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22.帝闘祭予選

──帝闘祭予選当日 昼



 《七炎の不死鎧フェニクシェル》を着込んだ俺は闘技場を訪れていた。

 今日は帝闘祭の予選日。予選参加者によるバトルロイヤルが開かれる。複数ブロックに分けて行われる予選の内、各ブロックで勝ち残った二名が本戦に進める。

 俺はCブロック、正午過ぎからの部に参加する。まだ予選だというのに闘技場は人で溢れかえっていた。



「ケイタ様ですね、確認しました。闘技場内でお待ちください」



 受付の人に参加証を見せて中に入る。本人確認などはなくこれだけで参加できる。そのため盗んだ参加証での参加や替え玉などが可能だ。

 だがこれらに対して主催者側は目立った対策を講じていない。というのもそんなことをする者は滅多にいないからだ。



 参加証には名前が記入されているのでもし盗まれた側が届け出ていた場合、即、お縄なので盗品で参加するのはリスクが高い。そもそも帝闘祭に参加するレベルの実力者に盗みを働くくらいなら街で財布をスって参加料を集めたほうが安全だ。

 また替え玉をしたり仲間と組んだりして本戦に出られても実力が無ければ無様を晒すだけである。賞金・賞品が出るのもベスト十六からなので不正をしてまで参加する旨味はない。



 そんな具合で杜撰な管理でも問題なく運営されている帝闘祭の予選がこれから始まる。中に通された俺や他の参加者達が集まったのは闘技場の舞台、地面に積まれた厚い石畳の上だ。何十人もの参加者が十分な距離を取り合えるほどに広大な面積のステージである。

 そんな舞台を見下ろす位置にある実況席の司会者が、手にしたマイクのような《魔道具》に叫ぶ。



『さあ本日三回目の帝闘祭予選だー! 準備はいいか野郎共ー!!』

『うおおおおぉぉ!!』



 あちこちにあるスピーカー型|《魔道具》から発される大音量化された司会の声と、それに負けじと轟く参加者達の喚声。それが落ち着くのを待ってから言葉が続けられる。



『知らねぇ奴はいねぇだろうが予選のルールを説明するぜ! 今、立っている舞台から落ちるか戦闘不能になったら失格! 十秒以上倒れると失格! 他の参加者を殺してしまっても失格だ! ちゃんと手加減しろよ! 最後まで立っていた二人が勝者だ! ルール説明はこれで終わりっ、アタシが鐘を鳴らしたらバトル・スタートだ!!」



 言い終わるが早いか自身の身の丈ほどもある大きなハンマーを持ち上げた司会の女性。間を置かず振り下ろされたハンマーが傍らの鐘を打ち鳴らす。

 闘技場中に響く鐘の音が予選の開幕を告げた。



「〈ストームバースト〉」



 戦端を開いたのは参加者の一人、ローブの男の〈特奥級魔術〉だった。

 吹き荒れる暴風により参加者の四分の一が脱落した。〈ストームバースト〉は攻撃範囲及ぶ威力は優秀だが殺傷能力に乏しいこのルールでは最適な〈魔術〉だ。

 〈魔術〉の効果範囲に俺は入っていなかった。仮に入っていたとしても俺の《防御力》なら〈ストームバースト〉にも耐えられたが。《防御力》が高ければ吹き飛ばし、運動エネルギーの変化にもある程度抗えるのだ。



「食らいやがれぇ!」



 何もせず突っ立っていると半裸の大男が殴りかかってきた。それだけではなく斜め後ろからも棍棒使いに狙われている。

 防御姿勢すら取らない俺を拳と棍棒が打ち据える。次の瞬間、俺に触れていた大男と棍棒は勢いよく舞台の外へと飛んで行った。



《鎧袖一触》ランク5:自身の《装備》する鎧に接触したものを弾き飛ばす。



 棍棒を失った棍棒使いが予備の短剣を取り出しながら跳び退る。追ってこない俺から距離を取りながら奮戦していた元棍棒使いだが本命の棍棒を失っていては全力を発揮できない。乱戦の中で意識を刈り取られてしまった。



 このようにして向かって来る敵だけを《鎧袖一触》で一蹴しながらしばらく待っていると残っている参加者も疎らになってきた。生き残りは互いに出方を窺っていて戦闘は起こっていない。このまま膠着が続けば魔物が放り込まれる手はずになっているが今回はその心配は要らない。

 最初に〈ストームバースト〉を使ったローブの男が〈魔術〉の構築に入る。俺を含め他の参加者は互いに距離を取ったまま牽制しあうばかりで誰も止めようとはしない。動けば標的になる危険が増すのでこのまま他の奴らに紛れていよう、という消極的な魂胆だ。

 《気配察知》から感じる気配の圧から「このくらいならギリギリ耐えられる」と考えているのもある。

 やがて完成した〈魔術〉が発動する。



「《風神の(たなごころ)》、〈ダウンバーストダムネイション〉」



 大気が悲鳴を上げる。耳が痛くなるほどの絶叫だ。

 舞台の端に立つローブの男の頭上から俺達へ吹き降ろすのは、城塞すらもチリ紙みたいに吹き飛ばしてしまいそうな《超越級》の暴風。

 〈魔術〉の風は【鏡界】のルールにより風速以上の力積を有している。そこに《ユニークスキル》が加わって更に強化されているため素のまま受けては不味い。



「〈手刃裂き〉、〈大地暴〉、〈手刃裂き〉」



 風に攻撃系の〈術技〉をぶつけて相殺する。ただの風を殴る蹴るしたところで効果はたかが知れているがこれは〈魔術〉の風だ。攻撃が当たる度に風は大きく抉れていく。

 他の参加者達も同じように〈術技〉での相殺や防御を試みていたが、それでも残っていた者の半数以上がやられた。気配の強さで大まかな威力を予想していた彼らだが直前に発動された《ユニークスキル:風神の(たなごころ)》に計算を狂わされた。地面が揺れたのと風に乗って飛んできた脱落者に巻き込まれたのも良くなかったようだ。

 舞台上にはもう片手で数えられる人数しか残っていない。



「〈離撲ち〉」



 暴風が止んで僅かに気の緩んだ最寄りの参加者達に向かって〈術技〉を放つ。帝闘祭に出るだけはあってこの不意打ちも上体を逸らして回避して見せた。



「〈飛礫撃〉」



 間髪入れず飛び掛かり蹴りつける。全身甲冑を着けていようと俺の身体能力なら苦も無く実行できる。

 相手も俺の予想外の身軽さに驚き反応が鈍る。慌てて発動された〈術技〉を力技で押し切りそのまま場外へと蹴り飛ばした。

 飛び掛かった勢いを殺すことなく着地、疾走。目指すは他の参加者だ。



 目を付けたのは杖を持った坊主頭の男。矢継ぎ早に放たれる雷の〈魔術〉を鎧任せで強引に突破して瞬く間に接近。近づくと杖を投げつけ攪乱してすかさず〈体術〉で抵抗してくる坊主頭だったが《鎧袖一触》の前にあえなく場外落ちとなった。



『予選Cブロック決着! 勝ち残ったのは烈風の支配者と派手な全身甲冑だ!』



 坊主頭が落下すると同時に試合終了を告げるアナウンスが流れる。それを聞いた俺とローブの男は出口に向かって歩き出した。

 拠点にしている家へ帰りながら闘技場での戦いを振り返る。一応剣も背負って来ていたのだが想定外も起きず抜くことなく終われた。

 明日は本戦で計画の実行日だ、気を引き締めて行こう。

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