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光芒  作者: 藍原燐
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興味

 足音を鳴らさないようにゆっくり進み、出口手前で中の様子を伺う。すると丁度終わったところだったのか、外へと続く廊下に消えていく二人の男の後ろ姿が見えた。二人の姿が見えなくなったのを確認して、クリス達は広間に入った。

 「おはようございます、クリスさん。昨日はなんというか・・・お疲れさまでした。」

 「お互いに、ね。おはよう。ソフィアも、おはよう。」

 「おはようございます。」

 わざわざ頭を下げて挨拶する彼女の仰々しさにまだ少し慣れないクリスは、擽ったそうな顔をしてそれを誤魔化した後、ニコに話しを振った。

 「朝から大変だったね・・・。」

 「緊張しました。」

 ニコの苦笑いにクリスも同じ顔になる。

 「レオから仕組みは聞いたけど、面倒くさそうだね。」

 「いつくか許可を出す場面以外は、言われたことをそのまま言うの繰り返しで、要領が分かってきた後半からはそれほどでもありませんでしたよ。」

 「要領というか、面倒くさくなっただけでしょう、あれは・・・。」

 「ですが、聞こえてはらっしゃるのでしょう? でしたら、それに対して私が尋ねる方向を変えればいいだけではないですか。」

 「それにしても、『と、言っていますが?』とか『だそうです。』はどうかと。」

 「いいじゃん、ソフィアだって同じ事を繰り返し聞くと嫌になってくるよ? 相手だって変にニコに諂う必要なくなるんだしさ。」

 「別に問題があるわけではありませんが・・・。」

 「あ、そうだ! クリスさん、私も神術使えるようになったんです!」

 「そうなんだ! 何か一つ見せて!」

 「あまり期待しないでくださいね・・・。」

 そう言って胸の前に手の平を出すと、ニコはそこに陣を展開して氷でできたリスを作り出した。

 「まだ、目を開けた状態でのこれしかできないのですが。」

 「慣れれば何でもできるようになるって。私が今使いこなせているのも、子供のころからできたからだしさ。」

 クリスとニコが神術談議に花を咲かせ始めた横で、残った二人は別の話を始める。

 「具体的にはどんな話をしたんだ?」

 「元々この地域を治めるのは神代の役目ですし、神々が認める統治者もその者達だけです。私が起きた今、今統治者を名乗っている者は自称に過ぎない。それを直すために、真なる統治者たる神代が、訪れた地域長を代理人に正式に任命するのが大まかな今日の内容でした。」

 「自分よりも十歳以上年下の小娘に頭を垂れるのは、お偉い地域長様にはさぞ苦痛だっただろうな。でも、来月中旬に開かれる会議で偉ぶれるんだから足し引きゼロだな。」

 「だからですか、発表に使いたいなどと言って名前を聞いてきたのは。」

 「お前のか? そりゃまた礼儀知らずにも程があるな。教えたのか?」

 「そんなことする訳ないでしょう。」

 「だよな。」

 ソフィアには、クリスやニコに教えた名前以外にもう一つ『ノウン』という名がある。それはいわば対人間用の名前で、全ての神がそういった名を持っている。地域長には『ノウン』の方を教えた。

 神術談議が落ち着いたのを見計らって、ソフィアはクリスに話しかけた。

 「クリスさん、お渡ししたいものがあるのですが、よろしいですか?」

 「いいけど・・・。取りに行かなきゃいけない物なら一緒にいくよ?」

 「いえ、お渡ししたいのはこちらです。」

 そう言ってクリスの前に出された手の上には、ニコが着けている腕輪にそっくりな金製のそれが置かれていた。ソフィアの着ている服にはポケットなどという物はついていない。それに加えて、先程挨拶した時には手に何も持っていなかった。

 突如現れたそれを眺めていると、ソフィアがクリスに受け取るように言った。

 右手でそれを持ち、よく観察する。ニコの腕輪と違うところは、外側の一か所に米粒ほどの赤い石がはめ込まれているところだった。

 「手首に付けていただいても鞄に仕舞っておかれるのでもどちらでも構いません。例え手首に填めても、ニコの物とは違い取り外しが可能ですのでご安心ください。」

 「分かった・・・。というか、それ以前になんなのこれ? 小さいけど貯蔵石付いてる時点でただの記念品でもアクセサリーでもないでしょう?」

 「記念品というのは半分当たっています。神代とは別に、貴女にこれをお渡しすることが決まっているのです。」

 しばらく眺めたあと、

 「まあ詳しいことは追々分かってくるだろうから今はいいや。部屋にある鞄に入れておくよ。」

 と言って、クリスは自分のズボンのポケットにそれを入れた。

 「ところでレオさん、頼みたいことがあるのですがいいですか?」

 「? 何だ?」

 「火事で焼けた家のこともありますし、一度父と町に帰ろうと思っているのです。ですがここには馬一頭いないようなので、レオさんに町まで転移していただきたいのです。」

 転移術は一日二回が限度である。ニコの町まで行ってそこからまた荷物を置いたままの宿がある街まで転移するば許容範囲で収まる。

 レオがニコの申し出を了承しようとした時、思わぬところから声が上がった。

 「でしたら私が送りますよ。もちろんクリスさん達も。」

 ソフィアの言葉にレオも何やら思い出したのか、納得した顔を浮かべている。

 「そりゃそうだ。お前に飛ばしてもらうのが一番いいな。わざわざ森を出る必要もないし。」

 「神の森って外からの干渉を受け付けないって聞いたから、中からも同じだと思ってたんだけど違うの?」

 クリスの質問にソフィアが答える。

 「外部者からの力に対してはその通りです。しかし、この森の主である私は別です。外から直接この天蓋に転移することもここから外に転移することも容易です。」

 「おお、便利。でもそうすると、ソフィアってこの森を自由に出入りできるんだ。てっきりここから出られないのかと思ってた。」

 「囚われているわけではわりませんからね。・・・なんだか外に出たくなってきましたね、私が。眠っている間に外は様変わりしているでしょうから、その様子をこの目で見たくなってきました!」

 それまでの大人な女性なソフィアはそこにおらず、外出をわくわくしている子供がそこにはいた。

 「なんか、性格がコロコロ変わる人だな。いや神か。」

 「何かを『知る』ことが大の好物なんだ。知らないことや初めて見る物に対していような興味を抱き、全てを吸収する。まあ有り体に言えば知識欲の塊でできているような奴だよ、ソフィアは。」

 「・・・神代以外の人間の前に姿を現さないんじゃないの。」

 「本人が気にしてなければいいんだろう。」

 いつのまにか自分も行く方向に話を固めたソフィアは、外へ行く準備をその場にいる全員に急かし始めた。



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