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光芒  作者: 藍原燐
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進行

 二人はまっすぐ進み、寝泊まりできるところを探した。しかし市街地に近づく気配は全くなく、隣同士がくっついた三階建ての建物や空き地、庭の広い一軒家が断続的に現れるだけだった。引き返して別の道を探そうかと立ち止まった矢先、二十メートルほど行った先に飲食店らしきぶら下げ看板を見つけた。二人は顔を見合わせ、昨日と同じことをすることにした。

 店は縦に長い建物らしく、だいぶ奥まで続いている。開店して間もないのか客は二人しかいいな。中ほどの右と奥の左にカウンターがおかれ、手前のカウンター奥には若い男が一人入っていた。クリスは中ほどのカウンターに近づいた。

 「すいません、今いいかな?」

 男は持っていたコップを置いてクリスの方を向く。

 「最低限の寝泊まりができる宿を探してるんだけど、いいところを知っていたら教えて欲しいんだけど。」

 男は後ろに控えているレオに一瞬目を向けてから答えた。

 「店の前の道をまっすぐ進んで、突き当たりを右に曲がる。その道をまっすぐ三百メートルほど行ったところに、壁に青い文字でベネトゥターナって書いてある建物が現れる。それとくっついて二階建ての横に長い建物が建ってる。そこがこの街で一番安い宿だ。」

 「ありがとう、助かった。レオ、一枚出して。」

 クリスはレオが先ほど両替した銀貨を一枚、礼としてカウンターの上に置いた。

 「こんなにもらっていいのか⁉ ここで一食していけるぞ。」

 既に戸をくぐって外に出てしまったクリスに代わって、扉を開けて彼女を通していたレオが言った。

 「夕方にまた来るから、その時まけてくれればいい。」

 二人は男が言っていた通りに道を進み、十分ほどで目的の宿を見つけた。隣に建っている建物の看板の派手さが、宿の薄汚れた外観を引き立たてている。入ってすぐにカウンターがあり、そこの奥で真っ白な髪をした老人が座って新聞を読んでいた。二人が前に立っても顔を上げる様子が全くない。

 「二名お願いしたいんだが。」

 レオが話しかけるとやっと新聞を横に置いて彼の前に紙の綴りを置いた。そこに二人の名前をレオが書き込んで老人に返すと、鍵を一つ渡された。

 「上がって左側通路の奥から二つ目。代金は後払い。」

 「了解。」

 年季の入ったミシミシ鳴る階段を上り、ベッドが窓際に一つ置かれているだけの、他には何もない部屋に入った。適当に荷物を床に置くと、クリスはベッドに被せられている白いカバーを剥いだ。申し訳程度の薄い布団が敷かれている。

 (こういう宿に泊まるのは暖かい時期だけにしよう。)

 などと思いながら布団のさわり心地を確かめる。

 「で、どうするんだ。ニコが心配で付いてきたんじゃないのか。」

 「どこに屋敷があるのか知らないからなあ。」

 「屋敷なら分かってる。質屋の婆さんに聞いたら教えてくれた。街の北端に馬鹿みたいに広い敷地を持ってて、そこに住んでるんだと。どうする、お邪魔するか?」

 「それもいいけど、私としては情報収集も欠かせないね。」

 「ちまちまやってる間に彼女がどうにかなっちまったらどうするんだ。」

 「焦るな。まずは例の屋敷にお邪魔しようじゃないか。あくまで父親の連れとして招かれているのなら会いようはいくらでもある。当の父親は街を歩きまわってるらしいしね。もし、ニコが屋敷に着いた瞬間から何かされたなら、どうにかして会うか、それ相応の報いを受けさせればいい。」

 「後半怖いな。」

 そう言うレオの口調はどこか面白がっている風で、反対する気もないようだった。

 「だが、一度でも連れ出せればこっちのもんだろ。後はそのまま彼女を屋敷に返すにしてもいつでも会いに来られる人間が街に居ることが分かれば、そう簡単に手は出せなくなる。言質を色々取っとくと楽だろうな。」

 「それじゃあ遊びのお誘いに行きますか。」

 二人はクリスの小さな鞄に何でも屋で買った地図と水分、本を入れてそれ以外は部屋に置いていくことにした。鍵は一応かけることができるし、もし強盗には入られても今の段階ではお金以外取られて困るような物は二人とも持っていない。当のお金はレオが腰に巻いて肌身離さず持っている。

 宿を出た二人はまず、来た道の先に足を進めた。一〇〇メートルほど進むとY字路に差し掛かった。通りかかった人間に迷わず道を尋ねる。その人物に従って言われた通り右側の道を進むと、その道はこの街の市街地らしく、道の両側に途切れることなく建物が並び、どの一階でも何かしらの店を営業している。大きな通りに出、横に細い道がある。二人はまたしても通行人に声を掛けた。

 二人は屋敷の場所は分かっているが、そこに行くための道は全く分からない。なら聞けばいい。曲がり角に差し掛かるごとに近くの人に声を掛け、目的地を目指した。

 左折、右折、まっすぐ、右折、まっすぐ、まっすぐ、まっすぐ。徐々に建物が低くなっていく。それに反比例して一個一個の家の敷地が大きくなっていくのを感じる。最後に人に道を尋ねてから五〇〇メートルほど進むと、低いが確かいに道路とその内側に広がる草原や林を隔てる壁が現れた。そしてその低い壁が突然途切れ、その途切れた場所から内側へ道がつくられている。

 「こりゃまた広そうだな。」

 どちらともなくそう呟いて、二人は中へ足を踏み入れた。




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