10、キャンプは危険が多すぎる(中編)
怒涛の展開です。つまり終わりに近いということです。
最後までお付き合いください。
「なんで泣いてるの?」
庭にある薔薇の迷路から泣き声が聞こえてきた。行き止まりの所に少年がしゃがみ込み顔を下に向けて泣いている。私が声をかけると涙でビショビショの顔を上げた。
「ターシャ?」
ハドリーは服の袖で涙を拭こうとするのでハンカチを渡した。零れそうなくらい大きな青い瞳が私に何かを願うように見てくる。
「ターシャは僕が泣いてても怒らないの?」
「怒らないよ」
私は泣いているハドリーの横に座った。ドレスが汚れることは気にせず、ハドリーが落ち着くまで隣に座って待っていようと決めたから。落ち着くとハドリーはなぜ泣いているのか話し始めた。ハドリーのお父様とお母様は完璧人間だ。貴族として必要なスキルをすべて持っている。だからこそ息子のハドリーへも同じように完璧を求めるのだ。二人は涙を最も嫌っている。人に弱みを見せるのと同等で、ほんの少しでも泣いたら屋敷から追い出されるのだという。今日は計算ができなくて、終わるまでご飯抜きと言われ泣いてしまったらしい。
「僕が完璧じゃないから悪いんだ。さっきローズも来たんだけど、弱虫とか泣き虫って言って怒られた。ねえ、どうやったら完璧になれるかな?」
「うーん、そうだなぁ。じゃあ大切な人を一人思い浮かべて!その人を守るためなら、何でもできるようになれるよ!」
「大切な人?じゃあ泣いてる僕を見ても怒らなかったターシャにする」
ハドリーは私に小指を出してくる。大切な約束をするときにいつも行う儀式だ。
「僕はターシャを守るために完璧な人間になると誓う。もし完璧な人間になれたら…僕と結婚してくれる?」
「うん、約束!」
二人で小指を絡めると、身を潜めて笑いあった。それからすぐハドリーは引越してしまったが、戻って来た彼は特進科に行くほどに完璧な人間になっていた。どうしてこの約束を忘れていたのだろう。思い出したと彼に伝えないと。
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