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1-2 父、勇者 母、大魔導師 ……俺、門番②

 しかし、ルメシアの言い分は尤もである。神太郎自身、彼女の憤りは理解していた。されど、態度を改めるという選択肢はない。これが彼なのだ。己を偽って生きることほど辛いものはないのだから。


 とはいえ、望んだ仕事なのだから一応務めも果たす。その後、神太郎は門番の仕事に戻っていた。


 キダイ王国を囲む巨大な城壁。その東西南北四ヵ所に巨大な門があり、そこが外界との唯一の繋がりとなっていた。たった四ヶ所しかないためせわしなく人々が往来しており、しかも関所でもあるから揉め事も多々あった。


 早速、それが起きる。


「待て。この通行許可書は期限切れだ。出国は認められない」


 神太郎の同僚の一人が、ある一行を咎めた。相手は行商で、二台の荷馬車を引き連れている。


「ご勘弁下さい。期限が切れたと言ってもたった一日です。昨日の大雨で出立が望めなかったのですよ」


 主であろう行商人がそう言い訳をした。だが、通じるわけがない。


「規則は規則だ。出入国管理局で再発行してもらえ」


「今日出なければ取引に間に合わないんです」


「それはそちらの都合だろう。さぁ、戻れ」


 同僚はもう相手にしないとばかりに手を振った。しかし、相手は世界を股に掛けて商売をする行商人である。ここで引き下がるほど柔ではない。


「お役人様、些少でございますが……」


 彼は小声で言いながら、同僚に小さな包みを密かに渡した。中身は銀貨。つまり賄賂である。


 同僚もまた返そうとはしない。それはそうだろう。何せ、神太郎との博打で文無しなのだから。


 実はこのようなやり取りは、現場では暗黙の了解として認められていた。列の後続は常に渋滞状態。出入国をスムーズに行わせるのも門番の務めであり、厳格に規則に照らし合わせていたら社会が回らないのだ。だから、期限切れでも賄賂という追加費用を払えば出国を認めることはあった。この行商人もそれを期待していたのだろう。


 後ろで様子見をしていた神太郎もまた、たった一日ぐらい見逃してもいいと思っていた。


 ただ……。


 神太郎はおもむろに馬車の荷台を覗いた。次いで、それを見て少し顔を強張らせた行商人に質問をする。


「しかし、昨日は酷い雨だったな。あれじゃ出立なんて無理だ。運がない」


「え? ええ、本当に困りましたよ」


「許可書には、荷は羽毛だと書いてあるが?」


「はい、アルワン王国で捌く予定でございます」


「羽毛といえば、やっぱり軽さが売りだよな」


「はい、木綿や羊毛より遥かに軽く、人気の品でございます」


 そして、神太郎は馬車の車輪を見ながらこうも言った。


「その割には、随分馬車が重そうじゃないか」


 ぬかるんだ地面に溝を残した車輪を見ながら……。他の馬車と比べ明らかに溝が深い。


 顔を青ざめさせる行商人。状況を察した同僚たちが馬車を囲うと、相手の奉公人たちもあからさまに取り乱す。


「昨日の雨で全て台無しだ。お前ら、本当運がないな」


 その神太郎の言葉に、行商人はもう項垂うなだれるしかなかった。


 その後、荷をあらためてみれば、羽毛の箱から出てきたのは大量の金塊だった。無許可の持ち出しは固く禁じられている。つまり、神太郎のお手柄である。


 このように、彼は門番としての最低限の義務はキチンと果たしていたのだ。

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