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仲間意識

「何をするつもりだ?」


 カイマンは決して、ぼくの身を案じた訳ではないはずだ。極めて奇異な状況ながら、立ち合わせてしまった以上、事の成り行きに気を配らねば、“アニラ”に属している人間として似つかわしくない。率先してぼくの動向を伺うカイマンの姿勢は評価に値する。


「裏切り者に鉄槌を下すチャンスがやってくるかもしれない」


 カムラは少なくとも、魔術師であるはずの女と繋がりがあり、“アニラ”に潜伏するという大立ち回りを演じた。その企みが成就したのかどうかも曖昧だが、軽々に見逃していい人間ではないことは確かである。手練手管を使って本懐を引き出す機会を設け、処遇は追って考えるとして、魔石には大いに働いてもらう。




「アイがどうやら、ベレトの思惑とは裏腹に別の問題に巻き込まれたようだ。それも、かなり深刻だ」


 他ならぬ自分が従える従者の一人が、憂き目を見ているというのに、バエルは至って平静に、それどころか笑みを浮かべてもいた。違う星から飛来してきた異星人の如き価値観の相違は、同じ世界を出自とする関係には些か思えない。もし仮に、国境を跨いだことによる環境の違いが、性格及び倫理観の形成に大きく関わっているとするなら、異世界に召喚された共通項など、親近感を抱く材料にはなり得ない。バエルへの懐疑心は決して晴れず、心を許す相手とするには腹を割って話すような機会が必要になる。もはや、異世界の住民と接しているのと半ば変わらないが、それでいい。俺はバエルを悪魔の名を冠した人間として接する意識を持ち、妙な仲間意識に囚われて、その振る舞い立ちに一喜一憂するより遥かに健康的である。


「斥候に向かわせた彼は?」


「一人では荷が重いかもな」


 俺はバエルの魂胆の尾鰭を見た気がした。状況は膠着ないし混沌としたものにあり、アイを材料にすれば俺が動くと判断したバエルは、口から出まかせの与太話を拵えた。そして、ウォードに足を踏み入れたことによって、混沌をさらに根深いものにしようとしている。真偽を見分ける慧眼でもあれば、手のひらの上を踊らずに済むかもしれないが、相手はバエルだ。趣味趣向をお見合いがてらに話すような間柄でもないし、出身を引き出そうとすれば島国根性が丸出しになりかねない。俺達が唯一、通じる部分は異世界に召喚された救世主という役目を背負った側面だけである。


「俺が、アイを助けますよ」


 例え、それが真実とは相反する偽証だとしても、軽はずみに撥ね付けるような選択は浮上しなかった。何故ならば、俺が目下の目標に掲げるアイと日浦の救出が、一度に行えるかもしれないからだ。


「時計台、それだけが手掛かりだ」

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