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禁断の果実  作者: 天海
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1.おじいちゃん

「せかいでいちばんきらいなひとはおじいちゃん」

「そうかそうか。二番目は?」

「おとうさん」


 おじいちゃんとの思い出は少ない。小五のときに死んだから。


 低学年、多分小一くらいのときに、おじいちゃんが嫌いで仕方ないことをどうにか伝えたくて、「せかいでいちばんきらい」って口にした。満面の笑みで「そうかそうか」って頷くおじいちゃんを見て、「ぜんぜんつたわっていない!こんなにきらいなのに!」って歯がゆい思いをしたことも覚えている。


 なにか悪いことをしたらしく、玄関まで引きずられて、外に放り出してドアを閉められたこともある。何度も何度も。蹴ったら倒れそうなおじいちゃんなのに、抵抗できないことが悔しかった。今なら絶対勝てる。抵抗どころか、蹴り倒せる。


 一度、私のなにかしらに怒ったおじいちゃんが、家の横にある物置に私を閉じ込めようとした。物置というよりトラックの荷台のようなそれは、鉄かなにか、とても重いものでできていた。全身の体重をかけないと、こどもには開けられないような重みだった。

 閉じ込められたくない私は、扉を閉められる直前、咄嗟に扉へ手をかけた。鉄の扉に親指が挟まれて、絶叫するほど痛い思いをした。


 そのときに親指の爪がなくなったから、今ある爪は二代目になる。

 世界で一番嫌いなおじいちゃんは、私がインフルエンザで小学校を早退した日に死んだ。

 訃報を聞いてもなにも感じなかったけれど、死体を見ると涙が流れるから不思議だった。死んでせいせいしていても、涙は自然と流れるもんなんだとそのとき知った。

 世界で一番嫌いなおじいちゃんが死んだから、世界で二番目に嫌いなお父さんが、繰り上がって一番になった。

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