たくさん眠るために保養地に逃げる計画を立てました、婚約者が。
なんでもあり。
「どれだけ寝ても、すごく眠たいの」
私は瞼を擦りながらそう言うと、婚約者はニヤリと笑って頷いた。
「よし、バカンスに行こう!」
はい?
最近の私は、どれだけ早くベッドに入ってもたくさん眠ってしまう。
朝、起こしに来られても、なかなか起きれなくて困っていた。
医者にも、「時々、そういう人が現れます。体質か、魔力の問題か、いまだに解明されていませんが、おさまるまではたくさん寝るしかないのです」と言われてしまった。
たくさん寝るにしたって、夜会やお茶会や、お勉強やら花嫁修行やら、やらないといけないことがあるというのに、ずっと寝てばかり入られない。
どうしたものかと思って、婚約者のエドリーに言ってみたところ、「バカンスに行こう」と嬉々として言われた。
なぜに?
「君は眠くて仕方がない。僕はいい加減、休暇がほしい。ちょうどいいと思わないかい?」
「意味はわからないけれど、あなたはもう少し休んだ方がいいと思うわ。働きすぎだもの」
「僕もそう思う。こき使われすぎて、休暇申請が5回も破棄された。こうなったら、強硬手段に出るしかないよ」
「それで、バカンス…?」
「そっ!まあ、表向きは違うけどね」
「?」
「まあ、任せてよ。僕、仕事はできるからさ」
そう言って、クマのすごい顔がさっきまで疲れていたのに生き生きとし始めたので、まあいっかと思ってあくびを一つしたのだった。
それからというものの、あっという間に私はエドリーの領地にある保養地に来ていた。
しかも、エドリーのご両親も同行してくださって、別荘をお貸しいただけることになった。
もちろん、エドリーも一緒である。
「将来の大事なお嫁さんのことなんだから、これぐらい当たり前よ。甘えてちょうだいな」と言われた、エドリーあなた何したの?
満足げに枕を抱えているエドリーは、ニヤリとするだけ。
「あなた、よく休みがもぎとれたわね…?」
「婚約者の一大事ですから」
「なんて説明してきたの?」
「そりゃあ、表向きには『静養の必要な婚約者に、最善を用意してあげたい健気で愚かな男』になってきたよ」
「……なんか怖い単語が並んだ気がするんだけど」
「『愛しい婚約者を一人で送り出せないので、せめてひと月付き添わせてください』って言って、6回目の休暇申請をねじ込ませてきた」
「なんで、今回は通ったのよ」
「書類申請係が大変な愛妻家なもんで、気持ちで訴えてきた」
「……今頃あなたの職場では、その手があったかとなっていそうね」
「流行りそうだよね」
いいのだろうか…?
まあ、そうでもしないとろくな休みも取れない職場だから、いいのかな。
人員を増やせばいいのにというエドリーの文句も少しは減るといいな。
「ということで、思う存分寝よう〜!」
「あなたが寝たいだけに聞こえてくるわね」
「うん、僕も寝たい。唯一惜しいのは、君とまだ婚約中だということだけだね」
「どうして?」
「せっかくここまできたのに、隣で眠れないじゃないか」
エドリーはとても機嫌がよさそうに笑うから、私の頬は少し赤くなった。
「大切なお嬢さんを預かっているんだから、まだだめよ〜」と、エドリーのお母様の声が飛んできて、余計に赤くなる。
「わかっているよ。僕の監視役で両親も呼んだんだから」
「え?」
「寝不足だと、頭が働かないからね。一応?」
「……なんとなく、愛だけ感じたわ」
「それは何より。それじゃあ、好きなだけ寝ることとしよう。どれだけ眠れたか競争ね」
「…ふふっ、それ競争なの?」
私が笑うと、エドリーは少年のように笑った。
「僕、負けないから」
「私はひとまず一日中寝てみることにするわ」
「いいね〜!僕は久しぶりに昼寝もしたいなあ!」
「それなら、いつか庭にデッキチェアを用意してもらって、外で昼寝でもする?」
「なにそれ、すごくいい!」
「あらやだ、私も監視役でご一緒したいわぁ」
「その際はどうぞよろしくお願いします、母上」
「はいはい。さて、あなたたちそろそろ寝てらっしゃい。相当眠そうよ?」
エドリーのお母様にそう言われて、私たちは顔を見合わせてから、頷いた。
「「はい、おやすみなさいませ」」
了
お読みくださりありがとうございました!!
毎日投稿203日目。(年に何回かあるよねぇ、寝ても寝ても眠い時期。)




