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悠久なる創造主〈クリエイター〉  作者: 頴娃伺結有
狂った銃弾
3/7

狂った銃弾Ⅱ


聞いたことも無い名前である。元一級魔法具製作者と言う事は何故この普通科にいるのかがもっと分からなくなってしまう。


「関わるな。しかし、いない事にしないでくれ」

重くのしかかるように響くその言葉は生徒たちが白けるには十分な素材だったようだ。


そんなとき、一ノ瀬が手を挙げる。

「先生、何故アイギス・ファルゲイン君があんなに後ろに居るんですか?五十音順でしょう?どういう事でしょうか」


琴浜は一ノ瀬の発言に触れるようすもなく口を開いた。

「アイギス君は親の用事でこちらに来たそうですねぇ。親はどんな仕事を……?」

先生の目にはふざけていた時にあった眼の輝きが無くなっており、唯凄く怪しいひとに、それも九分九厘敵であると確定している人に向けるような、そんな目で睨む。


「学者ですよ。僕に知識をくれたのはあいつですから」

受け流す。そこには触れられたく無いのだろう。琴浜も遠い目をしたアイギスにそれ以上突っ掛からなかった。



そして白けた空気を元に戻そうと琴浜はぱんぱんと、手を叩き話題転換をする。

「はい、このクラスは周りの普通科のクラスとも少し違います。それは何処でしょうかw」


両手を重ねて右頬に持ってきている琴浜は男子生徒の数人を引き付けている。ぼーっとしているだけか、本当に見とれているのか、判らないがほっとこう。

「はい、葉隠君」

まず最初に挙手をしたのが葉隠だったので当てられるのは当然で

「普通とは違う。基本から外れている…プレイ。恐らく国内で唯一束ばk……がっ?!」


チョークが葉隠の額に直撃して、その衝撃で一度後ろにのけ反りそれから机に俯せになる形で気を失ったようだ。

顔を赤らめている琴浜が興奮するような話題であったのか。

判ったのはこのクラスでも少ない…居ないのではないだろう。


とぎれとぎれの息を繋ぐように深呼吸を何度も行って無かったことにする。琴浜先生は「葉隠君、起きなさい」なんて言う。


それに後押しされて次々に皆が挙手する。次に当てられたのはお嬢様の猪瀬だ。

「あ……すみません。私なんか………が、手を挙げちゃって……」

「そんなことは良いから言いなさい。後が詰まってるから」

慰めている(?)のか先生が手をへらへらと振って早くしろの仕草を取る。多分個人的に嫌っているのでは無かろうか、と思うのは自分だけか?


「多分……戦闘訓練があるんじゃないでしょうか。……公式に云われてませんけど、そんな感じだったと………。ち…がいますか?」

琴浜は頷きながら返答する。

「そう。このE組は普通科唯一の戦闘訓練が出来るクラスだょ。これはフォースの奴らも知らない事なんだよ、機密事項。興奮するでしょ?」

「嫌々、全くしませんよ」何て言う生徒たちをほおって置く琴浜は凄いとつくづく思う。


笑いながら黒板に何かを書き付けていく。何かの図のようにみえる。

『戦闘訓練内容・・一学期《魔法具適性試験》

・・二学期《進化細胞ネビロス適性試験》

・・三学期《半機械化人間適性試験》

⇒四学期《統計テスト》』


「見てください。これは戦闘訓練と関連付けて説明していきます。まず最初、一学期の《魔法具適性試験》は魔法具について学び、それを実際に扱えるかどうかの試験です。特に、このクラスでは最新型を扱えます。まぁ、試験と云っても、ね」

何のガイドだよ、と云う風にすらすらと説明がされる。

しかし

「最新型か…。恐らく、それは安全かどうかの起動テストだ。基本的に魔法具は誰にでも扱える様に設計されているが、念のために安全性の確認のテストをする。いわば、それはモルモットにされると考えても言い訳だな」

アイギスは「まさか、こんな所で実験をしていたなんて」とおどろきを隠せないようだ。何処情報か、アイギスが頭が良く見える。


「実験体になるの」「いやだぁぁぁ」「意味が判らない」「そんなモノのためにここに来たんじゃない」「なんでだよ」

生徒は混乱しだす。


「まぁ、そうなります…ね。嫌ならこの学校を辞めて貰って結構ですけど」

反応は皆無だ。理解出来ている人の方が少ないのは確かで、そこで一ノ瀬が云う。

「アイギス・ファルゲイン。君は元一級魔法具製作者と言った。君が安全を確認できるのならこの事実を飲み込もう」


他の生徒の意見は聞かずに単独で交渉に出る。しかし、一級魔法具製作者アイギス・ファルゲインと云う名前は聞いたことも無いと云うのは言った通りだ。

「どういう事だ」

「そのままだ。君はこの学校側がオブラートに包んで実験していた物を、それを暴いた。生徒はやりたく無くなっただろう。それを、君が安全だと証明出来た機のみを使ってその試験をしようと云うことだ。それならいいだろう」

