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光芒  作者: 藍原燐
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暗躍

 三人は取りあえず昼食を食べることにした。市街地に入って一番初めに目にとまった飲食店に入り、窓際のカウンター席に座って各々適当に食事を頼む。クリスとニコは中身の違うサンドイッチを食べながら、野菜ジュースを一杯頼んだだけのレオを見た。

 「女性二人が普通に食事してる隣で男が野菜ジュースで昼を済ませるとか・・・。喧嘩売ってるね。」

 「それだけで夕食までもつのですか?」

 中身を半分ほど飲んだコップを机の上に置いて、レオは二人に反論する。

 「お腹が空いてないものは仕方ないだろ。栄養的にはこのジュースで賄えてるし、意外と飲みごたえがあるぞ、これ。」

 そう言いながら揺らしたコップの中身のジュースは、液体というよりもペーストに近い見た目をしている。

 「この一杯で人が一日に食べる野菜全てが取れるっていう謳い文句は伊達じゃないな。」

 再度コップを口に運び全て飲み干すと、レオは店員に水を一杯頼んだ。残りの二人も順調に食事を進めていく。先に食べ終わったクリスは水を口に含みながら、ガラス越しに見える外の景色を眺めた。時間帯によるのかもしれないが、人通りはそれほど多くない。道を挟んだ向かいの店も飲食店のようだが、お酒が中心らしくまだ開いてはいない。

 コップの中身が半分ほどになったころ、ニコもサンドイッチを食べ終わった。水を一口飲むクリス達に断りを入れて店の奥に進む。再びガラスの外を眺めているクリスに向かってレオが話しかけた。

 「これからどうする。」

 「どうしようか? 観光を名目に連れ出してきたは良いいものの、めぼしいものは無さそうなんだよねえ。ニコの父親が月に一回遊び回ってるっていうの、嘘なんじゃないの?」

 「遊ぶにも色々ある。女を侍らせたり、賭けごとに手を出したり。表には見えない路地の奥にそういう店がひしめいているところがあるのかもしれない。」

 「手持ちが空ででも荷物の増減なく毎回帰ってきてたんならそうかもね。」

 「大きな通りに出て少ししたところに外装が簡素な四角い箱のような建物があっただろう。あそこなんてどうだ。言って損はしないところだと思うぞ。きっとこの街で一番古い建物だろうしな。」

 「なんか知ってる風だねえ。」

 「第三者から聞いた方がいいこともあるだろうからな。」

 そこにニコが奥から帰ってきた。それから少しして三人は会計を済ませて店を出た。ニコにこれから行く場所の説明と了承を得て、来た道を引き返す形で大通りに進む。三分ほど歩くと目的の建物の前に辿り着いた。見える限り外装は薄茶色のタイル張りで、正面中央に入り口があるが普通の店や家のように木の扉ではなく鉄格子の扉で閉じられている。取っ手に触れて押すと鍵は開いていた。

 「基本的に出入り自由の建物だ。少し進めば中は分かる。管理人が居るはずだから詳しいことはそいつに聞け。俺はブラブラしている。迎えにくるからここで待ってろ。」

 言うだけ言ってレオは道を渡り何処かへ行こうとする。反対側へ着いた彼の背に向かってクルスが叫んだ。

 「ほどほどにな!」

 レオはキョトンとした顔になったあと苦笑し、二人の方を振り返ることなく右手を上げてクリスの言葉に答えた。

 「ほどほどに、とは?」

 「あんまり遠くに行かないでよってこと。さ、中に入ろうか。」

 ニコにはそれ以上か全く別の意味で言った言葉のような気がしたが、それ以上は言及することをやめクリスと一緒に中に入った。


 二人の入った建物から一〇〇メートルほど離れたところに建つ四階建ての建物の上に黒服を纏った男達が居た。何人かは淵に立ちクリス達の入っていった建物の方を向いている。下を歩いている人々は丸見えであるはずの彼らに見向きもしていない。

 「まずい所に入られたな。」

 「まだ時間には余裕がある。焦る必要ない。」

 「男の方はどうする。別行動をとっている今が良いんじゃないか。」

 「別の奴らが行ってる。もしかするともう終わっているかもしれないな。」

 「女たちが出てこなかった場合どうする。あの建物に制限時間も閉館時間もないぞ。」

 「待つしかないだろう。お前、天罰を知らないのか?」

 「それに、あそこはイヴァーノ様も贔屓になさってるところだ。下手に手は出さない方が得策だ。」

 「一応チャック様に連絡を入れておこう。」

 「チッ。今回は男の方に回った方が正解だったな。」

 「男の方と違ってこっちは確保すればいいんだ。見た目もそれほど悪くない。生きてさえいればいいなら確保したあと遊んでいいか聞いてやるよ。」

 その時、第三者の声がその場に響いた。

 「おっと、それは流石に聞き捨てならないな。」

 男達が後ろを振り返るのと同時に、彼らの前に自分たちと同じ服を着た見知った者達が投げ捨てられた。正面の淵に始末しれているはずの男が一人、立っていた。

 「殺す気マンマンだったから、こちらもその気で相手をさせてもらった。」

 投げ捨てられた男達は全く怪我らしきものをしていない。服が破れているわけでも、ましてや血などどこにもついていない。まるで眠っているようだ。

 誰かが一人後ずさった。

 「周りから見えないようにしてあるようだな。だが、見つけられればこちらのものだ。」

 男が片足で地面を叩いた瞬間、そこを中心に大きな陣が展開した。男達は瞬時に範囲外に出ようとしたが、靴底が接着剤で固定されているかのように全く動かない。そのことに気を取られている間に周囲の景色は一変し、いつの間にか彼らは草原の真ん中に立っていた。

 「『ほどほどに』と言われたからな。手加減はしてやる。だから、」

 男は彼らに向けて手をかざす。

 「死ぬなよ。」

 男達は落下した。



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