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光芒  作者: 藍原燐
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強襲

 天蓋から出たあと、チャックは天蓋の入り口を塞ぐように停めておいた馬車に乗り込み、残った一人が御者となって馬を走らせた。

 彼は焦っていた。娘を手に入れるのは計画を実行する道すがらで、と思っていた主を説き伏せ屋敷に迎えるよう変更させた自分が、その娘を手元から離し、それを挽回しようと画策したら返り討ちにあい、あまつさえ娘に自分達に対して不信を抱かせた。そのことに焦らずにいられるわけがない。

 そして彼がもっとも焦っているのは、挽回するために娘と一緒に手に入れようとした人物の力の存在だった。天蓋や神について書かれた文献のどこにもあんな力については書かれていなかった。あの力が他の天蓋でも、ましてや本物の天蓋で使用できるなら、計画の成就が危うくなる。チャックは無意識に舌打ちした。

少し落ち着こうと背もたれにもたれかかって目線を下げた時、反対側の座席の下に何か光る物が見えた気がした。そこは丁度、あの二人組のうち男が座っていた席の足元だった。金か何かだろうと思ったが、拾って損はしないと思いそこに身を屈めた。

 瞬間、チャックの真上を何かが横切った。

 横に真っ二つにされ解放的になった車の中で、チャックは何が起こっているのか全く分からなかった。ゆっくりと目線を上げると、静止した風景ともし御者が座っていたならその背中が見えていただろう位置に男の足が見えた。つま先の方向からしてチャックの方を向いている。

 「丁度身を屈めていて助かったのか。殆ど殺すつもりで切ったんだが、運がいいなお前。」

 そう言うと、男は車の中に片足を入れ座席にその足を置き、恐怖で中腰のまま静止してしまっているチャックの首を片手で掴んで持ち上げた。

 「・・・ッガハッ。」

 急激に息苦しくなる中、チャックが手の正体に目を向けると、そこには二人組の男の方、レオが立っていた。目があった瞬間喉を掴む力が一瞬強くなり、チャックはその手を解こうともがいた。レオはチャックの足掻きを気にすることなく話し始めた。

 「先遣隊の一人を少し脅したら色々教えてくれたよ。聞いていないことまで色々とな。お前が一人屋敷に帰るってことは、二人の確保に失敗したんだろう。というか端からそれについては何も心配していない。」

 チャックは足掻くのをやめ、吊るされるがままになりながら目線をレオの横にやった。そこで目に入ってきたのは、気絶し横にされた御者だった。血らしきものが見えないところを見ると、死んではいないようである。

 「それにお前にも用はない。用があるのはお前の記憶だ。」

 チャックはレオが何をいっているのか分からなかったが、『先遣隊が教えてくれた』という言葉を思い出した瞬間、なにが目的なのか理解した。

 「・・・なにも、喋らんぞ。」

 気管を握られながら、どうにか発した言葉をレオは鼻で笑った。

 「拷問して聞くとでも思っているのか? そんな面倒くさいことしねえよ。お前はこのままじたばたしていればいい。勝手に覗かせてもらう。」

 そう言ってレオは目を瞑り、チャックの頭の中を覗いた。時に眉間に皺を寄せ歯を食いしばる様は、何かに堪えているようだった。

 レオは掴む強さを若干緩めて目を開けると、チャックを睨みつけ馬車の側面に投げつけた。しかし投げられると感じた瞬間に、チャックが頭に手を当てたため頭を強打することはなかった。

 「外道が。」

 そうチャックに投げつけると、息も絶え絶えで殆ど身動きが取れない彼の腹を一発殴り付けた。その場でくの字に体を折り曲げ苦しむチャックを睨みつけながら、レオは彼に吐き捨てた。

 「神代は自分の対応している神以外の天蓋に入ることを無意識に嫌がるものだ。それを無視して連れ込んだあげく昏睡状態にしやがって。それをお前ら五回も繰り返して・・・。数打ちゃ当たると思いやがって!」

 自分に手を翳すレオを視界の端に捉えて、止めを刺されると思ったチャックだったが、予想に反してレオはすぐにその手を下ろした。

 「・・・彼ら神代の力を知って手に入れたいと思う気持ちが分からないわけじゃない。手遅れかもしれんが忠告しておく。これ以上犠牲を出すな。お前達がやっていることは何の意味もない。昏睡状態の神代達を助ける方法を俺は知っている。そのことについては任せて、お前達は会社経営の方に精を出せ。その寿命が尽き霊魂世界に行ったとき、お前達の犯した罪に判決が下るだろう。」

 「神は・・・眠り・・続けている。その・・・判決と・・やらを・・・下すのが神で・・・あるなら、私に罰は・・・下りない。」

 「かもしれない。だが神は目覚める、目覚めさせる。その道が例え仕組まれたものであったとしても、それを選択するのはあの方自身だ。誰の意思でもない。」

 「なにを・・・言ってる?」

 レオは後ろを振り返り、馬車につながれた馬に目をやりながら答えた。

 「いい、理解できると思っていない。・・・いいか、忠告したぞ。お前の主にも伝えておけよ。」

 御者の席から降り馬と車とを繋ぐ紐を取ると、レオはその馬に跨り馬車が進んできた道を戻った。

 残されたチャックは、レオから受けた攻撃と緊張でその場で意識を失った。既に屋敷の入口を通り過ぎ中ほどまで進んでいた彼らが発見されたのは、敷地の主を乗せた馬車がその道を通って帰ってきた時だった



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