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光芒  作者: 藍原燐
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計画

 その後の話はそれぞれで、『大陸を三度回った後に亡くなった』や『どんなに深い傷や致命傷を負ってもすぐに治り、生涯独身で百歳まで生きた』、『天蓋を出てから一切歳を取らず、今も大陸の何処かを旅している』という話まである。

 「二十四いる神のいずれが彼の母なのか、両親に神が出した条件とは何だったのかはどの地域に伝わる話でも語られていません。しかし、どの話でも決まって『彼はのちに現れる神代の始まりの人だった。』と語られています。」

 「・・・神代。」

 「それも重要ではあるが、ここで注目すべきなのはそこじゃないんだ。大陸の東南に伝わる『天蓋を出てから一切歳を取らず、今も大陸の何処かを旅している』という話が、あいつらの行動に深く関係している。」

 『青年は歳をとらず今も生きている』。

 クリスはあの男達の考えていることが分かった気がした。

 「あいつらの親玉であるイヴァーノは、その話を耳にし、その地域周辺に残る不老不死伝説をかき集めた結果、ある計画を思い立った。六十歳を過ぎていくつもの持病を抱えるようになった今では、それに取り憑かれているといってもいい。」

 「不老不死になる。」

 クリスの言葉に

 「その通り。」

 とレオは答えた。

 「大陸各地にある本物の天蓋全てを回り、イヴァーノは、この街を北に行ったところにある天蓋に目をつけた。そこは知識の神が眠る場所で、旅人の話にも何度か登場し、彼の母ではないかという説もある神だ。しかしそこで計画は暗礁に乗り上げる。話では、青年を不老不死にしたのは神本人だ。しかし今、神は全て眠りに就いている。神が目覚めなければ意味がないことに気がついたんだ。」

 喋り通しで渇いたのか、レオはコップに残った残りの水を飲み干した。

 「そこで目を付けたのが神代という存在だ。ニコ、神代のついて知っていることを述べてくれないか。」

 レオの言葉に、クリスはニコの言葉に集中した。この世界に住む人間からすれば、神代のことは常識のようなもの。それに反応して自分の言葉を待つクリスに、少し押されながらニコはレオに返した。

 「えっと・・・。神術を使う者、神を目覚めさせ、顕現させる者、だったと思います。」

 「そう、そしてイヴァーノは、神を目覚めさせる、という点を利用することにした。」

 「ですが、神は眠りに就いてから一度として目覚めず、神代の存在はほぼ伝説、もっといえば嘘になりかけていますよ?」

 「イヴァーノは仕事上大陸のありとあらゆる場所を訪れる。それを利用して各地の神代関連の文献や伝説を採取した。そして見つけた、神代を見つける方法を。目印は・・・文字。」

 レオがそう言った瞬間、ニコは自らの手を口もとに運び、思考に耽る。レオはその姿に注目し、彼女が再び動くのを待った。

 数秒してから、ニコは今日一日ずっと肌身離さず下げていた鞄からゆっくりと家宝である木箱を取りだした。クリスは家宝の木箱のことは殆ど知らない。彼女は、ニコがいつも他人に向ける何の装飾もされていない箱の上部と側面しか見たことがなかった。それ故に、鞄から取り出された木箱がひっくり返され、その底を目の当たりにした瞬間、反射的に彼女は声を上げていた。

 そこには文字が書かれていた。天蓋の内部の壁や床の陣、そしてクリスが展開させる陣に現れる物と同じ文字が。

 「そう、目印はこの文字だ。イヴァーノはこれを目印に大陸を調べられるだけ調べた。そのなかで奴は、これと同様の木箱を五つ見つけた。そしてここで問題になるのは、見つけた神代が知識の神の神代か、ということだ。書かれている文章には意味があり、それを理解することができれば、その木箱を持つ者がどの神の神代なのか知ることができる。しかし、実際には無理だ。そこで彼らは暴挙に出た。」

 「見つけた神代を手当たり次第に目的の天蓋に連れ込んだのか・・・。」

 「御名答。」

 口を挟んだクリスの解答に、内容に似合わない口調でその答えを肯定し、さらに暗い話を始める。

 「神代というのは、自分の対応している神以外が眠る天蓋に入ることを無意識に避ける。それは本能的な部分でそれが良くないことだと分かっているからなんだが、奴らにそんなことは分からない。対応していない神を起こそうとした結果、五人もの神代が犠牲になった。」

 犠牲という言葉に、思わず口を手で覆ったニコと悲痛な面持ちになるクリスを見て、語彙の選択を間違ったと悟ったレオは、冷静に補足した。

 「亡くなった訳じゃない。対応していない神を顕現させることに心身共に耐えられず昏睡状態になってしまったんだ。」

 「・・・いつかは目覚めるのですか?」

 恐る恐るといった感じのニコの質問に、レオは口調をそのままに平然と答える。

 「無理だ。彼らはただ疲れて眠ってるんじゃない。神にとって、既に神を起こした神代を除いた自らの神代以外は、普通の人間となんら変わらない。そんな一介の人間が自らを起こそうとするなど当の神にとって冒涜に他ならない。その罰としてその者の魂を縛り、身動きを封じるんだ。」

 「その魂の縛りを解く方法はないのか?」

 「そこで重要になってくるのが、ニコの家宝なんだ。ニコ、木箱をクリスに渡してくれないか。」

 理由を聞かせらないまま人に渡すのは少し躊躇われたが、ニコはゆっくりとクリスの前に木箱を差し出した。



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