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光芒  作者: 藍原燐
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 椅子に自らの立っていた場所を譲り、中央に黒い椅子を置くと、ソフィアはクリスにそこに一度座るよう言った。

 言われるがまま座ると、背もたれが垂直でしかも硬い。腰を下ろしているところも同様に硬く、座り心地は有り体に言えば最悪だった。そのことが顔に出ていたのか、ソフィアは苦笑いを浮かべた。

 「謁見者用の椅子を試しに造ってみたのですが、それでも、このような椅子にクリスさんを座らせるのは失礼でしたね。どうぞ、お立ちください。」

 自分を上に扱うソフィアの態度に、いい加減耐えられなくなったクリスは、核心に触れることにした。

 「貴女、もしかしなくても、神、ですよね。」

 「はい、第三列に名を連ねる、所謂知識の神です。」

 まっ直ぐすぎてどう反応すればいいか分からない解答に、クリスは心の中で頭を抱えた。

 「私は神代らしいけど、貴女にとって自分に対応した神代以外はただの人同然で、こう・・・もっと高圧的なのを予想してたんだけど。」

 クリスの疑問に、

 「貴女様は別です。人間への態度はそれぞれですが、それでも、どの神も貴女を他の者達同様に扱うようなことはいたしません。」

 と、ソフィアは即答で返した。

 「? それってどういう」

 「それはともかく、お付きは居られないのですか?」

 自分の言葉をぶった切られ、クリスは脱力する。

 「誰のこと言ってるか分からないけど、一緒に行動しくれてる奴なら、他の奴が入ってこないように見てくれてるよ。」

 「では、入口に座っているのがそうですね? それにしても人が多いですね。眠る前でも、一斉にこれほど人がこの地にいることは滅多にありませんでした。」

 「神代を利用して、不老不死になろうと画策してる奴がいるんだ、そいつらじゃないかな?」

 レオに話すような砕けた口調になっていることは分かっていたが、彼女に礼儀正しくしても無意味な気がして、クリスはこの態度で行くことに決めた。

 「不老不死とは・・・。そのような者達に私の地を汚されるのは不愉快ですね。出て行ってもらいましょう。」

 初めて厳しい顔をした彼女に、クリスは賛成を口にしようとした時、あることを思い出した。

 「全員は駄目! ニコの父親は被害者なんだ。彼だけ残して。」

 「ニコ? ああ、彼女のことですね。ですが、それだと面倒臭いですね。」

 几帳面そうな外見に似合わないことを口にした後、彼女は予想外のことを思いつく。

 「でしたらいっそのこと全員ここに集めましょう。その後ニコの父親だけを残して弾き出せばいいのです。」

 「なっ」

 クリスが異を唱えるより早く、ソフィアは左手の指を鳴らした。

 次の瞬間には、その空間にはクリスとニコを含めて一〇人の人間が居た。

 元からその場所に居たクリスも驚いたが、突如周囲の風景が変わった者達は、挙動不審に陥っている。三人ほど様子の変わらない者が居るが、平常というよりも、抜け殻のように呆然としているようである。

 全員の顔を見て、クリスはレオが来ていないことに気がついた。

 「あれ、レオは?」

 「入口に居た方なら、自力で向かうと断られましたよ。クリスさん、どなたがニコの父親か言っていただけますか?」

 「・・・私は一度も会ったことないんだよ。」

 「それは困りましたね。」

 そう言うと、ソフィアは口調を一転させた。

 「我こそはニコ・サンジェルマンの父であるという者、前に出なさい。」

 彼女の言葉に一人の男が返事をし、クリス達の前に進み出た。

 質の良さそうなスーツを着た初老の男は、ソフィアに向かって恭しく一礼する。

 田舎の金貸しが、ついさっきまで捕らえられていた男が、こんなに身なりがいいはずがない。それに、こんな風に礼をする男にレオが文句を垂れるはずがない。そういう意味では、男がさっきまで立っていた場所の隣に横たわっている少し縒れた服を着た男の方がしっくりくる気がした。クリスが男に質問を投げようとした時、ソフィアが先に口を開いた。

 「偽りの者、下がりない。」

 その言葉に、男は顔を強張らせながらゆっくりと後ろに下がっていく。それは見るからに彼の意思ではなく、誰かに操られているようだった。

 男が他の者達の中に入ると、ソフィアはクリスが想像に合っていると思った男に目を向け、彼女はもう一度指を鳴らした。

 横たえる男とクリス達以外いなくなった空間に、入ってくる者がいた。

 「さすが神様、正解。」

 右手にあるはずのない丸い貯蔵石を持ったレオは、それを遊ばせながら彼らの方に近づいてくる。

 「特急で取りに行って良かったよ。身につけてたらどうしようかとも思ったが、そんな馬鹿なことは流石にしてなくてよかったよかった。」

 レオの、ソフィアに対する、自分以上の砕けたというか、ふざけた態度に唖然としながら、クリスは聞かずにはいられなかった。

 「その石、どうしたの。」

 「イヴァーノ達が乗って来た馬車から取って来た。よく考えてみると、貯蔵石っていうのは『貯蔵する』っていう機能を持つと同時に『貯蔵されている』っていう面があることを思い出してな。この大きさだと貯蔵できる量が多い以前に、元々持ってる力というか発している力が強すぎて、普通の人間には害しかないなって思ってさ。」

 「・・・ブルーノさんに交換してもらったお金はどうすんの。もういくらか使っちゃて、全額返金はできないし、私達も行動できないよ。」

 「それなら心配するな、当てはある。」

 クリスの前まで来たレオは、隣で横になっているニコと離れて倒れてるブルーノに目をやり、最後にソフィアに顔を向けた。そして驚くほど軽く、彼は彼女に向かって言った。

 「おはよう。」

 そして、

 「おはようございます。」

 とソフィアも軽く答えた。



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