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「私の作戦はあくまでも、この場所にレラジェやバエルを誘き出す為のものでしかない」


 ウァサゴの本懐を省みる余裕はなく、巧まずして落ち度を指摘される格好となった。このような小さな諍いから、袂を分かつ深刻さに繋がるのは、ベレトにとってあまり好ましくない。現状、利害の一致を条件に二人の関係は維持されており、ウァサゴの機嫌を原因に瓦解することも大いに有り得た。


「……そこにいるのに」


 歯を食いしばって悔しがるウァサゴの口元は、荒波の如く波打って、ままならない現状をひとえに憂いた。のべつ幕なしに口を動かして、ウァサゴに前向きな感情の原動力を与えようとは思えず、ベレトは気怠さに託けてベッドの上で大の字になった。見て見ぬフリをしろと諌めるような口吻をすれば、すかさず睥睨され、恨み節を垂れ流されるだろう。だからといって、手をこまねいていれば、好機を逃すかもしれない。目まぐるしく、あらゆる選択が頭の中を駆け巡る。


「ただ言えることは、レラジェのいるところにアイはいる。必然的にな」


 ベレトは少し苦い顔をして言った。何故なら、ウァサゴとレラジェの特殊な関係からくる展開の妙に不確定要素が多く占めており、バエルを打倒するという当初の目的が有耶無耶になってしまうのではないか。そんな不安がベレトの胸中に渦巻いていた。正しい主張とはいえ、ウァサゴを早々にレラジェと鉢合わせることを自ら進めるというのは、あまりに多くの不安を残し、口惜しかった。


「色々と助かったよ」


 ウァサゴが皮肉な笑いを浮かべ、自身の趣向する踏み台になったことを感謝した。ベレトはそれを横目に、部屋から飛び出すウァサゴの背中を見送った。


「さぁ、こっからどうなるか」


 大立ち回りを演じる場所の指定および勝つ為の手段に関して腹積りはあったものの、各々が成就すべき目的に邁進した結果、ベレトが概算する通りに進むとは限らない。これは計画を揉んだからといって、コントロールできるものではないし、ある程度の妥協も必要だ。それが今回の出来事であった。もし仮に、あの魔術の迸りがレラジェの放ったものだとして、どうしてそのような状況に陥った。レラジェもまた、この地に於いて混沌に足を突っ込んでおり、我々に気を払って息を潜める訳にも行かなくなった。


 ベッドの上で夢想するように目を閉じ、ベレトは思索に耽った。恐らく正味一分もない。だが、時間は伸び縮みを繰り返す糸のように、柔軟性を持って個々人に影響をもたらす。それは外界の認識とは切り離された主観的な感覚に紐付いており、言葉を用いて共有しようとすると忽ち雲を掴むような感触に苦難する。それはある種、人間が超自然的な領域に足を踏み入れた瞬間といえ、ベレトが間もなく決心を新たにベッドから離れる際の身軽さは、時間の概念を超越した経験値を手に入れた証であった。


「よし」

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