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15.Sランク冒険者

 領主と《悪魔》を殺し莫大な《経験値》とYPを得た俺は、レイピアを《装備解除》し反対側の壁際に陳列されていた《雲裂きの指輪》を手に取って《呪詛術》を発動する。



「〈代償の呪詛〉」



 《魔力》を集め練り上げ《呪詛》を生み出す。《装備解除》できなくなるのと引き換えに効果を底上げする《呪詛》だ。これで《雲裂きの指輪》は《呪われた雲裂きの指輪》となった。

 ちなみにこの《呪詛》が跳ね返ってくるとあらゆる《装備品》を外せなくなる《呪詛》になる。何かを代償に何かを強める《呪詛》の跳ね返りは代償だけ取られるのだから理不尽だ。



 準備が終わったので死体の転がる路地に出た。《三面六臂》の腕で長剣を振りかぶり〈術技〉を繰り出す。



「〈壊都薙ぎ〉」



 《呪われた雲裂きの指輪》の効果で一段と大きくなった斬撃が人や建物を薙ぎ払っていく。

 向きを変えて今度は黒剣を振るう。



「〈壊都薙ぎ〉」


 波紋が水面(みなも)に広がるように、衝撃が街を駆けた。

 もう一度、長剣を振るう。



「〈壊都薙ぎ〉」



 最後に駄目押しの黒剣。



「〈壊都薙ぎ〉」



 計四度の〈剣技〉を放ち終わった俺は大きく息を吐く。同一〈術技〉の連発はただでさえ体力消耗が激しいというのにそれを《超越級剣術》で行ったのだ。全力疾走した後のように疲労感がドッと押し寄せて来る。《レベル》や《スキル》等で持久力が強化されてるから息切れするくらいで済んでいるが、地球に居た頃なら衰弱死間違いなしの疲労具合だ。

 〈術技〉の疲労はその〈術技〉のために使った身体の部分に色濃く表れる。大抵の〈術技〉で最も疲労が重いのは腕だ。

 そのため《三面六臂》に疲労を肩代わりさせたがそれにより左側の腕二本が消えてしまった。限界を超えて酷使したり大きな損傷を受けると《三面六臂》の腕は消滅する。こうなると三十分経つまで再生成は出来ない。



 腕が消えたことで落下する黒剣を左手で掴み長剣も生身の右腕に渡す。そして右肩の腕を一本、左に移す。

 《暗中飛躍》を解除してそのまま待っていると冒険者達が現れた。



「さっきの攻撃は貴様の仕業だな!」



 四人組パーティの重武装の戦士がそんなことを叫んだ。俺はそのタイミングに合わせて足元の死体を蹴り飛ばす。戦士が対応を逡巡したところで後ろの魔術師が〈魔術〉で光の障壁を作り受け止めた。

 計算通りだ。



「〈竜爪斬〉」



 死体は目眩まし。その隙に〈歩奥(ぽおく)〉で詰め寄り四人一緒に斬殺する。狭い路地なのもあり一か所にまとまっていたので楽ができた。

 それにしてもBランク程度でよく俺に挑めたものだ。《気配察知》で実力差はわかるだろうに。仲間が殺されたからと言って冷静さを欠きすぎである。



 人々を殺しながら半壊した街を西へ歩いていると広い通りに出たところで〈魔術〉の集中砲火を受ける。



「よしっ、Bランク以下は全力で退避しろ! Aランクは残って俺達の援護だ!」



 早めに探索を切り上げたり街に残っていたりした冒険者達だ。Sランクパーティー『猛槍』が指揮している。



「一応聞くが降伏する気は」

「〈飛断〉」

「ねーみてぇだな!」



 『猛槍』のリーダーは瑞々しい生命力を感じさせる緑の槍で斬撃を受け流し、仲間の双剣使いと二手に分かれ弧を描きながら近付いてくる。このままだと挟み撃ちにされるので迎撃しよう。

 長剣を横に一振り。



「〈大閃〉」

「っ、《溌筋》〈五妖斬〉〈勁通〉!」



 後衛をも射程に捉えた斬撃が双剣使いの二重〈術技〉──武器を複数持つことで同時に攻撃系〈術技〉を発動させる高等技術(テクニック)──に相殺される。硬直の隙を突こうにもリーダーが攻撃を仕掛けてきたためこちらに対処しなくてはならない。



「〈鳳輦槍(ほうれんそう)〉!」



 〈鳳輦槍(ほうれんそう)〉は槍を持って飛び掛かり攻撃する〈槍技〉だ。〈飛礫撃〉に似ているが〈鳳輦槍(ほうれんそう)〉は空中でもある程度軌道を変えられる。

 急加速により相手の意表を突きやすい〈術技〉ではあるが《全知全能》で来るとわかっていれば難なく対処できる。楕円軌道で振り下ろされた槍を受け止めるべく黒剣と《三面六臂》の両腕を掲げた途端、槍が後ろへ引かれた。それにより槍は剣と腕の向こうを素通りする。

