飾りじゃない。
七瀬は今年で26歳になるのに未だに将来を考えることが出来る相手に巡り会っていなかった。一体何人の男性と付き合ってきたのかすら覚えていない。そんな自分に苛立ちさえあった。だけど、どうしても続かない。自分からフェードアウトしてしまう。そもそも、人を好きになった事が無いのかもしれない。
嫌なことがあれば、直ぐにまた誰かいると別れを告げてしまう。確かに七瀬は男がとぎれた事が無い。次から次へと順番待ちしていたかのように男が現れる。
でも皆、所詮外見しか見ていない。そう思っていたし、可愛い、美人、そんな言葉は聞き飽きていた。
『あたしって、内面褒められた事ないかも。』
そう呟いて自分が写っている写真を眺めた。隣には最近付き合い出した彼氏が写っている。そう言えばこの男も
『一目惚れした』
と告白してきた。どいつもこいつもバカだと思う。
可愛いと言われる度に虚しくなった。何かがかけていった。いつからだろう、七瀬は自分がモテると自覚するようになってからワガマ
マ放題になった。かぐや姫の様に無理難題を押し付けて相手の気持ちを測った。これだけワガママを言っても相手はまだ好きだと言うのか確かめたかったのだ。自分の顔だけじゃない。
その証が欲しかった。それがどんどんエスカレートしてしまった。
今日は2週間ぶりのデートだった。待ち合わせ場所はやたらと人混みの中。
クリスマスシーズンで沢山のカップルを見かける。皆楽しそうに彼氏に寄り添う。
それを見て胸が痛くなる自分がいた。七瀬は時間よりも少し早く着いた。彼氏が五分遅れてやって来る。
『今日も本当に綺麗だね、この人混みの中で1番!ナンパされなかった?一緒に歩けて鼻高々〜』
そんな、バカみたいな台詞を吐いた。それから歩き始めても
『今、七瀬の事めっちゃ見てた男いたよ!しかも可愛いって言ってた!』
そんな話ばかりだった。
『結局、顔か。』
七瀬はそう呟くと
『あたしあんたの飾りじゃないから』
そう言って人混みに消えて行った。