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 イルマリンが下卑た笑顔をぶら下げて、イシュの同意を誘おうとすれば、相容れない間柄にあると白眼視が向けられる。


「オレは魔術師だ。アンタと同類じゃない」


 背信者として街を駆け回るイルマリンの評判は、魔術師の間で有名であり、ハーキッシュから度々聞かされていた。


「なるほどね。ローブを羽織っていないから、分からなかったよ」


 機嫌を伺うように持ち上げた口角を下げると、仔細顔になってイシュとの距離感を間違えたことを把握する。


「なら、行ったほうがいいんじゃないか?」


 特権的な立場にある魔術師の肩書きに対して以前から疑義を抱いていたイルマリンは、やや悪戯に笑いかけながら、足踏みするイシュの背中を押した。イシュも背信者と肩を並べて、刻々と変化する状況を前に徒然としているのは居心地が悪く、不承不承に前進するしかなかった。足元を見たイルマリンの小賢しい弁舌に乗せられてイシュが動き出しのと同時に、侮辱じみた見送りの言葉を送る。


「大変だなぁ。貴賤意識に囚われた人間というのは」


 他者との繋がりを強く意識し、排他的な集団の中心として拘りを持っていながら、跳躍するカムラとビーマンの後ろ姿をどこか遠い目をして眺めていた。イルマリンは回顧する。「アニラ」という集団に属している間に、腹の内を曝け出した瞬間が一度でもあったか? 過去を振り返れば、常に牽制し合い、互いの成果物を鼻に掛けて披露するだけの空笑いが似合う浅薄な関係だったかもしれない。カムラとビーマンの間に付き纏う喜怒哀楽の果てにある恩讐は、他者を知ろうとするからこそ起き、イルマリンが望んでやまない「価値」の本質が埋まっていそうな、そんな感覚があった。


「……」


 閉口するイルマリンの脳裏に、とある感情が掠め通る。それは図らずも、身体を動かす原動力となり、そぞろに彼らの勇姿を追いかけていた。損益の話ではない。人間が備えて然るべき生理現象のようなもので、決して切り離すことができないものである。


 それぞれがそれぞれの決心と覚悟を持ち、世界の命運に挑む中、バエルは元凶となった“穴”の場所に出向いていた。老い先短い人間が、周囲にもたらす影響をまるで顧みず、空間に風穴を開ける迷惑極まりない行動の後始末に駆り出されたバエルの心情は、とてもじゃないが常人では理解できない境地に至っていた。夢見心地を体現する暑さに浮かされたような弛緩した顔付きは、バエルを召喚した召喚士の期待とは乖離しているかもしれないが、その悲願は無事に達成されようとしていた。


「ここだね」

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