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~第1幕~

 挿絵(By みてみん)



 2025年2月14日。バレンタインに湧く世間はお笑いニュースにも湧いた。



 リニューアルした漫才王GPこと「漫才王になろうGP」で、もふもふ王国が優勝。コンビ結成から3年目の新鋭がトップバッターで最高得点をたたき出して最終決戦に進出、そのまま優勝を果たす。



 2025年4月1日、人気ドラマ「ドロップアウト」が放送開始。松薔薇太志との確執や流行歌「うっせぇよ」で名高い綺羅めくるを主演に抜擢。さらに男性人気アイドルとして国民的支持から世界的支持まで集めるジストペリドの如月湊も出演。さらに蒼月しずくや山田エヴァ万桜など様々な大物俳優をこれでもかと呼びこんでいる。俳優フェニックス大のブレイクにも大きく貢献した。



 ドラマの視聴率は数年前に放送されて記録した全沢尚樹を1パーセント上回る日本ドラマ史上最高の数値を記録した。ネット配信の主流とされるヨウチューブまたはドレイクで放送されるものを老若男女問わず観るようになったとするこの時代にまさかの快挙だ。その背景に伊達賢治という男の存在が浮かぶ。



挿絵(By みてみん)



 この原因を考察すれば、いくつか線になる点と点がある。彼はヨウチューブを主戦場にして自身の擁する芸能事務所・クリスタルエデンを切り盛りしていた。世間を圧倒的に騒がせた「松薔薇太志提言」に松薔薇死後からの「吉原買収騒動」といったアクションを起こしつつ。松薔薇なき芸能界のドンには自分がなるのだとまるで豪語しているかのように。ただ現実はそのとおりの事実を映す。



 思えばこのあたりから伊達賢治は表舞台に出なくなった。人気ドラマ『裏返りのリバス』や映画『番宣女優の実話怪談』での出演はあるも、バラエティ番組で彼の姿を見かける事はなかったし、それはヨウチューブでもそう。それどころか自身の所有するチャンネルまでも消した。



 世間では色々騒がれているが、彼はメディアに映らないだけで活動はしていた。



 今日も本社の社長室でウィスキーを飲みながら社員との会談に応じる。



「だから、その、彼女たちにそういう番組を持たせてあげて欲しいのです」

「………………」

「………………」


 挿絵(By みてみん)


 昨年度の漫才王になろうGPにて決勝に進出するも、最下位まで沈んだぽちゃらっびゅ~の2人とマネージャーだ。彼女達はだらしない姿で高価な椅子に座る酒飲みの男に深々とお辞儀した。



「わかった。お前らを護る事は護るよ。ただ出演したい番組を指定するのは君にできないことでしょうが。俺に言ったからってできることでもない……それから今はそもそもテレビに縋りつかなくてもいい時代だろ?」

「それは……」

「テレビの時代はもう終わる。よくみておけ」



 ぽちゃらっびゅ~にバラエティ番組「ガキどものお仕え」に出演して欲しいとオファーがあった。しかし、この番組は出演者に無茶苦茶な事をさせている番組として悪名高いものであった。人気ロックバンドでもあった歌ウ蟲ケラは同番組レギュラーとなり世間から必要以上に弄られるように。それが発端でライブ中に酷い事件まで生じた。元々は過激なお笑い思想を持つ松薔薇の提案ではじまった番組らしい。だが松薔薇が死んだ今となっても、彼の遺志を継ぐという事で吉原出資のもとで番組は続いている。割と体を張るロケでもこなすぽちゃらっびゅ~であったが、さすがにこのオファーは断る判断をするしかなかった。彼女達は元々吉原所属のタレントであったが、これを機にクリスタルエデンとの契約を結ぶ事とした。が、最後の最後まで吉原は彼女達に「ガキどものお仕え」出演をさせてあげたいと諦めてこなかった。この相談をしに彼女たちのマネージャーは事務所社長の伊達とアポをとった。願わくはクリスタルエデンが関わる番組への出演もさせて欲しいとアピールした訳だが……



「ネットニュースでみて大袈裟な嘘だと思ったけども、何なのアレ!? マジで普段から酒飲みじゃん!? アレが今の芸能界のドンなの!?」

「しっ! 杏子ちゃん! 声がでかいよ!」

「いや、だってああいう酒飲みが吉原を買おうとして、人気ドラマや人気映画の主演に監督までしてって世も末だわ!!!」

「私達はまだそこまで認めて貰ってないって事だと思う。来年の漫才王でもっと高い位置にいくしかないわ。もう優勝するしかない」

「決勝にいくまでどれだけ大変だったと思うの!! 小桃もなんか言ってよ!!」



 長いエレベーターのなかで小桃はずっと俯いて黙っていた。



 ようやく1階に着く。



 そこで彼女は顔をあげる。そしてその言葉を吐く。それはとても大事な何かを告げるかのように――



「テレビの時代はもう終わる。よくみておけ」

「何でココでそんなキメ顏でキメ台詞!?」



 いや、これはそんなメディアの裏側の歴史を覗いた物語。



 ここで出会ってしまったからにはお付き合い願おう。




∀・)新連載を開始しました!『メディア王に誰が鳴る』の続編になりますが、そちらを読まなくても多分楽しめる内容にはなっていると思います!劇団になろうフェス最終日に完結予定です!楽しんでくれい(笑)

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― 新着の感想 ―
 伊達賢治の裏側ですね。期待してます。  ではまた。
新作3連投って凄げぇ──ッ! チョコチョコ追いかけさせて貰いますので、頑張って下さい!
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