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16.決着

「で、なんでお前一人なんだ? 《大型迷宮》に行って増援を呼んで来るんじゃなかったのか?」

「それなんだが、《大型迷宮》は死んでた。原因は不明。《迷宮核》の行方が分かるまで誰も外には出せないとのお達しだ」

「はあ!?」

「こっちの事情を伝えたらAランク以上は身体検査後なら出してもいいって言ってたが奥まで潜ってる連中が戻って来るのはいつになるやら。冒険者ギルドにも寄ってみたが戦力になりそうなのは居なかったから避難誘導頼んどいた。報告終わり、そっちは?」

「《鑑定》させたがよく見えなかったそうだ。スピードは双剣使い(アリーシャ)並み、パワーは俺より高い。《スキル》は《剣術》、〈大閃〉の使用を確認。肩の《魔力》の腕は俺の〈大鋒槊〉に耐えるくらい固い。黒い剣は斬撃に合わせて衝撃波が発生する。右手の剣からは変な《魔力》を感じるが効果は分からん。こっちも《鑑定》が利かなかった。絶対当たるなよ。以上だ」



 『猛槍』のリーダーと『暗夜』がお互いの情報を交換していく。会話中も一切隙を見せないのは流石Sランクだ。彼らがこの街に来た目的である《大型迷宮》が死んだことの動揺をおくびにも出さない。俺が遅延発動の《呪詛》で《迷宮核》を壊したのはメンタルを乱すためでもあったのだが。

 とはいえ主目的である『時空』の足止めには成功した。《迷宮》が突然死んだとなれば慎重な『時空』のリーダーは《魔力》温存のために徒歩での帰還を選択する。

 これで面倒な冒険者パーティーとの接触を()けられた。《空間魔術》の使い手がいる『時空』と遭遇すると今後の計画に支障が出るのだ。



「〈群千鳥・六光〉!」



 『暗夜』の〈術技〉を合図に戦闘が再開される。話している最中に襲ってもよかったがこの二人なら戦いながらでも情報交換は可能だ。ならば〈術技〉の連発を抑えるためにも会話させて時間を稼いだ方が有益だった。

 〈群千鳥・六光〉は《弓術》と《六属性魔術》を組み合わせた〈複合術技〉だ。六属性、つまり火水風土光闇の六種類それぞれの魔力で形作られた小鳥達を弓から放つ《スキル》である。一属性につき十羽ずつ、計六十羽の小鳥が一斉に飛び立つ様は彩り豊かで目がちかちかする。



 『暗夜』の弓から解き放たれた無数の小鳥は一度空高く舞い上がり急降下、四方八方から俺へと殺到する。小鳥達は器用にリーダーと双剣使いを避け俺だけに命中していた。俺も『猛槍』の前衛達も激しく動き回っているというのに大した操作技術だ。だが数が多い分一羽一羽の威力は低く、会話の最中に後衛達がこっそり掛けていた強化(バフ)が加わってもダメージにはならない。

 小鳥達に構わず後衛に近づこうとするがリーダーが立ち塞がる。《三面六臂》の腕で防げてはいるが背後の双剣使いも厄介だ。

 そして俺の《防御力》を目の当たりにした『暗夜』は高威力〈術技〉主体に切り替えた。あちこち動き回りながら隙を見ては《魔力》でできた矢を射ってくる。対処しなくてはならない攻撃が増えて防戦一方となってしまう。

 長剣に一気に《魔力》を込め温度を上げるも彼らの動きは乱れない。



「〈バッファロォクラッシャー〉!」



 ここでリーダーがそれまで使用していた〈ライトナッパー〉を解除し新たに〈術技〉を発動させる。

 〈ライトナッパー〉や〈バッファロォクラッシャー〉は自己強化の〈術技〉だ。《体術》の〈神金拳〉に近いが《槍術》のそれは使っていると疲労が溜まっていく。《槍術》はこの手の〈強化系術技〉を複数覚えるがこれらは同時発動させると疲労速度が急上昇する。



