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光芒  作者: 藍原燐
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原因

 その日の晩、何時もならアンが夕食を作りクリスが一人で食べ、アンはクリスが寝た後に一人で夕食を食べるのだが、その日は違い、二人で準備をし、共に同じ席で食事をした。アンは始め、一気に縮められた距離感に居心地が悪かったが、クリスが話す真偽のまったくわからない、しかし心ひかれるこの国の裏話に次第に引き込まれていった。

 後はデザートを残すだけになった時、クリスは飲んでいたお茶を机の上に置いた。

 「ここに来て一カ月経って、当分出られない気がするので、教えておきます。仕事とはいえ一緒に暮らしている人に隠しごとは嫌だし、アンさんも不思議に思っていると思うので。なぜこんなところに閉じ込められているのか。」

 そう言うと、クリスは右手をアンが見える位置まで上げ、掌を上にした。するとその数センチ上に小さな所謂魔法陣のようなものが浮かび上がり、下から徐々に形作られ、十秒もしないうち陣の上に王冠が現れた。

 お伽噺のなかでしか見たことがない、聞いたことがない光景が今、アンの目の前で起こっている。それを理解したと時、彼女の顔には恐怖が浮かんでいた。

 自らの掌を見つめ、徐々に顔を強張らせていくアンの顔をクリスは苦笑しながら見つめた。

 「生まれつきなんです。遠くの物にも陣は映すことができますし、これみたいに空中に映し出すこともできます。具体的に『こういう陣を出そう』と思って出しているんじゃないんです。したいことを思い浮かべるとそれぞれ違う陣が出てきて、その通りのことが陣を中心に起こるんです。中に書いてある文字の意味はいまいち分からないんですけど、規則性があることはいろいろやってみて分かりました。」

 アンは掌から目を離し、クリスの顔を見た。自分の手を見ながら笑う、しかしどこか悲しそうな顔を見て、クリスがここにいる意味を今ようやくアンは知った。

 「あと、耳がいいんです。聞こうと集中したら半径三キロ内での会話は聞くことができます。もう少し前までは二キロいくかいかないかだったので、これからもっと広くなるかもしれません。」

 淡々と語る口調は逆に話している事柄の真実味を増させた。

 「今やったような、物を作りだすことにしかこの力は使ったことはありません。でも一度だけ、攻撃性の強い陣を出したことがあって、それからずっとここに来るまで四六時中監視付きだったんです。」

 「どんなことを・・・?」

 「五歳の時に母が死んで、それ以降一人で暮らしていたんです。母は未婚で親戚もいませんでしたから。拾ってきた木の枝の束を陣の上に置いて彫り物を作ってそれを売ったり、靴磨きでお金を稼いだり、近くの店の手伝いしたりして、我ながら頑張って生きてたんです。でも五歳の子供が作れるはずのない彫刻だとか石像を売っているのを怪しんだ人がいたみたいで、警察が家に訪ねてきたんです。どっからか盗んできたものじゃないのかって。その時、警官の一人が誤って写真立てを落としてしまって、それに入っていたのが唯一母の顔が写った写真だったものでキレてしまって。家全焼させるは警官一人焼死させかけるはで捕まっちゃったんです。悪魔だなんだって言われて殺されかけましたけど、最終的にもし殺して呪われたりしたら堪ったもんじゃないってことで、今に至るわけですよ。そんな方法まったく知らないんですけどね。それに、掌からしか陣出せませんし。」

 自分の手を見ながら、それを開いては閉じ開いては閉じを繰り返すリスの顔を、アンはただみていることしかできなかった。

 怖いと思ったことは否定できない。だが遠くからではあるがこの一カ月、アンが見てきたクリスいう女の子は、本が好きで外に出るのも好きで、そしてたまに見せるここではないどこかを見るような、町中にいる同年代の女の子となんら変わりなかった。

 それから何度かの定期面会が行われた後、二人は図書館で偶然隠し部屋を発見する。それ以降、クリスは一日のほとんどをその部屋で過ごし、ずっとやりたかったという自分の力についての研究に没頭した。成果を紙に書き、それを本としてまとめ、地下室に保管していった。


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