12、プロポーズの言葉は?
最終話です。
ハドリーが物騒なことを言います。許してやってください。
完全に動けるまではエリックとハドリーがほぼ毎日見舞いに来てくれた。両親も初めは私の体を心配していたが、後半に入ってくると二人のどちらと仲が良いのかと恋バナをする始末だ。
あの日、森の中腹で私の小型ナイフを持って気絶をしているローズが発見された。既に無力化されていた彼女の手に、なぜ飛んで行ったはずのナイフが戻って来ているのか不明だが、殺人未遂のローズが学校に来ることは二度となかった。
小説は、私が大けがをしたので発売日が少し遅れてしまった。あれだけ悩んでいたプロポーズのセリフだが、思わぬ展開で最高の言葉を見つけたのだ。毎日交互に来ていたエリックとハドリーだが、何故かその日は二人とも同時に来た。二人とも肘で押し合いながら私に話しかけてくる。
「なぁ、女子に聞いたら『リンゴの実が落ちる頃に』って本が流行ってるらしいから買ってきたぜ。因みに俺も読んだけど中々に面白かった…もしかして読んだことある?」
「借りて読んだことはあるけど、ありがとう。また読み返してみるね」
「ふん」
作者の私はすでに何冊かサンプルを持っているのだが、折角買ってくれたのだから受け取らないわけにはいかない。事情を全て知っているハドリーは鼻で笑った。
「ねえ、エリックに聞いてみたいことがあるんだけど」
「ん、なんだ?」
私はアランがフレイヤにどんなプロポーズをするか予想してみて欲しいと言う。腕を組んでエリックはしばらく動かなくなった。小説のためになるとわかってか、ハドリーも思考を邪魔しないように大人しく待っている。
「確かアランは森の守護者だったよな?」
「そうだね」
「じゃあこれしかないだろ」
エリックの問いかけに私が頷くと、良いこと思いついたぜ、とでも言いたげな顔で私を見た。そして何故か現在進行形で療養中の私にベッドから出てと言う。訳も分からず言われた通りに出て立ち上がると、エリックは騎士が忠誠を誓うように膝をついて私の手に触れた。ハドリーがいる位置から凄まじい殺気が発生しているのを物ともせずエリックは言った。
「『俺が永遠に護ると誓います』……君の親友として、ね」
手に軽く触れるほどのキスをするとエリックはこっちを見てウインクをした。そして驚いて身動きが取れない私と、ショックで動けなくなっているハドリーを交互に見てエリックは楽しそうに笑う。暫くして意識を取り戻したハドリーは、わなわなと震えながら、地の底から響くような低音で言う。
「絶対殺す」
「やれるもんならやってみろーだ」
二人の言い合いを聞き流しつつ、私は小説が無事完成することを喜ぶのだった。
【終】
読んで頂きありがとうございました。
お時間あれば評価もよろしくお願いします!
最初はエリック君完全にモブで、ハドリー君無双してもらおうと考えていました。いつの間にか立派な騎士に成長していましたが。ヤンデレにはモヤモヤしてほしいので、このエンディングに落ち着くことができてホッとしました。
改めまして最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また別の作品でお会いしましょう。




