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光芒  作者: 藍原燐
36/43

覚醒


 我 虚無を従えし執行者

 神の言葉を以てここに証明する


 クリスが言い終わるのと同時に床の陣が木箱の文字の様に淡く光り出した。

 「入って! 」

 ニコが中心の円の中に入ると、陣がより鮮やかに光だす。

 クリスは、ニコが円の中に完全に入り静止したのを確認して続きを述べる。


 静寂の寝床 

 酷烈なる底辺 

 不全たる地上 

 神代の星霜 

 第三列に配し

 生命あるかぎり絶えぬ者よ

 汝が半身の下に降りて

 我が前に顕現せよ


 床の光が天井のガラスに写る。二つは一つになり、新しい陣を描き出す。

 クリスは陣の放つ光に目を細めながら、中心の貯蔵石が淡く光るのを見た。ニコは、貯蔵石の光が徐々に強くなっていくのを真下から見ていた。

 誰かがこちらに手を伸ばしている。

 ニコは無意識にその手に向けて、腕輪をつけた右手を伸ばした。彼女の視点で二つが触れた瞬間、光が満ちた。


 光の柱が建っている。

 その光景を、ある者はすぐ下で、ある者は降りた馬車の外で目にした。

 ほとんどの者が呆然としているなか、間近で見ている者の中で一人、その男は薄く笑っていた。

 「やったか・・・。まあ、端から心配してなかったかどな。」

 光の柱を一頻り見た後、レオは、自分の目の前に唯一意識を保って立っている黒服の男に向かってやさしく話しかけた。

 「お前、主が入ってくる入口に向かった方がいいと思うぞ。そして一緒に帰れ。あ、ニコの父親は置いていけよ。」

 柱の影響か、それとも、立っているだけで意識のない仲間達の影響か、男はその場から動けずにいた。

 「・・・言ったろ? 『中ではできない暴れ方をする』って。もうちょっと心を強く持てよ。前この術を受けた奴は、もう少しは持ったぞ。」

 レオは、クリス達と分かれた時立っていた場所から一歩も動いていない。むしろ、十分以上前からその場に座ってさえいる。

 「そいつらは死んだわけじゃねえから、何でもいい、刺激を与え続けてやれば元に戻る。今までのような人物のままかは保証しないが。」

 一方的にレオが話してる間に、光の柱が徐々に薄くなってきた。そして、ついには消えるところを確認して、彼は誰に聞かすでもなく呟いた。

 「弾くか引き寄せるか、どっちだろうなあ。俺としては、引き寄せる方がお勧めかな。」

 レオが正面に向き直ると、そこにはもう三人にか立っていなかった、その光景に、彼は苦笑いを浮かべた。


 実際には二・三分の間だったが、クリスにとって、目を瞑りそれをさらに腕で覆っている時間をとても長く感じた。

 やっとのこと手を退けて目を開けると、圧迫していたせいか、ぼんやりとしか景色を捉える事ができない。少しして、はっきりと見えるようになると、床に広がっていた陣は消え、中央に今まで居なかった人物が一人立っているのが見えた。その人物に体重を預けてぐったりしているように見える人物を捉えた瞬間、彼女はそこに向かって駆け出していた。

 中央でニコを支えているのは女性だった。身長は一七〇前後で、ゆったりとした無地の白いワンピースを着ている。クリスが向かってくることに気づいて彼女の方を向き、一〇メートルほどの距離で停止した彼女に向かって口を開いた。

 「名前を、教えていただけますか?」

 女性が纏う柔らかそうな雰囲気に合う優しげな声に、クリスはゆっくりと口を開いた。

 「クロフォード。・・・クリス・クロフォード。」

 「クリス様、とお呼びしてもよろしいですか?」

 「・・・せめてクリスさんにしてください。」

 「これは失礼いたしました。クリスさんこそもっと砕けた態度でいて下さってもいいのですよ?」

 微笑みを絶やさない女性の自分への対応に疑問を抱きながら、今度はクリスが尋ねる。

 「貴女の名前は?」

 「ソフィア・クリティスティルと申します。ソフィアとお呼びください。」

 「・・・分かりました。」

 ソフィアはゆっくりと腰を下ろし、支えていたニコを床に横たえる。そばまで寄ったクリスは、ニコの顔色を見て少し安心した。

 「少し疲れて眠っているだけです。本当はもう少し柔らかい物の上に寝かせてあげたいのですが、そういった物はこの空間にはありませんから。」

 腰を上げたソフィアは、右手を前に翳した。遅れて立ちあがったクリスは、右手が指す方角に目を向けた。

 この世界の文字が刻まれた石板に陣が展開し、分厚い板はバターの様に溶けたかと思うと、隣の椅子とは色違いの物に変化した。手を下ろすことなく椅子に向かってこちらへくるようソフィアが手招きすると、その通りに椅子は二人の下にやって来た。



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