「しっ!}



 振るわれた槍を長剣で受ける。重さを増した手応えに腕が痺れる。

 〈バッファロォクラッシャー〉は《攻撃力》と《敏捷性》を強化する。〈ライトナッパー〉でも《敏捷性》は上がるがそこに《攻撃力》上昇が加わり戦況はよりこちらの不利へと傾いた。

 リーダーが連続して槍を振るう。しなりを利用したその攻撃は一撃一撃が酷く重い。いよいよもって限界が近付き攻撃が鎧に掠り始める。

 そんな時だった。左から光の矢が飛んできた。黒剣で弾くがその隙に槍が俺の頭部目掛けて猛然と跳ね上げられた。どうにか長剣を滑り込ませるもあまりの威力に後退(あとずさ)る、ばかりか手にした武器を放してしまう。

 甲高い音と共に空を舞う長剣。一歩足を下げる俺。警戒していた《呪詛》塗れの剣が離れたのを好機と見て攻勢を強めようとするリーダーと双剣使い。



「〈大地暴〉」



 下がった足を地面に叩きつけ大地を揺らす。《攻撃力》が成長したことで盗賊達に使った時とは比べ物にならない強さの揺れが周囲一帯を襲う。

 発動に武器を必要としないため《体術》をサブウェポンとして修得する者は多い。だが複数の《武術系スキル》を実践レベルにするには時間がかかる。ましてや俺は《超越級剣術》を使って見せた。この歳で《上級体術》すら修めているとは彼らも想定していなかった。

 しかしSランクは伊達ではない。予想外の事態への混乱は最小限に留め置き、揺れる地面を蹴って距離を取ろうとした。



「《電光石火》」



 そう、距離を取ろうとはしたのだ。けれども敵の背後にいるという事実は双剣使いに一抹の気の緩みを与えた。また今回の戦闘で左手の黒剣を盾としてしか使わなかったことも原因の一つである。長剣に注意を向けすぎていた。



 硬直が解けるが早いか《スキル》で《敏捷性》を強化し振り向きざまに黒剣を真横に振り抜く。



「〈竜爪斬〉」



 《電光石火》は《紫電一閃》ほど急激な強化ではない。しかし近接戦闘においていきなり敵の速度が上がれば一瞬、反応が遅れる。彼女は慌てて右の剣で防ごうとしたが僅かに届かず首を刎ねられた。

 剣を振るった勢いを殺さず回転、『暗夜』の方に向き直り駆け出す。大地の揺れは〈術技〉発動者である俺には影響を及ぼさない。迎撃の矢は《魔力》の腕を犠牲に凌ぎ〈歩奥〉も利用してたちまちの内に彼へと迫る。《魔道具》で煙幕を張り障壁で身を守り〈上級魔術:フライングウィング〉で空に逃げようとしていたが俺の方が一手早い。飛び跳ね接近し〈秘鋭斬〉で障壁ごと斬り捨てた。

 そのまま〈踏藍空〉で宙を蹴り未だに揺れで足止めされている後衛達との距離を縮める。後衛達とリーダーを射程に捉えた俺は体を捻り〈踏藍空〉で体を支え、



「〈大閃〉」



 俺がこの世界に来てから最も頼ってきた〈剣術〉を発動させる。瞬きの入る余地もない一瞬未満の一刹那。大いなる閃きが各々に防御策を講じる後衛達を通過しリーダーに到達。槍で身を守るも衝撃に吹き飛ばされ建物に突っ込んだ。



「〈飛断〉」



 血溜まりに倒れ伏す後衛の一人に向かって斬撃を飛ばす。後衛達最後の生き残り、というより一度死んで《ユニークスキル:後出し擬死》で蘇った『猛槍』のヒーラーを再び殺害した。

 こうして後衛達は抵抗(むな)しく全滅したので残るはリーダーただ一人だ。彼の突っ込んだ建物に向かいながら落ちてきた長剣をキャッチ。そして〈飛礫撃〉で一気に肉薄し槍を蹴り飛ばして動きの鈍ったリーダーに〈九重斬〉で止めを刺す。

 ついでに店で腰を抜かしていた男も殺し俺は戦闘に勝利したのだった。

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