 振り下ろしはフェイク。意識と防御を上に向かわせがら空きとなった腹部を一刺しする〈術技〉を用いた武術(テクニック)

 積み重ねられた鍛錬により無駄を削ぎ落した流れるような一連の動作はそれ故に俺には対策されている。

 左足を下げて半身になりながら長剣を振るい〈術技〉を発動する。



「〈三刃乱(みはらん)〉」



 三つの斬撃が槍の側面を叩き軌道を逸らす。逸れた槍へ《三面六臂》の腕を伸ばすがその手は空を切る。リーダーに素早く引き戻されたのだ。



「〈大切斬(たいせつざん)〉」



 防御のために持ち上げていた黒剣を振り下ろす。槍の方がリーチが広く普通に振ったのでは届かないため斬撃を拡張する〈下級剣術:大切斬(たいせつざん)〉を使う。

 それを横に動いて回避したリーダーが反撃してくる。



「〈止的(とまと)〉!」



 重く鋭いが特に伸びたり増えたりはしない一見普通の刺突。だが当たった相手の《敏捷性》を下げる厄介な効果──と言っても《現人神》がある俺には無意味だが──を持っている。《槍術》にはこういった弱体効果(デバフ)付きの〈術技〉が多い。

 そんな刺突を躱しながら前に進むと向こうも同じだけ下がりながら攻撃してくる。逆袈裟に振り上げられた槍を長剣で弾く。横薙ぎを黒剣で受け止める。攻撃を捌きながらじりじりと後ろに押していく。

 呪いを宿した長剣への警戒から間合いに入ろうとしないため簡単に退かせられる。



「〈空離(くうり)〉!」



 そんな攻防を続けていると突如、リーダーが下がりながら槍の石突で地面を叩いた。リーダーの体がグンと勢いよく空高く跳び上がる。身体能力以上の跳躍は〈術技〉の助けによるものだ。

 リーダーが空中に逃れるのを見計らって矢や〈魔術〉が放たれる。『猛槍』の後衛と遠巻きにこちらを見守っていたAランク冒険者の攻撃だ。作戦では『猛槍』の前衛と共に俺を囲むはずだった彼らだが、〈大閃〉を見て近づけば死ぬと考え直し後衛達を守りながら援護する隙を窺っていた。

 街中なので〈儀式魔術〉は無いがどの攻撃も一線級の威力である。

 だが〈大閃〉の射程外まで離れていたせいで着弾までには少し猶予がある。その間に俺は弾幕の薄い部分まで移動し黒剣で斬り払う。



「〈九重斬〉」

「〈クリスタルスラッシュ〉!」



 派手な〈魔術〉を囮に接近してきた双剣使いの〈剣術〉が俺を襲う。《三面六臂》の腕でガードした。

 硬直が同時に解け剣戟を開始する。金属音が連続し同じ数だけ火花が散る。

 《ユニークスキル:ホースフォース》と〈支援魔術〉により彼女の《敏捷性》は俺に比肩するまでに高められている。息つく間もない猛攻と臨機応変な足捌きを俺の剣は捉えきれない。



「〈大鋒槊(だいほうさく)〉」



 そのとき地上に落ちてきたリーダーが槍を振り下ろした。俺は槍の間合いの外に居たが機鋒(きほう)を拡張する〈槍技〉により強引に間合いを広げたのだ。双剣使いは剣戟の中で俺がリーダーに背を向け、かつ自分が〈術技〉の範囲外になるよう誘導していたため何食わぬ顔で攻撃を続けている。

 防御のため《三面六臂》の腕を頭上で交差させるが、落下の勢いが乗った〈槍技〉の威力に俺は膝を折る。



「〈大切斬〉」



 双剣使いが距離を取りながら放った追撃を黒剣で防ぎ、リーダーへと振り向きざまに〈竜爪斬〉を放つ。リーダーはそれを難なく躱して後衛達を守るように俺の正面に立った。双剣使いは俺の背後にいるので挟まれることになる。

 このままでは(らち)が明かないとリーダーの方へ足を踏み出す、フリをして背を()らす。俺の鼻先を一本の矢が掠めた。矢は通りの先にある建物を数軒貫き最後は鉄扉に突き立った。避けなければ俺は今頃愉快な落ち武者コーデをしていただろう。

 『猛槍』の面々が舌打ちをした。



「ちゃんと当てやがれ!」

「下手くそ!」

「いやいやいやいや、アイツの感知力がイカレてんの! 君らも僕の攻撃に気付かなかったでしょーが!」



 罵倒されつつ建物の影から現れたのは単独(ソロ)でSランクパーティーにまで上り詰めた冒険者、一人なのに集団(パーティー)という矛盾を抱えた男、『暗夜』だった。

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