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プロローグ






 掃除機を持って階段を上る。

 二階の自分の部屋に掃除機をかけ、また掃除機を持って今度は息子の部屋へ行く。入ってすぐのところに掃除機を下ろし、教科書や辞書がきっちりと並べてある机に向かう。

 机に備え付けの棚に写真立てが二つ置いてある。

 一つは息子と彼の父が楽しそうに笑いあう写真。息子が小学一年の春にピクニックに行ったときに撮ったものだ。

 もう一つは、息子が幼い頃に数年だけ過ごした湖畔の写真。青の湖とそれを囲むような緑の木立と、白い小さな家。彼が望む故郷の風景。

 瞼を閉じれば、あの地を吹き抜ける風が思い起こされる。

 水の匂い。湖面が揺らめくときらきらと瞬く光。木の葉が擦れる音。

 わたしにとっても懐かしい、美しい地。それでも、仕事を棄てることはできないから、帰られぬ遠い故郷だ。

 今は見ることの叶わない、二つの風景。






 息子がクマになった。

 ちいさくて、かわいくて、不恰好な、熊になった。






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