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18.修行★

 今、俺の前には二つの《大型迷宮》がある。これらを利用して強くなるために俺はこんな山奥まで来たのだ。



 ここらで一度、俺の最終目標をおさらいしておこう。前にも言った通りこの世界は俺自身も含めて全てが作り物、紛い物の贋作だ。《全知全能》によって断片的に知り得た情報よると、地球に住まう超常の何者かが何らかの理由でこの偽りの世界を創り出したらしい。今、ここにいる俺すらも偽物であり、現実の俺は時間の停止した他の【鏡界】に保管されている。

 では偽物の俺は偽物の世界でなにをすべきか。答えの糸口となったのは管理者の言葉だった。



 あの教会で管理者は、《四字熟語スキル》の出来高と《レベル》等を合わせた総合的な『強さ』に応じて地球に戻った俺の【魔力】を増やすと言った。

 【魔力】には免疫機能を高めるくらいの効果しかないそうだが本物の俺に、現実世界に【鏡界】から干渉する手段はこれだけだ。これ以外に目標の立てようがない。

 管理者が嘘をついていない保証もないが真偽の確認は不可能なのだからあの発言は真実であると仮定するしかない。



 現実の俺の【魔力】を増やすためにこの世界で『強さ』──今にして思えばこれは《ステータス》のことだろう──と《四字熟語スキル》を最大限手に入れる。それが俺の最終目標だ。



 次に考えるのは具体的な手順だ。『強さ』と《四字熟語スキル》を最大化するにはどう行動すればよいか。

 そのためにはまず『強さ』を高め、その後でYPを集めるのが効率的だ。今の俺では国を相手取るのは一苦労だが十分な強さがあれば大した手間もなく滅ぼせる。

 もちろん《四字熟語スキル》作りも並行して行っていくが重点を置くのは『強さ』の方にする。

 そこでこの《迷宮》というわけだ。ここでなら強力な魔物といくらでも戦える。《レベル》上げにはうってつけだ。



 両手に剣を持ち片方の扉をくぐる。これが長きに亘る修行の始まりだった。




◆  ◆  ◆




 あれから十一か月が経った。俺は《大型迷宮》の《最終守護者》部屋を訪れていた。



「キュユワアアァァァゥウゥ!」



 紅蓮の炎を纏う巨大な怪鳥が威嚇の叫びを上げた。クジャクのような扇状の尾羽には赤、青、黄、緑と色とりどりの炎が模様みたいに燃え盛っている。

 対する俺は地面を蹴り雪を巻き上げながら駆ける。《守護者》が炎系なのに環境は雪原だ。熱かったり寒かったりと忙しない。

 《呪われた寿(ことほ)ぐ虹翼の耳飾りフェニビナス》の多種多様な強化(バフ)〈魔術〉がもたらすその速度は普段のそれとは一線を画す。



「キュオウ!」



 尾羽に付いた炎達の半数ほどがカッと光るとそれぞれの色の熱線を放射した。俺の《防御力》なら雪に足を取られることは無く回避は容易だ。が、元より避ける必要はない。



「《堅塞固塁》」



堅塞固塁(けんさいこるい)(3151YP)》ランク6:一時的に発動者とその《装備品》の《防御力》を激烈に引き上げる。



 押し寄せる熱線の波を《防御力》任せに強行突破する。炎には色に応じた弱体効果(デバフ)が乗っているがそこは毎度の如く《現人神》で防ぎ切った。

 その様子を見ていた怪鳥の尾羽に付いている、熱線を放っていない残り半数の炎が一斉に光度を増す。



「《光芒一閃》、〈踏藍空〉」



《光芒一閃(5000YP)》ランク6:瞬間的に《敏捷性》を激烈に引き上げる。



 元々《電光石火》で速度を上げていたが《光芒一閃》で更に加速。〈踏藍空〉も併用して動きを補助した

 直後、後方で七色の大爆発が起きる。直撃すれば今の俺にも重傷を与えうる火力の一撃は、俺が急加速したことにより空振りに終わった。

 背後の爆風すら置き去りにする速度で間合いを食い尽くし怪鳥を射程に捉える。



「〈大閃〉」



 土管みたいに太い首へと食い込んだ斬撃は〈魔術〉の盾二枚と《スキル:紺天燃焼壁》に勢いを削がれ切断には至らなかった。

 激昂した怪鳥が《召喚》した手下の鳥魔物達と共に突進してくる。怪鳥は正面から、手下達は包囲するように左右からだ。《召喚》された存在は倒しても《経験値》にならないので迷わず怪鳥の方に向かう。

