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光芒  作者: 藍原燐
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調査

レオは泥だらけの体を起こして立ちあがりクリスに近づいた。

 「窒息消火法ってやつか。」

 「どんな方法で着いた火だって酸素がないと燃えないことに変わりはない。それでも駄目だった時は中を水で満たして家ごと凍らしてやろうと思ってた。でもそれだと後始末が大変そうだから、この方法が上手くいって良かった。」

 「この方法をお前がここに着いてすぐにしていたら、俺が中に入らなくてよかったんじゃないか?」

 「あんたが丸投げして行ってから思いついたんだから仕方ないじゃん。それで、目的の家宝はちゃんと見つかったの?」

 「ああ。だが、必要なかったようだ。家宝が入れられている箱に外からのあらゆる攻撃を防御する術がかけられている。それはもちろん火にも有効だっただろう。」

 「行動全部が骨折り損だったね。」

レオが掌に載せている木箱に目を向けながらクリスは苦笑した。

(そうでもないさ。)

レオは木箱をクリスに分からない範囲で握りしめた。

(あの人がお前をここに下ろしたのには意味があった、ということかな。)

「展開している陣、どうするんだ。」

「一晩はこのままでいく。出火原因を探るのも明日になってからだ。家を囲む壁は空気を密閉する以外にも外からの侵入も防止できるしね。ところでさ。」

ニコの元へ行こうとクリスに背を向けたレオは気だるげに返事をする。

 「なんだ。」

 クリスは半焼した家を見ながら言った。

 「陣を展開してる時に個人的に気になる語句を耳にしたんですが、意味を教えてくれるかな?」

 「・・・それも明日だ。」

 そう答えて会話を切ると、レオは小走りでニコのいる場所へ行ってしまった。クリスはそれを目の端に入れることなく見送り、自分を見つめるいくつもの視線を無視して彼女は一足先に宿に戻ることにした。


 彼女がその場所に再び戻ったのは、次の日の朝日が昇り切った二時間後だった。先に起きて現場に赴いたクリスは、五枚の陣を解いた後レオが到着するのを待った。彼が着いたのはそれから十五分ほど経ってからだった。

 二人は一緒に燃え方が酷い家の右側に入った。元々はリビングだったらしく、机や椅子だったものらしきものが転がっている。奥には台所らしきものも見える。

 「火の不始末が原因で出火、に見せかけようとしたのかね。」

 「だろうな。この建物で一番炭化が酷いのはこの部屋だか、出だしもここからで間違いないだろう。」

 「昨日は聞きそびれたけど、この家を焼いた炎の正体を教えてくれるかな?」

 「・・・昨日も少し言った通り、原因は術によってつくられて火が原因だ。その火にはある命令というか・・・、そうだな、設定が施されていたと思われる。」

 「庭の木に燃え移らなかったのを考えると、『家以外焼くな』とかかな。」

 「近いだろうな。後は水による消火の効果が見られなかったことを考えると、『灰にするまで消えるな』のようなことも設定されていただろう。」

 「私がした消火法をされたら一発なのにね。」

 クリスの言葉にレオは笑った。

 「一人の人間が一度に同時展開できる陣の量は二枚。鍛えれば三枚出せるようになるかもしれないが、五枚は普通無理だ。だから、あんなやり方で消されるとは思いもよらなかっただろうさ、犯人は。」

 「私も昨日初めてやって初めて成功したんだけどね。」

 二人は検分を粗方終えると建物を出て、今度は家の周りを調べ始めた。しかし、犯人の痕跡らしきものは何一つみつけることはできなかった。正面に戻ってきた二人は再度半焼した家を前から俯瞰した。

 「なんで昨日ニコの家宝を取りに中に突っ込んだの?」

 「なんだ、妬いてるのか。」

 「・・・。」

 「いや、すまん、冗談だ。その沈黙はどんな言葉よりも傷つく。」

 「で、どうして?」

 「ペンダントを金に換えた時、小さい声で呟いていたのを聞いたんだ。『アレの代わりが手に入っただけよしとするか。』とな。あの石はとても貴重な石だ。それに釣り合う物があっとしたら家宝になっていてもおかしくない。さらにいえば、そんな貴重な物が火事で焼失してしまうのは勿体ないと思ったまでだ。それに、木に燃え移らないことの理由の実証もしたかったしな。」

 「・・・一応納得した。でも、今度からやめてよ、結構焦ったんだから。」

 苦笑しながら悪かった、というレオの顔を横目に見ながら、これはまた同じようなことがあったら繰り返すな、とクリスは密かに思った。

 「そうだ、昨日の約束通り教えてよ。神――――」

 「おや、これはどうことでしょうか?」

 二人が同時に後ろを振り返ると、そこにはこの町には不釣り合いな、身なりのいい黒いスーツを着た男が立っていた。その男を見た瞬間、クリスはある男を思い出した。同じように黒いスーツを身に纏い、彼女を高い壁の中に閉じ込めた男。仕える者に忠実で、それでいて自分の目的のためならその者さえも利用する、カルロスという男を。




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