~第3幕~
2024年の師走にはじまった「漫才王になろうGP」は元々「漫才王GP」という名称で世に広まっていた。その漫才王GPの最後を飾ったチャンピオンが田口エンタメ野郎を擁する令和ロマンスだ。彼らはその大会で歴代最高得点となる493点を叩きだした。
優勝した瞬間に彼はいった「来年もでます! 2連覇します!!」と。
後日、大会委員長を務める松薔薇の『やつらが今年の漫才王にくるなら、俺は審査員席でなくてもええ。客席でええ。何ならステージの床になってもええ』とXでポストした。コレに田口は喜んでいたものだが、漫才王GPは松薔薇の例のスキャンダルが過熱するのに比例して開催が危ぶまれた。そしてその年の開催は見送りとなる。漫才王GPで稀にみるチャンピオンの2連覇挑戦。しかし、遂に松薔薇は裁判で敗れてこの世からも去った――
漫才王GPはこの流れで一旦なくなる事となる。
が、伊達賢治という男がこの大会の主催である吉原の買収に動きだした。このムーブは漫才王GPを彼に手により再び始める事を意味していたと受け取る者も少なくなかった。田口もその一人だった。
だから「漫才王になろうGP」がはじまるとなった時はSNSでその喜びなるものを炸裂されたものでもあった。元々伊達の事は酷く嫌っていた彼だったが、この時だけ伊達を認めるような言動を繰り返す。しかし彼は新ルール規定で前年のチャンピオンのエントリーは禁止する事とした。その代わりに大会にまつわる案件なら歴代のチャンピオンに用意するとクリスタルエデンから声明が。これに田口は激怒した。「松薔薇に呪われたキャリア」と謳われた自分がどんどん沈没してゆくのを我慢していられないからだ。
彼はその時代のなかで吉原の人気芸人として生きていけない事を悟った。漫才王になろうGPの審査員を務めたのちに吉原興行を退社。田口エンタープライスという事務所を相方の田中小雪と立ち上げる事になる。
これが意外にも新たな潮流を生んだ。
松薔薇の件に岡崎の件など闇が深いニュースの影響を受けて次々と吉原の人気芸人が事務所を移籍または個人事務所の立ち上げをするように。吉原に残ったタレントとスタッフはそのほとんどが老獪な者ばかり。反松薔薇の派閥が吉原を牛耳っても風前の灯にみえるのは仕方のない事だ。そう悟って吉原を退所した芸人が向かう先、それが伊達のクリスタルエデンか田口の田口エンタープライスだ。
時代の寵児は生まれるべくして生まれる。それは伊達賢治だけの言葉でなかった。
吉原興行からクリスタルエデンか田口エンタープライスへ。そして陸続と現れる芸能事務所の数々。メディア・エンターテイメントの世界は激動した。
だから彼は満を持して動きだしたのだ。
伊達の「漫才王になろうGP」を元の「漫才王GP」に戻す為に。
伊達が急に引っ込み始めたのはこの田口の猛攻があったからだとも言われる。
しかし、その誰もが気づいてなどいなかった。
彼はハナから動揺なんてしていなかったのだ。
都内の高級高層マンション。
彼が別荘として持つその拠点で彼は田口の動画をテレビでみていた。
「そろそろ狩るか♠」
バスローブ姿の彼は高級なソファーで寛いで好物のウィスキーを吞み続ける。
彼の計画はまだ始まったばかり――
∀・)明日、完結します。令和ロマンが今年のM1で優勝したらこの話ってめっちゃタイムリーですよね(笑)そちらも楽しみにしております(笑)ではまたお会いしましょう☆☆☆彡