 お互いが走っているので距離は瞬く間に縮まった。

 体に纏った烈火のような気勢と奇声を上げる怪鳥がその長い脚を振り上げる。尾羽抜きでも家より大きな巨体から繰り出されるその一撃は死すらもあり得る脅威である。



「《剛力無双》、《風林火山・火》、《獅子奮迅》」



《剛力無双(5000YP)》ランク6:一時的に《攻撃力》を大きく引き上げる。


《風林火山(4600YP)》ランク6:以下の効果のいずれか一つを対象に付与する。同一対象には一つまでしか付与できない。

風 《敏捷性》を引き上げる。

林 《潜伏》効果を与える。

火 《攻撃力》を引き上げる。

山 《防御力》を引き上げる。


《獅子奮迅(442YP)》ランク3:《敏捷性》と《攻撃力》を引き上げる。発動中は体力を消耗する。



 降ってきた爪を《魔力》の腕で受け止める。《スキル》を重ね掛けして《攻撃力》を大幅に増強させているため巨体の体重が乗った〈特奥級爪牙術:亡獲(なとり)〉もかなり軽く感じる。だがこのままでは爪を包む炎に焼かれ《魔力》の腕が焼失してしまう。



「〈竜爪斬〉」



 両手で持った剣を振り上げ爪を両断する。頭上で再び奇声が上がったのを聞きながら〈飛礫撃〉で怪鳥の首元まで跳躍する。



「〈秘鋭斬〉」



 居合の巻き藁みたいに斜めに斬られた首が雪上に落ち、遅れて炎の消えた体も倒れる。《最終守護者》の《生命力》でも首を落とされれば即死だ。《経験値》もYPも手に入り《召喚》された鳥達も消えていった。死体も消えその場には《ドロップアイテム》が残される。



 剣を腰の鞘に差し踵を返して出入口へ向かう。《魔力》の腕も消し完全に戦闘態勢を解いた。



「《日月星辰》、〈訃刃〉」



 俺が背を向けたタイミングで《不死鳥の熾火》により《復活》し襲い掛かって来た怪鳥、《不死灼虹鳥》を振り向きざまに斬りつける。《スキル》で生み出した刀が閃き黒の斬撃が飛翔する。不意を突いたと油断し攻撃体勢に入っていた不死鳥はいきなりの攻撃に反応が遅れた。

 斬撃を飛ばす〈剣術〉の中でも最速を誇る斬撃はタッチの差で〈防御魔術〉に先んじて命中し無防備な首を再び刎ね飛ばす。



《日月星辰(222140YP)》ランク8:常に金烏の加護を得る。常に玉兎の加護を得る。常に星辰の加護を得る。魔力を消費して《陽光の聖剣ソード・オブ・サンシャイン》、《月影の妖刀(ルナティックブレード)》、《星明りの千刃(スターライトエッジ)》のうち一つを《召喚》する。



 《最終守護者》の亡骸が二つ目の《ドロップアイテム》に変わる。《経験値》とYPも再入手した。一度の挑戦で二度美味しい、実入りの良い《守護者》だった。

 このように、【鏡界】では《復活》した相手を殺しても通常通りの報酬を得ることができる。なのでもし他者を自由に《復活》させられれば《経験値》もYPも稼ぎ放題なのだがあまり現実的ではない。



 そもそも《復活》能力自体が極めて希少だ。《全知全能》をもってしても《復活》能力持ちは未だに二十も見つけられていない。

 その中のほとんどが自身のみを数時間(から)数日に一度だけ蘇生させられる程度の能力だ。複数回、それも他人に使える能力持ちなど片手の指ほどしか居ない。



 ならば自分で《復活》手段を用意するのはどうか。こちらも非常に困難だ。この世界には何度も使えて《復活》効果のあるアイテムは存在しないため《称号》か《スキル》で獲得するしかないのだが、他者に、複数回使えるとなると等級は最低でも《ランク9》になる。

