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光芒  作者: 藍原燐
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地図

 二人が案内されたのは宿の二階の一番奥の部屋だった。店側は二部屋用意する予定だったが、レオが一部屋でいいと断った。隣で聞いていたクリスの顔は、店を教えた男に勘違いされた時と全く同じだった。

部屋はベッドが一つと机と椅子、ランプが一つ天井から吊るされているだけの小さな部屋だった。体を洗う所は一階の真下にあるという。クリスは机の上に鞄を乗せベッドにダイブした。

 「一時間歩いただけだけど、疲れたなあ。」

 「精神的に疲れているんだろう。そのまま寝たい気持ちは分からんでもないが、店主の奥さんに教えてもらった店でこれから必要そうな物一式買いに行って来い。」

 「ええ~、レオが行って来てよ。私なにが必要か分からないし。」

 「俺に下着を買いに行けと?」

 「・・・。」

 ゆっくりとベッドから起き上がりレオに掌を差し出す。彼はその上に先ほどの金の粒を二つ置いた。

 「二つも要る?」

 「念のためだ。一応言っておくと俺の分の荷物はいらないぞ。」

 「分かってる。」

 そう言うとクリスは部屋を出て目的の店に向かった。

 その店は、酒場の宿とは反対の隣に建っている所謂何でも屋だった。食品以外を販売し、頼めば外に買い出しにも出て行ってくれる、この町にとってなくてはならない店だ。クリスはそこで衣類と靴を先に買い、それらを入れるカバンや必要最低限の日用品を次に選んだ。書籍まで売っていることに驚き、中を確かめるが何が書いてあるのか全く読むことができない。

 (これはまた解読の日々の始まりか・・・。)

 目的を忘れてしばし中身を眺めていると彼女の目が一冊の小さな本を捕らえた。抜き出してみるとそれは本というより折り畳まれた一枚の紙だった。丁寧に広げていくとそれは両手で持つと丁度いい大きさの地図だった。平たいへの字型をした大陸らしきものが描かれ、中央からやや右寄りにオタマジャクシのようなものが水色で描かれている。それに加えて所々に緑色の点がある。意味があるのか、カビやシミの類なのかクリスには判別がつかなかった。そこへこの店の店主である初老の男が声をかけて来た。

 「その地図はだいぶ昔の物でね。しかし描かれている大陸の形ほぼ正確だと言われている。これから旅に出るなら必要だろう。今なら格安で売るよ。そうだな、粒一つ分でどうだ。」

 「ぼったくりでしょ、それは。」

 「いやいや、格安だと思うね。でかい街で売ってる地図の基になったような地図だぞ。それぐらいして当然さ。」

 (確かに良い物であることは何となく分かる。でも金の粒一つ分はさすがになあ。万が一それで買って帰って、あいつがどういうか・・・。)

 数分悩んだ挙句、クリスは初老の店主に妥協案を提示する。

 「鞄込みでなら買う。」

 「なら日用品とだ。」

 「・・・。」

 「・・・。」

 無言の遣りとりをしたあと、クリスが折れる形で地図を含めた買い物を終えた。その場で鞄の中に地図以外の荷物を詰めると若干重い足取りでその店を出る。外は空が少し茜がかっていた。

 クリスが宿に戻ると、レオが椅子に座って目を閉じていた。荷物を壁際に置く音で目を開ける。

 「必要な物は手に入ったか。」

 「大丈夫。これ、残金。」

 手の上に乗せられたコインの量がレオの予想より少なかったらしく、

 『何を買った。』

 と目が言っている。

 「その・・・、良い感じの地図を見つけまして。」

 そう言いながら後ろ手に隠していた地図をレオに差し出す。彼はそれを受け取ると地図を広げ、表裏を適当に眺めた後クリスに返した。

 「安くて金の粒一つ分するかしないかだな。良い買い物をしたんじゃないか。」

 予想に反して良い反応にクリスはそっと胸を撫で下ろした。

 「食事は全て隣の店でしてね、だそうだ。」

 「町の住人の人たちも飲みに来るだろうし、ここに居る間は賑やかな食事になりそうだ。」

 「酒臭いのはあまり好きじゃないがな。」

 「お酒か。そう言えば今まで飲んだことないな。試しに飲んでみようかな。」

 「ほどほどにしておけよ。合う合わないがある。」

 クリスは地図を再度広げて眺めながら、レオは再び目を瞑って日が沈み店が営業を始める時を待った。



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