2、日常に忍び寄る変化
本日もよろしくお願いします。
私の名前はターシャ。魔法学校普通科の二年生、座学は得意だけど実技は大の苦手。特に運動神経の悪さなら誰にも負けない自信があるくらいだ。魔法も制御が難しくて思うようにできた例が無い。好きなことは小説を書くこと。今書いている本を試しに応募したところ、気づけば出版まで話しが進んでしまったのだ。これを知っているのは両親と、名前を貸してくれた専属メイドで一番信頼しているアリスだけ。本は飛ぶように売れているが、最終巻のプロポーズのシーンが書けないままで締め切りが目前なのだ。非常にピンチである。
眠い目をこすりながら制服に着替える。朝食の席には両親揃って待ってくれている。まだ半分くらい寝ながらご飯を食べている私を見て、二人ともおかしそうに笑っていた。
「そういえば、ハドリー君が戻って来たんだってね?まだ会ってないのか?」
「まだ会ってないよ」
「また三人揃って学校に行けるようになって良かったわね」
「うん、そうだね」
お父様とお母様が嬉しそうに話しを振ってくれる。ハドリーという名前に一瞬だけドキッとしたが平然とした顔で食事を続ける。素っ気なくなってしまったのは勘弁してほしい。
ハドリーは私の初恋の相手であり、同時に失恋の相手でもあるのだから。
その後も何気ない会話をしてから、食事が終わると登校準備をしてアリスに髪の毛をセットするように頼む。自分で梳くよりもアリスに頼む方が美しくなるのだ。鏡の前に置いてある椅子に座ると、アリスは言葉で伝えずとも梳き始めた。あちこち跳ねていた銀色の髪の毛は梳かれるごとにまとまっていく。まるで一本のせせらぎのように美しく流れるのだ。アリスのおかげで腰まで伸びた自慢の髪の毛に生まれ変わることができる。
「ターシャ様はハドリー様のことになると言葉数が減りますね」
「アリスの意地悪!きっと彼は私のことなんか覚えてないし気づかないよ。こんなに地味だもの、ローズと違ってさ」
アリスに御礼を言ってから立ち上がると、玄関の前に待たせていた馬車に乗る。両親は笑顔で手を振ってくれるので、私も手を振りつつ馬車に乗る。ゆっくりと動き出すと、いつの通りの生活が始まるのだった。
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