 時間にしろYPにしろさすがに手間と成果が見合わない。この怪鳥のように勝手に生き返る能力を持っている者を狙う方が楽だ。



 《ドロップアイテム》達の奥に現れた《宝箱》を開く。《復活》した《最終守護者》を何度倒しても《迷宮》踏破報酬の《宝箱》が一つしか出ないのも諦めた理由の一つだ。

 《宝箱》に入っていたのは兜付きのカラフルな全身甲冑だった。

 右肩から先が青で左は緑、胸から胴にかけては黄色でその下のフォールド ──腰や下腹部を守るスカートみたいな部分──は紫。右脚は藍色で左脚は橙、頭部を守る兜は紅色だ。

 唯一無二のセンスを感じる配色である。



 修行最終日にして目当ての《装備品》がようやく現れた。《宝箱》から《装備品》が出る確率は非常に低いというのに門出を祝ってくれているようだ。それまで着ていた鎧を脱ぎ虹色の鎧に着替える。



===============

人間種―魔人 Lv112


オリジナルスキル 四字熟語スキル作成[全知全能(封印)、泰然自若、徒手空拳、一騎当千、英俊豪傑、暗中飛躍、電光石火、紫電一閃、不眠不休、疾風迅雷、即決即断、三面六臂、大力無双、万夫不当、難攻不落(752YP)、堅塞固塁、一刀両断(900YP)、剛力無双、金剛不壊(こんごうふえ)(52000YP)、適者生存(450YP)、自然選択(4500YP)、起死回生(4444YP)、粉骨砕身(2523YP)、八面六臂(860YP)、獅子奮迅、才気煥発(31820YP)、天資英明(10400YP)、風林火山、鎧袖一触(1449YP)、弾丸雨下(1111YP)、砲煙弾雨(6000YP)、筋骨隆々(5200YP)、金烏玉兎(4910YP)、日月星辰(じつげつせいしん)、光芒一閃、 自然災害(4311YP)、教唆扇動(3000YP)、変幻自在(700YP)、和光同塵(わこうどうじん)(300000YP)]

所持YP 296184


称号 現人神Lv-- トレジャーハンターLv10 迷宮攻略者Lv10


装備 七炎の不死鎧フェニクシェル

   呪われた神金晶(オリハクリスタル)の澄剣マリノルキナ

   呪われた怪骨玉の首飾り

   呪われた行雲羊の靴

   呪われた寿ぐ虹翼の耳飾りフェニビナス

   呪われた不可侵の指環ラニジェ

   月影の妖刀(ルナティックブレード)

===============



 これで二つの《大型迷宮》を利用した修行は完了だ。

 俺がこの世界に滞在できるのは残り約二週間。その間に世界を巡り、報酬が増えるようできる限りのことをしよう。

[補足]

 使うときが来ればその時その時で説明を入れますがここで一旦新《スキル》をざっくり分類しておきます。読まなくても支障はありません。

 常時発動系は紹介する機会がなさそうなので軽く詳細も書いています。


常時発動 難攻不落(防御力上昇&デバフ耐性) 一刀両断(判断力強化) 適者生存(デバフ解除補助) 自然選択(適者生存の上位版) 粉骨砕身(スキル習熟速度上昇) 八面六臂(〈術技〉の習熟速度上昇) 才気煥発(スキル習熟&パラメータ成長率上昇) 天資英明(才気煥発を魔術系に尖らせた感じ) 筋骨隆々(攻撃力と防御力の成長率上昇) 変幻自在(身体操作上達)

随時発動 堅塞固塁 剛力無双 金剛不壊(こんごうふえ) 起死回生 獅子奮迅 風林火山 鎧袖一触 弾丸雨下 砲煙弾雨 光芒一閃 自然災害 教唆扇動 和光同塵(わこうどうじん)

複合 金烏玉兎 日月星辰(じつげつせいしん)

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