31.魔王変生
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称号
魔王 ランク8:悪逆の王たる証にして尊称。所有者には相応しい名と魔の頂点に君臨するための力が与えられる。
Lv1 他者を称号レベルの千倍の数まで配下にできる。
Lv3 配下の全パラメータを増幅できる。
Lv5 他者を称号レベルの百倍の数まで洗脳できる。
Lv7 自身の生命力と魔力量を増幅する。
Lv9 自身の全パラメータを少し増幅する。
Lv10 攻撃を遮る闇を纏える。
取得条件:大いなる悪業を成し遂げる。
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人間種―魔魔人王 Lv117
個体名 千呪魔王ケイタ
所持YP 380537
称号 現人神Lv-- トレジャーハンターLv10 魔王Lv1 迷宮攻略者Lv10
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帝都を出た翌日、俺に《魔王》の《称号》が与えられた。帝都とその周辺を《修羅の呪詛》で汚染したことで取得条件を満たしたのだ。
獲得までに時間差があったのは《呪詛》が充分広まるのに時間がかかったためである。石器剣の伝染範囲だけでは条件に届かなかったが伝染者達が移動し《呪詛》を広めたことでようやく《魔王》に足る悪業と見なされたのだ。
『大いなる悪業を成し遂げる』と言うと曖昧な印象を受けるかもしれないが、どういった行為が悪業になるか、どれだけすれば『大いなる』になるのかはかなり詳細に決められている。《神淵級呪詛》を〈生贄呪詛術〉で強化までしたのはそうしなければ条件をクリアできなかったからだ。
各地を回ってちまちま普通の《神淵級呪詛》を撒いても同じ成果は得られたがそうすると最悪、ルネリスと他の十二騎士を同時に相手取ることになっていた。《魔王》になる前にそうなるのは勘弁願いたかったのでわざわざ一対一ができるよう帝都で状況を調整していたのだ。
結果、《山河沈む虚空の海面》の助けもあり危なげなく勝利を掴むことができた。
YPが増えているのは帝都で暴れたのもあるがほとんどは《修羅の呪詛》のおかげだ。《修羅の呪詛》は強化と弱体化の両方の性質を持つため、《呪詛》を受けた者が殺したり殺されたりするとそれに俺も加担したという判定になる。大きな貢献ではない上、《レベル》差がありすぎるため《経験値》は雀の涙だがYPは大漁だ。YPは貢献度にかかわらず丸々もらえるのである。
以前から欲していた《四字熟語スキル》の中には《魔王》になることが作製条件のものもあったため今回手に入ったYPはそれら二つを作るのに費やそうと思う。
《個体名》と《種族》にも触れよう。既に察しがついているかもしれないがこれは《魔王》の影響である。
《個体名》は『所有者に相応しい名を与える』という効果で自動的にこうなった。
《種族》の変化も間接的にではあるが《魔王》のせいで起きた。
《変生進化》と呼ばれる特殊な《種族進化》がある。特殊な条件を満たした時に強制的に起こるものであり、通常の《種族進化》と違い拒否することはできず《進化先》も勝手に決まる。今回の場合は《魔王》の取得がトリガーとなった。
《魔魔人王》自体はそこそこ強力な《種族》であり《パラメータ》も上がったので特に文句はない。
帝都での戦果はこんなところだ。YPや《称号》が好調だった反面、《レベル》はあまり上がらなかった。十二騎士もルネリス以外は俺より《レベル》が低いため取得《経験値》が下がってしまったのだ。
これ以上の大幅な《レベルアップ》は見込めないためこれからは《経験値》稼ぎ以外を目指すこととなる。差し当たっては《魔王》の《称号レベル》を上げて行こう。
「《教唆扇動》」
出会った人間や魔物を《洗脳》し、《配下》に加えていく。《修羅の呪詛》の効果範囲からはとっくに抜けているので人も魔物も普通に生活しているのだ。
《配下》数が二百に達したことで《魔王》が《レベル二》になった。西に進みながらなおも《配下》を増やしていく。と、《魔王》の《レベル》がまた一つ上がった。
これは《魔王》になってから《人間種》を五千人殺したからだ。俺が直接手を下した分だけではなく《呪詛》の影響や《配下》に殺させた数も合わせて計上されている。《配下》の中でも強い者には人間の街へ行き暴れるよう《洗脳》したのだ。
なにはともあれ、これで《魔王レベル三》になったので《配下》の《パラメータ》アップを使える。《抵抗力》以外の全ての値を強化したので人間狩りの効率も上がる事だろう。
このように《配下》を増やす、《人間種》を殺すといった魔王らしい行いをしていれば自然と《魔王》の《称号レベル》は上がる。そう条件が設定されている。《魔王レベル》を上げるために襲われる《人間種》は不幸である。
「《四字熟語スキル》創造、《狐狸妖怪》、《百鬼夜行》」
《狐狸妖怪(541YP)》ランク4:十体の《狐狸》を《召喚》する。
《百鬼夜行(10085YP)》ランク7:百体の《夜鬼》を《召喚》する。
欲しかった《スキル》を創った後、余ったYPで作製した《スキル》を使い計百十体の魔物を《配下》に加える。《狐狸》はその場に待機させ、《夜鬼》は二手に別れさせて南北の街を襲わせる。
《夜鬼》の戦闘力はAランク冒険者に並ぶ。多くの人間を屠り《魔王》の成長を促してくれることだろう。
それからしばらくして。
殺害人数が一万を超えたことで《魔王レベル四》になった頃、俺はようやっと東大陸の西端に辿り着いた。東大陸は広大だが帝都が西寄りに位置することもあり、俺の脚力なら二日ほどで走破できた。
目の前にそびえるのは厳つい要塞。
東大陸と西大陸は眼鏡のブリッジのような細い陸路で繋がっている。その陸路の両端には国防のため帝国と聖国それぞれの砦が建設されているのである。俺が居るのは東大陸側なのでこの要塞は帝国のものだ。
軍の上層部は皇帝崩御及び帝都崩壊の報せを受けているがその情報を秘匿し戦争を起こそうとしている。
理由は二つ。今から戻ってもできることがないのと不穏分子を潰すためだ。
《呪詛》による広域汚染。それに伴う生物の大移動。それらの事態への対処はなにより急がれるが戦力面では兵士や冒険者だけで手は足りている。ならば慌てて逃げ帰り国内のゴタゴタを悟られるよりも、一当てして征服した国の兵士を使い潰してから戻ろうという腹積もりだ。
要塞の前には赤銅色の甲冑を着た帝国兵が布陣する。
この角度によって血のようにも錆のようにも見える光沢をした金属こそが帝国の覇道を支えた《夕環鉄》である。加工には特殊な技法か求められるが帝国内で大量に出土し堅く軽く熱にも強い一級品の武具素材だ。
強い武装があれば格上の敵を倒せ、格上を倒せば《レベル》が上がり強くなる。そんなサイクルを回すことで帝国は強兵を揃えて行き東大陸にて覇を唱えるに至ったのだ。
その帝国兵の前に敗残兵が並ぶ。ここからは見えないが十キロメートルほど先にある聖国側の砦の前でも聖国兵が陣形を組んでおり開戦間近といった様相だ。
要塞の中に控える兵士も進軍の合図を固唾をのんで見守っている。故に要塞の背後の俺に気付けない。一応、見張りをしていた兵士には見つかったが情報が伝達されるより俺の攻撃の方が早い。
余りのYPで創った《四字熟語スキル》を発動させる。
「《天変地異》」
要塞に災いが降り掛かった。




