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終ノ怪
妖しげな灯りに照らされて、水面がきらりと煌くと、水底に朱と白の鱗をなびかせて魚たちは泳いでいく。
紅い鬼が作った箱庭で、一人魚たちに餌をやる。
毎日毎日、健康であるようにと願って手の中の緑の粒たちを水の中へと落としていく。
水面が静まり水鏡に変われば、自分の顔が映り込み、黒い両目で見つめ返してくる。
その黒い瞳の中に、梅の花は咲いてはいなかった。
そっと懐にしまってある小さな鞘を取り出した。
中には木で出来た退魔の剣。
あの強い光を何度も受けて目にしたせいなのか、梅の花は枯れたようで。今日も紅い鬼の機嫌も一段と悪い。
でも、それでも構わなかった。
もう傷つく誰かはいない。
傷つけようとする誰かもいない。
紅い鬼の機嫌の悪さも、恐れはあるけれど悲哀も感じられて、大丈夫ですからと宥めれば、口を曲げつつも怒りを収めるのだ。
魚が跳ねて水面が揺れる。
銀色の鱗が目の下で通り過ぎれば、消える直前の水面に映ったわたしの唇を掠めた。
思わずそっと口元に指をやった。
あの一瞬。あの感触と血の匂いが呼び起こされる。
そしてやはり、思い出すのだ。
狂っていてどこか嬉しげだった、妖しい銀の瞳を――