アイギスは驚くように目を見開き一ノ瀬の云ったことを理解しようとする。


「何故お前は会ったばかりで関わるなと突き放した俺を引き込む?」

「……責任をとれ、と言うことだ。事実を明かした、その事実は皆のやる気を削いだ。事実が無ければやっていたモノを貴様ができなくした。その責任を負え、と云うこと。元一級魔法具製作者と言っても今でもこの学校の整備士よりも良いだろう」


先生などが頷いてアイギスは一度舌打ちをする。そして「そうか、判った」とそっぽを向いた。

「話しの続きをどうぞ」


「二学期はそのまま《ネビロス》の適性試験です。基本的な勉強は一学期に終らせますので、二学期は一学期よりも本格的に訓練が始まります。先程のあの話では一学期が魔法具中心の勉強と云うことになっていますが、実際そんな事は無くて一学期は全てに応じる勉強をします。やって一回出来るかどうかですよw。実験なんてそうそう出来るモノでも無いですし、ね」


「結局はそこのフードのはやとちりだと云うことだな」

葉隠が俯せのまま云った。アイギスはやはり舌打ちをしてグラウンドの方を向く。

それを無視して琴浜は続けた。

「三学期では、そのまま《半機械化人間》の適性判断をします。それまでに戦闘能力はフォースまでにいかないものの、A組に負けない程になって貰いますけど。しかし、戦闘訓練をするクラスと自主練しか出来ないクラスが闘って負けるのは可笑しいですしねw」


言い終わると突然、琴浜はポケットからブレスレッド型の魔法具を取り出すと振りかぶって外を眺めるアイギスに向けて投げ付ける。

それは生徒の間を縫ってアイギスの額にぶちあたる。

「痛っ!?」


「それを付加型エンチャントの効果を付け加えて下さい☆」

「…付属型に……?とても簡単な問題だ」


そういってバッグからノートPCを取り出した。一緒にコードも取って、魔法具の充電パックのフタを外して剥き出しになったコードを数本引き抜く。

そこにバッグから取り出したコードを繋いでPCを起動した。

プログラムからデバイスを開く。そうすると突然数字の羅列が現れる。

見慣れたようにキーボードを打つ。判らないのでできあがりを待とうか。



数分待って「出来た」とブレスレッド型魔法具を琴浜に返す。

何のためにやったのか、琴浜は返して貰った魔法具を装着し起動させる。学校の備品で、人間の体に三日ほど残る痣が出来る程度の痛みを上昇させる物。

それは付属型といい体、肉体が強くなり触れている道具には干渉しない。

付加型は付属型と違い肉体に影響は無く、触れている道具のみに効果が現れる。


ちなみに、一度設定した魔法具のプログラムの改変は違法行為であり、アーネス王国では懲役二年以下が課せられる。


「よし、葉隠。力を入れろ」

そういって手元のチョークを葉隠目掛けて投げ付ける。

白いチョークは緑色に光っていたので、その色の光線が残る。

額に直撃し変な音と一緒に葉隠が椅子ごと後ろに倒れた。


「数分でこれほどの改造が出来るなんて……。予想以上で驚いたぞww」

のりのりで琴浜が云う。満足げな顔で笑顔が零れる。

男子生徒は一ノ瀬、葉隠、アイギス、霧雨以外は盛り上がっていたのは言うまでもない。



その時チャイムがなってその時間が終わる。今日のこの時間が終われば帰りの時間になるのは皆知っている事だ。

「はい、今日は終りね。皆は夜までには寮に荷物を置いて頂戴よ。明日からはこの国の歴史から全てを学習していくからねっ☆」


琴浜先生のその言葉を最後に、「バイバーイ」「また、夜ね」「一緒帰ろうぜ」なんて帰りのムードになる。

しかし、アイギスは動こうとしない。

どうやらグラウンドでやっている部活に見とれているようで

「陸上、サッカー他、女子……計二十三人」

そんなアイギスにシンヤは近づいていく。

「女子を探してんの?」


「ああ。オレの嫁に成れるくらい優秀な女が欲しい」

現在十二時十五分。二年生と比べれば、新入生は一時間ほど遅くに終わる。部活に所属していれば準備などをするのは当たり前で。

外を見れば部活生が男子で百、女子は五十は居るくらい。

三年、四年は上級の役職に付こうと昇格試験が行われている。

と、言っても自主性の生徒会の事だが。


「お前は嫁が居る。あんなに綺麗な」

「嫁ではないね。契約者、俺の雇い主だ」

アイギスは窓に顔をむけたまま続けた。

「《斬虐刀の夜神》貴様と契約を結びたい。戦争を終らせるため、家族の復讐のために」


空気が代わったのが判る。それは男が本気で物事を頼もうとするときの空気だ。

「……アイギス、君も云ったろう、俺にはもう力が使えない。それじゃあマリアとの契約も守れそうに無いのに、別の人ともね………。考えとく、それだけで良いか?」

「今はそれでいい。オレの予定では来年までに力を取り戻してほしいがな」


アイギスが笑う。実際はそこまで悪い人間では無いのだろう。でも、勘違いするレベルに口が悪いし、顔は悪の色単色である。


「明日も話そう。君を知らないといけない。ついでにアイギス君、一緒に夜を明かさないかい?」

そんなときに第三者が加入して来る。一ノ瀬だ。

「そんな趣味は無い。御免する、更にオレに対して態度を改めたらどうだ?」


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