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光芒  作者: 藍原燐
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 レオが再び店の戸を開けたのはそれから三十分ほど経ったころだった。彼は出て行った時には持っていなかった茶色の巾着を腰に付けて、カウンター席に座るなりげんなりした顔で店主に話しかけた。

 「あの男、町の嫌われ者だろ。」

 店主はレオのこの反応は想定済みだったらしく、

 「金貸しをやってる時点でな。」

 と短く答えた。

 「予想の三分の一の値段提示してきやがって、舐めてやがる。イロイロやったらやっと及第点出したからそこで折れてやったよ。」

 その言葉に引きつった笑顔を浮かべるクリスを彼は無視した。

 「もともとはこの町一帯を治めてた家の子孫でな。今でも三分の一ちょっとはあいつの土地だ。貸し賃で生活してるから、金貸しは遊びみたいなもんだな。月に一度外に出て溜まった物品を売りに出ては遊んで帰ってくる。」

 レオが外に出ている間に左端のカウンター席に座っていた男は退席し、代わりに町の住人らしき集団が入れ替わり立ち替わり店に出入りしていた。しかし店主に注文を出すわけでもなく、席で世間話をしている。

 コリを解す様に首を数回左右に揺らした後、レオは店主に水を注文した。

 「客の出入りが多い割に注文はないな。」

 「・・・酒を出すのは日が落ちてからと決めてる。頼まれても出さねえよ、女どもにどやされる。昼間は溜まり場の提供をしてるだけだ。」

 「この町で飲食できるのはこの店だけか?」

 店主はレオの質問にそうだ、とだけ答えてコップ磨きに精を出す。レオは巾着に手を入れて中の物を取り出し、カウンターに乗せた。

 「この粒一つでどれだけ食べられる?」

 それは金色をした一センチほどの形の歪な粒だった。

 「金に換えてくるんじゃなかったのか。」

 「そのつもりだったんだが、男の有り金じゃ足りなくてな。金庫に貯めてあった物と交換するしかなかたんだ。」

 店主は粒を手に取ると親指と人差し指で摘んでそれを色々の角度から観察する。終えるとレオの方にそれを返した。

 「お前ら今日泊まるとこ決まってるか。」

 「いや、これから探すつもりだが。」

 「隣に建ってる横に長い建物、あれはこの町唯一の宿で俺の上さんがやってる。ほとんど客なんて来ねえから酔いつぶれて帰れねえ奴が出た時の預かり所兼物置きと化してるが、使える部屋はいつくかある。そこでの宿泊とメシ代、含めて三泊でどうだ。」

 「・・・それは高すぎだろ。」

 レオとしては一泊出来れば満足だったので、予想以上の提示に逆に焦ってしまう。

 「宿としての質も考えた結果だ。」

 「飲食含めて二泊でいい。お釣りはいらない。」

 その後意外に頑固だった店主を説き伏せてなんとか二人は二日間の宿と食事を手に入れた。店主は宿にいる自身の妻にこのことを話に出て行ってしまったため、店には彼らとテーブル席でたむろする町の住人だけとなった。

 「なあ知ってるか、昨日まで外に出てた奴から聞いたんだが、また一つ町が消えたらしいぞ。」

 「悪魔か・・・。一度門が開いちまうとその後出入りが一定以上空かねえ限り開閉自由になるんだろ? 消えたのは何処の町なんだ。」

 「北の端にある町だって聞いたな。なんでも何年も前に、近くで開いた門から出て来た悪魔に壊滅させられたことがあったらしくて、そこからなんとか復興して安定し始めたころだったらしくてな。今度は町のど真ん中に開いて住人のほとんどは死んじまったらしい。運よく生き残った奴らも、瘴気にあてられて逃げた先でとうぶん身動き取れなくなっちまったらしい。」

 「そんな僻地じゃ生命の水もねえだろうした。」

 クリスはコップに入った二杯目の水を見つめながら、後ろで展開されている町の住人たちの会話に全集中力を注いでいた。その様子を横目で見ながらレオは水をゆっくりと飲む。中身が空になるのと、住人達の会話が別の話題へと移るのはほぼ同時だった。

 「俺はお前にとって歩く辞書みたいなものだ。気になることは、望む範囲で全て話すぞ。」

 クリスは少し悩んだ様子だったが、意を決して口を開いた。

 「じゃあまず悪魔について教えて。」

 「悪魔はこの世界に住む生物じゃない。本来は地獄世界の住人で、簡単に言えば真っ黒な巨人だ。口はあるが牙はなくそこから出るのは耳を塞ぎたくなる声と瘴気、四本の手足にはそれぞれ人間と同じように五本の指があり鋭利な爪が生えている。地獄に居る際は割と大人しいが、天上世界に出てくると一変、人や物を破壊する事のみに全能力を使い、一定時間経つと消滅して地獄に還る。」

 「じゃあその口からでる瘴気っていうのは?」

 「毒素だな。人や動物が吸うと何かしら体に異常をきたす。一番多いのでいくと呼吸不全だな。それで動きが鈍くなった奴から襲う。他には、少し経ってから手足が動かなくなったり、倒れたきり一生意識を戻さなかったりが多い。」

 「門って?」

 「地獄と天上を結ぶ出入り口だ。地上や霊魂世界との間には存在しない。悪魔は力を持ってる奴しか興味がないからな。本当なら開くはずがないんだが地獄の管理をする神が眠ったままでいつでもどこでも開き放題なのが現状だな。」

 「・・・力を持ってるって?」

 「お前が扱う力の事だ。この世界の人間の全員がその力を持ってる。お前はこの世界においてある一点を除いて普通だってことだ。」



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