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37.Reバース

 本日二話目です。

 エイプリルフールの嘘は午後になったらばらすという地域もあるそうです。(要出典)

 以前にも話したように、《魔王》の《称号レベル》は魔王らしい行動をすることで上昇する。楽に満たせる条件が人間殺しと《配下》拡充だったためこれまではそれらを中心に達成してきたが他にも条件は設定されている。

 その一つが『《勇者》に殺害される』というものだ。魔王は勇者に倒されるもの、という製作者の酷い偏見が垣間見える。

 この条件をクリアすれば《称号レベル》が一つ上がるがそれが何だというのか。殺されては元も子も無い。

 が、《復活》手段があれば話は別だ。



《第一形態(111111P)》ランク8:十一時間かけて自身の全《パラメータ》を徐々に低減させる。


《第二形態(222222YP)》ランク8:《第一形態》により《パラメータ》が低減しきっている状態で死亡することで自動発動する。自身を無傷かつ《魔力》が全快の状態で《復活》させる。また《第一形態》による弱体化を解除する。さらに自身の全《パラメータ》を増幅させる。



 この二つは《魔王》になってから創造した《スキル》だ。RPGの魔王がよくやる倒されてからの形態変化を可能にする。形態変化と言っても姿は変わらないのだが。

 実は第一形態や第二形態が本当に《復活系スキル》かは賭けだったのだが読みが当たっていて助かった。

 まあ外れていたとしても帝国軍や聖国軍でYPは好きなだけ補充で来たので辺りが出るまで《四字熟語スキル》ガチャをするだけだったのだが。



 視点を《勇者》達に移す。

 彼らは前衛と後衛が合流し初めに倒された冒険者達の元へ向かって歩いている。彼らの遺品を回収しようとしているのだ。

 さて、そろそろいいだろう。死亡してから《第二形態》で《復活》するまでのラグ許容時間は最大で二分、アリアがこちらに背を向けた今が絶好のチャンスだ。全てをひっくり返すとしよう。

 俺の死体が《装備品》ごと消え去り頭が落ちていた場所に肉体が再生成される。《装備品》も一緒だ。

 《和光同塵》と《暗中飛躍》を合わせることで気配を極小化、《第二形態》と《変生進化》で格段に上がった《パラメータ》でもってアリアへ瞬時に肉迫する。



 最初に気づいたのは斥候も兼ねる軽戦士が。彼女が警告を発する間際でアリアも気づき咄嗟に柄へ手を掛ける。それと時を同じくしてるの彼女の首が刎ねられた。

 即死するアリア。他の仲間達は未だ体勢が整っていない。澄剣を翻しすぐさま追撃。



「〈五妖斬〉」



 石火の如く剣先が踊り聖女と軽戦士が細切れになる。

 だが快進撃もここまでだ。〈術技〉の硬直で一瞬動きが止まる。

 ボゼフと魔導士は突然仲間を三人も喪うという事態に愕然としながらも攻撃を加えてきた。歴戦の戦士だけあってどれほど動揺していようと隙は見逃さない。

 ボゼフの斬り下ろしと魔導士の〈魔術〉が動けない俺を襲う。しかし咄嗟に放たれたそれらの威力は低く《障壁》で容易く防げてしまう。



 硬直が解けた。《障壁》を消しボゼフの懐に飛び込む。元より《敏捷性》で劣っていた彼は今の俺の速度には追いつけない。すり抜けざまに斬り捨てて奥に居る魔導士に接近する。

 魔導士は〈杖術〉で抵抗するがボゼフ以下の《敏捷性》では脅威にはなり得ない。澄剣で弾き、直後に放たれた〈魔術〉ごと〈秘鋭斬〉で斬り伏せた。



 五つの亡骸に背を向け空に浮かぶ月を眺める。

 終わってみれば呆気ない。最強の《勇者》といえど《全知全能》で最大限対策を練ってしまえばこんなものか。

 戦闘は終始俺の企図した通りに運べた。

 接戦を演じることでアリアに《憤怒》を使わせる。

 敢えて殺されることでアリアを《真勇者》に、自身を《大魔王》にする。

 警戒を解いたところを不意打ちで一気に仕留める。

 そして──。



「〈大閃〉」



 背後に澄剣を一薙ぎ。蘇ったばかりのアリアが即死する。《復活》に際し《憤怒》の《パラメータ》低減は解除されていたが蘇生の瞬間を狙ったため反応すらできていない。

 今回の戦闘における最終工程、それは《真勇者》の効果で《レベル》を生贄に《復活》するアリアから《経験値》とYPを搾り取ることだ。

 仲間を虐殺されたアリアの怒りは最高潮に達しているが《憤怒》の切れた彼女がいくら怒ろうと意味はない。【魂】無きこの世界では心に力は宿らない。精神状態がパフォーマンスに影響を及ぼすのは確かだが、どれほど強い覚悟あっても身体能力の限界を超えることなど有り得ない。

