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侃侃諤諤

「先ず、穴に栓をするって、具体的なやり方はあるのか? 聞いたところによれば、空間に穴があると伝え聞いたんだが、それにどう干渉するもりなんだ。雑草でも詰め込む気か?」


「お。鋭いね」


 皮肉のつもりで言ったイシュの草案がよもや、バエルが所望する展開に掠めるとは露も思わず、目を丸くして驚いた。


「未来永劫を約束するには雑草は些か心許ない。これは僕の、ある種の好奇心ではあるのだけれど」


 バエルはそう言って、口角を僅かに持ち上げた。直後、言霊による実効性を訝しむように、口を手のひらで抑え、自身の考えが如何に綱渡りめいた不確定なものなのかを語るに落ちる。


「どうぞ、仰ってください」


 言葉を窮するバエルの背中を押したのは、配下であるアイであった。不審に思うイシュを差し置いて、従僕らしい恭順な姿勢を崩さないアイは、上記の提案を冗談めかして嘲笑することは決してしない。どれだけ大それたことを述べようとも、真心を持って傾聴し、頭を縦に振るだけだ。


「湖の生物を殲滅したのち、空間に空いた穴に召喚の陣を貼り付ける」


「召喚?」


 イシュとほぼ同時にレラジェも首を傾げた。第二の人生を謳歌する為に、バエルの英雄的思想に則するつもりではあったが、方法に関して疑問は尽きず、遠大な力の持ち主とはいえ全幅の関心を寄せるような信仰心はなく、常にその眼差しは品定めに準じる。そしてそれは今尚、引き続き持続していて、レラジェの価値観がひっくり返ることがない。炯々たる視線に終始しながら、バエルの口車を訝しげに捉え続ける。


「あの生物を召喚するんだよ」


 バエルは、愉快な悪戯を思い付いた子どものように、八重歯を覗かせて屈託なく笑った。頭の上に疑問符が寸暇に浮かんだものの、レラジェの顔色は赤みを帯びて、脳が甲斐甲斐しくペダルを漕ぐかのように回転を始める。「成功」と「失敗」の二文字を天秤にかけ、よりどちらに傾くかを思案し、バエルの魂胆に手を貸すだけの確信を得ようとした。


「つまり?」


 沈黙するレラジェを他所に、イシュは更なる手応えを求める。死地に飛び込む殊勝なる心意気を拵えるには、頑強な後ろ盾が欠かせず、退路を絶ってまで世界の命運に命を賭す動機と、結果に結び付く力強い自信を求めていた。


「同士討ちだよ。此方にやってくる来訪者を丸ごと召喚し、鉢合わせるんだ」


 結実した未来を想像するバエルは哄笑し、失敗をまるで顧みない。レラジェはその性質を重々承知しつつも、あまりの悩ましさに頭が落ちた。


「それはあくまでも、一時凌ぎにしかならないのでは?」


 直裁に疑問をぶつけるイシュの毅然たる発言に、バエルはまるで待ってましたと言わんばかりに前傾姿勢になった。


「そこがミソだ。召喚の陣を何枚もの紙を使って描き、穴に貼り付けたのち、永続的に魔力を流し続けるんだ」

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