第1話 私、婚約破棄をされたようなのですわ
「マリア・ライナス! お前との婚約は破棄させて貰う。そして私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と新たに婚約を結ぶ!」
王家の開催する夜会で私の婚約者であるサルトル様が突然大声を上げました。まあ、なんてマナーのなっていない困った方なのでしょうか。そして良く意味が分からないわ。
わたくし、マリアは一歩だけ前へ出て、淑女の礼をします。そして陛下が好きにして良いと手を挙げられたのを確認してから、口を開きました。
「失礼ながら、サルトル様。リーリエ・カントさんとはあなたの後ろにいらっしゃる方の事でございますか?」
「そうだ! 学園でお前が嫉妬で虐めてぼろぼろにされた可哀想な女性だ!」
ぼろぼろに、ねえ。その割に髪も肌も……お手入れはあまりしていないようだけど、ぼろぼろではないわね? 怪我も傷もないようだし。
「申し上げますが、わたくし、そちらの方は初めてお目にかかったのですが。何かお間違えではありませんか?」
「サルトル様……わたしぃ怖いですぅ」
「大丈夫だよ、リーリエ。公爵の私が守ってあげるからね」
はぁ、なるほど。陛下を見ると演劇を見るような目でいらっしゃるし、お父様を見るとため息をつきながら、好きにしなさいと言ったところかしら?
はぁ面倒くさいですが、ある意味わたくしの蒔いた種ですものね。しっかり刈り取るとしましょうか。婚約破棄と叫ばれて長い憑き物が落ちた気すらしますもの。
「そちらの方を虐めた事などございませんが、サルトル様。婚約破棄は承りましたわ」
わたくしの言葉を意外だと受け取ったのかサルトルは
「お、お前が引き下がるとは。私との婚約が大切では無かったのか?」
自信なさげに聞いてくるから、少し笑ってしまったわ。
「婚約破棄は承ったのですが」
お父様を見ると、頷いてくださったので、この婚約破棄は冗談では済まされなく受理された、そう言う事なのです。
「詳しく内容を聞いてもよろしいかしら? 後から違った、そんなつもりは無かったなどと言われてはたまったものではございませんので」
正面からサルトルを見つめ返してはっきり言います。するとわたくしの元婚約者も
「あ、ああ! お前の悪事はみんな知っているからな!」
と、よく分からないですが同意して下さいました。
さあ、事実確認を致しましょう。




