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嘘偽りのない真意

 街に潜入し、ベレトの動向に目を光らせるつもりでいたカムラからすれば、この行動は極めて不合理で本分を半ば放棄したといって差し支えない。震える舌の上で必死に音を立てないように振る舞う街の静寂は、少しの物音すらおどろおどろしいものに変える。それは、住民に通底する意識であると過言ではない。何故なら、掟破りの二人の諍いは、戸締りに拍車をかけて

祈るかのような所作に導いた。バエルとの関係に決着を付けるつもりでいたベレトにしても、いい兆候とは言えない衝突になるはずだ。仲裁役を名乗り出て、諌めるような振る舞いは如何ともし難く、息を潜めて静観に徹する小悪党の身の上に収まるしかない。


 だからこそ、カムラの登場は鮮烈であり、とりわけ無鉄砲に映った。屋敷での出来事が三者三様の岐路となり、浅からぬ関係にあると言っても過言ではない。再び接点を持つということは、相応の反発と軋轢が生まれて当然。謂わば、火中の栗を拾うようなものだが、見るも情けないビーマンの前にカムラは飄々と現れた。


「なんだ? 思わぬ援軍だな」


 屋敷で起こった事象の尽くを色鮮やかに思い出せるスミスにとって、カムラが二人の間に割って入る様は、隕石を見るより珍しいことのように思っているようだ。一目散にあの場を逃げ出したカムラの行動からして、今回の決断は甚だ疑問が残り、直裁にその理由を尋ねることでしか、存在意義を見出せない。庇護関係にある二人の様子をスミスは悪し様に笑った。


「まぁ、人数が増えたからといって、何も変わることはないんだが」


「相変わらず、血の気が多い」


 カムラは呆れた調子で二人の騒々しい諍いを貶める。だが、スミスはすかさずこう返した。


「当事者意識が薄いんじゃないか?」


 諍いの種を個々人の性質にあるとし、即物的な言い回しで腐すカムラの振る舞いについてスミスは鋭く切り込み、見て見ぬフリが出来なかったその行動を的確に言い当てた。


「盗みという人道から外れたことをしておいて、被害者ぶるのは筋違いだろう」


 俗世間に於ける立場の悪さを持ち出し、寄る辺がないカムラとビーマンを糾弾する。二人の眉間に寄ったシワの深さを鑑みると、それは的外れな指摘ではないことを指し示しており、押し黙るカムラを哀れむように、スミスは落ち着いた声色を操る。


「皆、同じ穴の狢さ。どこかで争いを求めている。暴力にこそ、愛があるんだ」


 この場に導かれた本質を言及され、無数の虫が背中を這いずり回るような不快感をカムラはは催す。物の価値を測る為に必要なのは、個人が持つ感情であり、それが表に顔を出す時、いつだってヒトは“暴力”という装置を利用する。“暴力”とは、物の価値を測る為に存在し、切り離して考えていいものではなかった。屋敷に於いて、血気盛んな二人の様子から生理的嫌悪感に襲われたのは、まるで鏡を見ているかのように感じたからだろう。カムラはしずしずとそれを悟り、諦観気味に脱力する、


「さぁ、あの時の続きをやろう。今度は三人で」


 スミスはそう言って笑う。

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