 【魂】のある現実ではそんな奇跡も起こり得るのかもしれないがこの贋作の世界にそんな上等なものは用意されていないのだ。



 再び蘇ったアリアを〈クリスタルスラッシュ〉で屠る。

 三度目は〈術技〉ではないただの突きで仕留められた。《レベル》が下がったのもあるが頭に血が上り捨て身になっているため案山子を斬るように容易く殺せる。むしろ自分から近づいてきてくれる分、棒立ちの案山子よりもやりやすい。

 我が身を顧みない特攻は通常ならば脅威かもしれないが《全知全能》の前では隙だらけのカモに過ぎないのだ。



 それからしばらくは死の淵から舞い戻った彼女を即座に叩き落す作業を続けた。

 性懲りもなく特攻を仕掛けてくる彼女だがようやく《レベル》も尽きて来た。後は《百鬼夜行》の《夜鬼》に任せて他の用事を済ませるとしよう。

 昏く深く濃密に練り上げた《魔力》を自分自身にぶち込んだ。



「〈リィンカーセイション〉」



 〈超越級呪詛術〉を行使した。体内で暴走する《魔力》が既成の身体を破却して存在そのものを作り替えていく。

 肉から呪いへ。人から異形へ。《人間種》から《呪瘴種》へ。



 変化は劇的だった。打ち上げ花火みたいな速さで体が空高く伸び上がり頂点も至ったところで、弾けた。

 肉体の膨張を肌で感じる。数百倍になった身長に合わせて横幅も増大したのだ。

 腕が無数に枝分かれして太く長く伸びて行き、その先端には手指の代わりに暗く濁った紫の葉が生い茂り、果実さながらに千の眼球が()っている。

 胴体は幹の如く逞しく育ち、足だった部分が根として大地に張り巡らされた。

 錆びのような赤茶色の肌の下では重油を思わせる黒く粘度の高い液体が脈を打つ。



 やがて変貌を終えたその姿は御神木に似ていた。しかし清浄な気配を発する神社のそれとはどこまでも対照的で、ただそこに在るだけで辺りに穢れを招きそうな禍々しさがある。

 かくして《千呪魔王》は千の剣に千の拳、千の眼を宿す《千(じゅ)(げん)大魔王》として新生した。

 その身は《人間種》の枠組みを逸脱し《呪障腫:世界呪(ユグバンナ)》のものとなった。

 これにて最初に定めた計画の第一段階、十分な強さを得るのは完了だ。随分と時間がかかってしまったが今からYP集めに入るとしよう。



「なんですか……その姿は…………っ」



 剥きだしの眼球から見下ろす先には引きつった表情のアリアがいる。度重なる死により《レベル(命のストック)》は残り僅か。《抵抗力》も相応に低下しているが俺の垂れ流す《呪詛》に侵される様子がないのは《装備品》と《真勇者》の力によるものだ。

 放っておいても《夜鬼》が殺してしまうので気にせず俺は俺の役目を果たそう。



 一歩踏み出す。見た目は木のようだが生物なので筋肉もあるのだ。

 枝葉を振り乱し地を踏み鳴らしながら草原を疾走する。《木魔(トレント)》の動きを参考にしてこの肉体(世界呪)を効率よく操作している。



「《穢土》に《腐乱の呪詛》を装填」



 幹の中ほどにある水平に裂けた洞、口代わりであるそこから《スキル》の発動を宣言した。

 《穢土》は効果範囲に入ったものに《呪詛》を与える《スキル》だ。何もせずとも常時《穢土の呪詛》を撒き散らすが自前の《呪詛》をセットすれば追加でその《呪詛》も与えられる。

 効力は距離で減衰するものの《腐乱の呪詛》は殺傷力特化に仕上げたため多少弱まろうと問題は無い。俺が通り過ぎただけで森は鎮まり河は淀み街は亡ぶ。

 瞬きごとにYPが増えていく。



「発動《地獄絵図》」



 そうして得たYPで作った《四字熟語スキル:地獄絵図(259200YP)》は《百鬼夜行》の上位の《スキル》である《魑魅魍魎》の更に上位に位置する《スキル》だ。

 五百体の《獄鬼》を呼び出し俺の進路外に向かわせる。これでYP狩りのスピードを大幅に上げられる。



 それから少しして聖国の首都ユクチアが見えて来た。ユクチアは都市全体が《結界》で護られており《穢土》が効きづらい。直接手を下す必要がある。

 取り出した澄剣は俺の体格に合わせ城を一太刀で断ち切れそうなまでに巨大化している、

 枝を絡めてしっかり握り、しなりを加えて一閃。



「〈壊都薙ぎ〉」



 地面すれすれを拡張された斬撃が飛んで行く。

 普通の斬撃でも集落程度ならば滅ぼせるものに変えてしまう〈壊都薙ぎ〉、それをこんな巨大な剣で放てばどうなるかなど明白だ。自慢の聖壁など何の意味もなくユクチアはたったの一撃で滅び去った。



 これでもはや俺を阻むものは何もない。

 俺が【鏡界】に居られるのはあと三日、その間に限界までYPを集めるとしよう。

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