~第2幕~
伊達賢治の事を考察し始めると何をどうみても謎に満ちている事ばかりだ。
彼が裏舞台に引っ込み始めたとき、バラエティ番組で妙な光景を目にする事があった。彼はカメラに映ってないオフの時はウィスキーを常に手に持ち、チビリチビリと飲むという態度をどこの現場でもみせていた。ハッキリ言って常識的な社会人の行動ではない。
しかし彼はとうとうカメラに映っている時ですらその呑み助ふりを隠さずに見せびらかすように。世間から当然のようにバッシングがあるも、不思議なことに彼はまったく酔ってないのだ。
あるスポーツ番組にでてきた時も彼はウィスキーを手に持っていた。
お酒を飲みながら球技をするスポーツ選手なんていない。しかし彼はまったくなんの違和感もなく運動神経の高さをテレビ画面に映してみせた。共演する男性アイドルや元スポーツ選手のタレントたちは唖然とした。
ネットニュースでは伊達の持つウィスキーボトルのなかに入っているのはただの水でお酒ではないという噂をまことしやかにするように。「伊達酒」と揶揄も。
この論議が交わされるにあたり、伊達賢治は自らのSNSで「何が本当なのか分からないから面白いのだろう?」と意味深なポストを残すまでした。
彼の出自を調べれば尚更そのルーツが奇妙なところにある。
彼は島根県の松山市にある孤児院で育ったとされる。つまり両親はいない。が、6歳までは出雲市で育った記録があると週刊誌の記者が突きとめた。
この彼が6歳だったときに当時シングルマザーであった神宮愛子という女性が首吊り自殺をしたことがあった。その彼女の遺体の傍で幼い男児が浴びるようにして酒を飲んでいたという。神宮氏の自殺は遺書も残っており、自殺である事は間違いないようだ。しかし噂レベルではあるが、この神宮愛子という女性は元々放送作家をしていたキャリアがあると判明する。また野神愛という本名を東京へ上京した時に改名までしている。
当の伊達賢治本人は「仮に本当にそうだったとしても、俺は覚えてなんかない」とSNSでコメント。だが、この事がネットで騒がれるにつれて彼はいよいよ酒飲みとしての自分をこれでもかと世間にみせるようになった。
何が彼をそうさせたのか。この出自の事で騒ぐことに嫌気がさしたのか、遂に表舞台に顔をださなくなった。
そしてそれから少しして衝撃のニュースが世間を揺るがす。
人気ドラマ「ドロップアウト」を終了するとクリスタルエデン公式から声明をだしたのだ。
これにはファンから動揺の声が。アンチは歓喜乱舞するものであったが、その理由も明かすことすらしなかった。
話題となった「ドロップアウト~林萌香の生きる道~」の最終回は綺羅めくる演じる主人公で化け狸の林萌香と蒼月しずく演じる鷹山優が睨み合いをするのち鷹山が萌香の人間味と強さを認めて終わるという何とも味気ない最後だった。
原作となる小説や漫画などは存在しない。
完全に伊達賢治のオリジナルとされる物語。
時代の寵児と騒がれ讃えられた男が放った筈の物語だ。
それがこんなに呆気なく終わるものなのか?
このタイミングでさらに騒ぐ男がいた。
「漫才王になろうGPの主宰者を俺に譲ってもらいたい」
伊達賢治と確執があると噂されて止まない若手人気芸人の筆頭、田口エンタメ野郎だ――