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9、キャンプは危険が多すぎる(前編)

キャンプ編は三部構成です。因みに殆どキャンプしません()

「さて、いよいよ明日はキャンプだ!」


 先生が言うと教室が沸いた。普通科の一大イベントであるキャンプは一泊二日で、実際にテントを張って森の中で自然に囲まれて生活することになる。慣れないことも多くて迷惑をかけることも多いが、川で遊んだり新鮮な野菜を食べたりするのは楽しいから好きだ。

 くじ引きの結果、ローズとエリックが同じ班にいる。六人一班で行動するが、あの日以来ローズと上手にコミュニケーションが取れていないので心配しかない。それにエリックもローズへの嫌悪感をあからさまにしているのだ。暗雲が立ち込めるとはまさにこのことである。そして私の場合はキャンプの次の日に原稿の締め切りが来る。まだ彼らしいプロポーズの言葉が思いつかないままで、正直焦って勉強に手を付けられない気分だった。気分転換になる事を願って荷物の準備をするのだった。


キャンプは心配していた衝突もなく、現時点では普通に楽しめている。今は川で遊ぶ時間だが、私は藻で滑って何度かこけそうになったので、他の皆に交じって遊ぶのはやめた。全く違う環境に不安もあるが、気分転換には丁度良かった。


「わっ!冷たい!」


 川に足を浸してのんびりしていると水をかけられた。エリックが悪い顔をして私を見ている。手で水をすくうとエリックめがけてかけた。顔にクリーンヒットしてびしょ濡れになっている。顔を適当に拭い、頭を振って水をまき散らしながら隣に並んで座った。


「楽しんでるか?お嬢様」

「うん、気分転換になってるよ。水も冷たくて最高」


 水を足でバシャバシャしていると、エリックも隣で同じようにバシャバシャしだした。ローズや他の皆は少し離れたところで水遊びをしている。ローズはキラキラの笑顔で今日も魅力的だ。


「ターシャはさ、あのハドリーってやつのこと好きなのか?」

「ええ!?」


 突然の爆弾発言に大きな声が出てしまう。慌てて口を押えて塞ぐが、近くにいた数人は不思議そうに私の顔を見ていた。耳まで赤くなっている私の反応を見て察したエリックは顔が引きつっている。


「あいつのこと変だと思ったことはないわけ?」

「変かな…?」

「あいつべたべたしすぎだろ」

「小さい頃からハドリーは手を繋いだり抱きしめたりなら普通にするよ?」


マジかよ…と言ってエリックは頭を掻いた。


「友達として忠告してやる。あいつだけはやめとけ!」

「えぇ?」


ビシッと人差し指を伸ばしてエリックは断言した。


「あいつなんかターシャの顔を見てる時だけ全然違うんだよ。何というか、執着されてる?下手したら監禁されかねない。絶対にあいつの前で油断するなよ。もし本当にやばくなったら『嫌いになるよ!』って言ってやれ」

「わ、わかった」

「わかったなら問題なし!」


 エリックは立ち上がってにっこりと笑う。私に手を差し出すと立ち上がるように促してきた。その手に掴まるとぐいと引っ張られる。勢い良く体が持ち上がって、むしろエリックに凭れ掛かってしまった。しかしエリックはよろけることなく私の体を支えてくれた。想像以上に逞しいことに驚きつつ、改めて良き友人がいることに心の中で感謝の言葉を述べた。



 夜、外からの音が聞こえて目を覚ます。テントから出てみると、ローズが何か触っていた。後ろから静かに近づくと、私の荷物を漁っているではないか。咄嗟に肩を掴むと驚いたように振り返って、その勢いで私を振り払った。ただでさえ暗くて見えないので無様にひっくり返ってしまう。ローズの手には鈍く光るナイフが握られている。護身用として家族に持っていくように言われていた大事な小型ナイフだ。彼女の目には狂気が宿っていた。


「どうしてみんなアンタが好きなのよ!どうしてハドリーは私を見てくれないのよ!」


ローズは馬乗りになってナイフを瞳に向けてきた。切っ先が目の前にある。


「その瞳が悪いのよ!潰れちゃえ!」

「やめて!」


 一瞬の隙を見て腕を振り払うとナイフはどこかへ飛んで行った。体を勢い良く起こすと、ローズ転がって地面に倒れてしまう。がむしゃらで森の中へ走る。ローズは本気だった。もし捕まったら本当に目を抉られてしまう。必死に逃げていると足元を見る余裕を完全に失っていた。ぬかるんでいた場所に足を入れてしまい、派手に滑る。地面が無いと気づくも既に遅くて、私は暗闇の中になす術もなく落ちてしまった。

読んで頂きありがとうございます。

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