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Pink in the trash  作者: 009
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初めての彼は

だいたいからして“カズ”という名前にいい思い出が無い。初めて付き合った男のニックネームがそれだ。腹立たしい。察しのとおり、良い恋愛ではなかったのだ。


中学三年の頃、女友達の半ば強制的なフォローあって交際が始まり(一応、告白されたのは私。)、付き合って二ヶ月ちょっとであっけなく振られた。理由は「受験勉強に専念したいから」。内心、そんなことなら初めから告白なんかするんじゃないよ!バーカバーカ!という気持ちではあったけれどまあ、彼は学区で一番偏差値の高い高校を目指していたし、時期的にも仕方なかったといえば仕方がなかったのだ。そんなわけで私もすっぱり諦めた。


季節は夏だったなあ。夏休みの最終日に、クラスの女子全員で花火遊びをしようということになった。行かなければよかったなあ。

勢いよく噴出す火の子の音に耳を澄まし、ひと夏の経験(キスしかしていない。)を振り返り、もう戻れないあの日々に心の中でそっと別れを告げていたというのに。

彼女はやって来たのだ。彼女というのはその“カズ”との間を取り持って、やたらと「私、応援しているからね!」と私に声を掛けてきたあの女友達のことである。


「別れちゃったんだってね。」

「そうなの。せっかく取り持ってくれたのに、なんだかごめんね。」


何がどのようにごめんなのか、もはや自分でも分からなかったけれど、一応言葉は返す。


「ところで…どうして別れたの?」


きたきた。居るよねえ、若くして、こういうオバサンみたいな興味本位かつ無神経な質問を繰り出してくる奴。

でも私は怒らないよ、心が広いからね。


「受験勉強に専念したいから、もう会えないって。」


するとどうだ、“心配そうな感じ”を繕っていた彼女の表情が、途端に歪んで、悪そうな笑みに変わったのだ。あれは私の知る“悪い顔”TOP3にランクインするレベルだね。(そんなことは、まあいっか。)


「へえ~、ニコちゃんは本当の理由、知らないんだ?」

「えっ何、本当の理由?」


今思い返しても、ことごとく性格の悪い女だ。


「実は私、ニコちゃんとカズが付き合う前から言われてたんだよねぇ。」

「何の話?はっきり言ってよ。」

「カズ、ニコちゃんと付き合う前にね、私に『ニコと別れたら次、俺と付き合って』って言ってきてたんだよ。」

「はあ?」

「ね、アイツ最悪な男だよね?ニコちゃんと別れてからすぐに私に連絡してきてさあ、『あの時の約束、守ってくれるよな?』だって!もちろん断ったけどね~。」


もう私の心の中は地獄絵図だよ。端から遊びとしか思っていなかった初めての彼、応援すると言いつ内心では私を見下し勝ち誇っていた女友達。なんなんだこのシチュエーション。韓国ドラマじゃないんだぞ。ふざけるな。

と脳内で憤ってはみても目の前のパーにはかける言葉も見つからなかったので、そっかぁそれはひどい話だ~、ちょっとトイレ~なんて適当な理由で公園を抜け出し、家に帰ってピィピィ泣いた。


よく分かっただろう、“カズ”という名前にいい思い出は無いのだ!もういやだ!

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