生の中の一大イベントであったと思う。なにを探求するのか未だによくわかってはいないが、私たちは五つのコースに散った。



ちなみに私は某自然遺産を散策するぞ☆みたいなドキドキワクワクのものに行く予定だったのだが、骨折するというハプニング中のハプニングに見舞われたので、なんとかセンターとかいう施設で工作をすることになった。

私の心は荒んでいた。せっかくの散策。私の足は無残にクラッシュ。無類の植物オタクの私は憧れの自然遺産を目と鼻の先にして鼻先から掠め取られたのだ。あぁ、泣いたさ。バスの中でやだやだやだ!!なんて頭の弱い子のように私は駄々をこねたのだ。あまりに酷い行動を取ってしまったので、さすがに割愛する。




「じゃあ、お前はここにいろ」

にっこりとダンディーな先生が微笑んだ。いつもは内心で「あぁ~~心がぴょんぴょんするんじゃぁ~~^」なんて叫ぶのだが、今日の私は全然トキメキもキラメキもなかった。心は黒く深く沈んでいた。あ、この表現小説に使えるかもしれない。

 アホみたいなことをぼんやりと考えていたら、目の前に1台の車が止まった。

「こんにちは。なんとか(ここは本当に覚えていない)センターのTです。今日はよろしくお願いします。」

「あ、はい。よろしくお願いします。天野です。」

中から出てきた年配のおじさんとぎこちない挨拶を交わした。そしてぎこちないまま、私は車に詰め込まれ、センターへと運ばれたのだった。



「着きましたよ」

「ありがとうございます」

ぎっこちねぇぇ!!なんて言葉を胸の奥にしまい込み、私は車から降りた。目の前には海と大きな施設。

「あぁ……みんなは楽しんでるんだろうなぁ……」

私のその声とほぼ同時に雨がパラパラと降ってきた。私ってば雨女か。初めて知ったよ。私を置いてさっさと進んでいたセンターの職員さんを追いかけて、私はセンターへと足を踏み入れた。




 「箸を作りましょう」

「……へあ?」

箸。ここまで来て箸。おーう、まじかぁ!!なんて素っ頓狂な声を胸の中で爆発させながらセンターのお兄さんの話を聞く。

「見ててね。ほら、こうやって……」

おおまかに言うと、かんなで木を削り、ヤスリをかけてコーティングを施し、さらにバーナーで加熱し、模様をつけるという簡単な作業だった。




「……完成」

ただひたすらに木を削るだけの作業なので割愛するが、まあ、上出来。特にバーナーでつけた市松模様とか今思うとエンブレムと同じだし最高なんじゃないかって思うほどだ。

 さて問題はここから。散策時間は2時間。私は集中して工作を30分で終わらせてしまった。あと1時間30分……私は途方にくれた。本は持ってきていない。植物オタクな私は暗記済の図鑑しか持ってきていなかったのであまりにも退屈だ。しかも足はクラッシュ。全くもって私は暇を潰すすべが見つからず、私は壊れた人形のような心持ちでぼんやりと座っていた。



 「これ、食べるかい?」

そんな私を放っておけなかったのか、センターの職員さんが私に1つのアル○ォートを差し出したのである。

「……いいんですか?」

ぎこちなく笑顔を浮かべ、私はそろりとそのクッキーだかチョコなんだか判別の難しいものを手にとった。

「退屈だろう、それでも食べて気を紛らわせなよ」

なんと、センターの職員さんは私の心を見抜いていたのだ(いやまあ普通に分かるだろうけど)。

「ありがとうございます!!」

もう女子力とか捨てた。思いっきり袋を破り、ガツガツと食べた。引かれてもいい。職員さんの気遣いをはやく食べたかった。こんな鈍臭い私にまでクッキーだかチョコだかわからないお菓子をくれてありがとう。忘れないよ。




 さて、空腹を満たした私だが。


 暇である。

 気づいたら私はバードコールという鳥を呼び寄せる器具を10分間鳴らし続けていた。これは完全にホラーである。海を眺めて小説のネタを考えても、すぐに気が散る。


「いちごただいま!!見てこれ!!」

1時間30分、私は干からびて過ごしていたが、親友が見せてきた森林の写真により一気に正気を取り戻した。主に妬み嫉みで。

「いや普通見せる!?見せないよね!!?」

思わず怒鳴ってしまった私を許して欲しい。だって、干からびてたんだもの。




 人の優しさに触れ、私は二度と骨折はするまいと思ったのであった。


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