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12.《大型迷宮》三十四階層

 乱雑に立つ墓標と枯れ木を天井からの(かす)かな光が照らしている。動く者は時折訪れる冒険者と骸骨の魔物だけ。ここは《大型迷宮》第三十四階層、《スケルトン》溢れる朽ちた夜の墓場だ。

 といっても本当に夜なわけではなく天井の光が弱く夜のようにくらいだけだが。



 《階層石》に魔力を込め終え出入口を目指して歩いていると一体の《シャロウスケルトン Lv91》が這うような体勢で飛び掛かってきた。

 《シャロウスケルトン》は人間に近い骨格をしているが歯は牙のように太く長く鋭く発達し両手足からは凶悪な鉤爪が伸びている。〈光牙〉を使用したその突進はこの《迷宮》でも最高峰の速度だ。長剣で〈竜爪斬〉──斬撃を強化、拡張、加速させるバランスのいい〈上級剣術〉──を食らわせるも鉤爪で防がれ後方に押し返すだけに終わる。

 〈上級剣術〉で切断できなかったことから鉤爪の硬さがわかるだろう。流石はLv91と言ったところか。



 シュタリと華麗に着地を決め再度走り寄って来る《シャロウスケルトン》。俺が振り切った長剣を引き戻しながら〈飛断〉を放つのを見たヤツは斬撃を受けるため自慢の鉤爪を前に出し斬撃を止められず胸の《魔核》ごと切り裂かれた。

 知能の低い《スケルトン》では自身が《呪詛》に蝕まれ《防御力》が激減していることにすら気付けないのだ。



《呪剣渾然》呪剣神専用職業スキル:《装備》している剣に《呪詛》を宿し攻撃した相手に同種の《呪詛》を付与する。付与する《呪詛》は宿しているものより効果が落ちる。

 現在付加中の呪詛

《蒼白の呪詛》

《泡雪の呪詛》

《塑像の呪詛》



 《呪詛》、それは《魔力》で構成される《状態異常》の一種だ。魂に直接作用するため患部を切除するような治療法では治せない。

 もっとも、この世界に本物の魂など存在しないのでこの場合の魂とは個体識別IDのようなものに過ぎないが。



 以前にも話したように《呪詛》を作れば作製者にも同じ《呪詛》が跳ね返ってくる。〈生贄呪詛術〉ならば肩代わりさせられるが使えるのは《超越級》からなので新米〈呪詛術〉使いには無縁の話だ。そのためこの世界では後天的に《呪詛術》を習得する者は全くおらず、どころかその暗殺適性の高さから持っているだけで危険人物としてマークされる。

 そんな踏んだり蹴ったりな《呪詛術》だが《神淵級》まで鍛え《職業スキル:神の祟り》を手にすれば一気に化ける。



《神の祟り》マガツヒ専用職業スキル:《呪詛》を作る際、《魔力》を二倍消費することで跳ね返りを無くせる。



 〈呪詛〉が自分に返ってくるデメリットさえ克服できれば《呪詛術》は結構強力な《スキル》だ。《呪詛》をかける条件は対象を射程圏内に収めることだけなので接近するリスクも回避や防御される心配もない。だからこそ暗殺向きの《スキル》だと思われているのだが。

 《呪詛》の効果は様々で《パラメータ》低下から《衰弱》、《幻痛》、《狂乱》、《スキル》封じ、何かを代償に別の何かを強化する等々選り取り見取りだ。



 ではなぜ《守護者》や闇組織との戦いで使用しなかったのか。油断を誘うためというのもあるが最たる理由は《呪詛》が無効化されやすいからだ。

 通常の《状態異常》は《抵抗力》で付与の成否が決まるが、《呪詛》の場合は《最大魔力量》と《レベル》も加味されるので失敗しやすい。避けられない分、成功率でバランスを取っているのだ。

 先程も《パラメータ》がピーキーな《シャロウスケルトン》相手に《呪剣渾然》で《抵抗力》以外を無視してて直接付与したからよかったが、この階層の他の魔物にはまず通じない。



 そういうわけで失敗しやすい《呪詛》だが、《呪詛耐性》効果のある《装備》を身に着けている相手には更に成功率が下がる。《レベル》の低い要人でも《上級呪詛》までなら《装備》だけで防げるのだ、ましてやAランク冒険者クラスのダラス達には《特奥級》ですら通用しなかっただろう。その気になればゴリ押しできたがそんなことをするよりも普通に戦った方が効率が良いのだ。



 さて、最初に述べたように《呪詛》は《魔力》でできているという設定(・・)のため作製に必要な《魔力》は《生産系魔術》中最大だ。そんなものの消費|《魔力》を《神の祟り》で倍増させて大丈夫なのかと思われるかもしれないが俺にはこれがある。



==============

《呪われた怪骨玉(けこつぎょく)の首飾り》ランク6;装備者の《生産系魔術》に必要な魔力量を大きく低減させる。常に装備者の魔力を回復させる。

 耐久力上昇。耐久力上昇。損傷を自動修復する。

 この装備は呪われており装備解除できないが、全ての装備効果が強化されている。

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 昨夜、宿を借りた鍛冶師の遺品である。《鍛冶術》や《錬金術》も《生産系魔術》の一つなので彼も重宝していた。この首飾りの力があれば必要な《魔力》は相当軽減される。おかげでこの短期間に《神淵級呪詛》を三つも作れた。それが現在、長剣に宿している三つの《呪詛》である。

 全ての《呪詛》を長剣に突っ込んでいるので黒剣はフリーだ。



 そうこうしている内に出入口の扉まであと少しという所まで来た。目の前の丘を越えれば扉はもうすぐそこだ。



「〈離撲ち〉」



 と、その前にこの敵を倒さなくてはならない。肩から生やした《三面六臂》の腕で衝撃波を放ち迫りくる火の玉を霧散させる。

 火の玉の来た方に向けた視線の数百メートル先には火葬場から抜け出してきたかの様な骸骨、朱色の炎を纏う《イグニッションスケルトン Lv86》が立っていた。彼我の距離はかなりのものだが暗い階層の中にあって煌々と輝くその炎ははっきりと視認できる。



 その灯りに向かって駆けだすと同時に熱線が放たれる。体を限界まで前傾させることで回避。熱線は頭髪の上を通り過ぎて行った。

 その後も絶え間なく放たれる炎の弾丸に火柱、熱風、肉に食い込み爆発する炎の杭や墓石を焦がし突き進む青く燃える竜巻。

 それらを時に躱し、時に〈術技〉で打ち消し、時に《防御力》任せに突破しながら距離を詰めて行く。

 近付くほどに〈魔術〉が着弾するまでの時間は短くなり対処の難度は上がっていくが長剣の《高温耐性》もあって大して問題にならない。《全知全能》でどの〈魔術〉がどのタイミングで来るかわかるのも大きい。



 余談だが〈魔術〉の炎は本物の炎とは性質が異なる。熱と光を発生させているが物質の燃焼反応ではないので真空中でも持続し、また有害物質も発生しない。大変エコロジーだ。

 ならば水を掛けても消えないように思われるがなぜかこちらでは消火できてしまう。先ほどしたように攻撃をぶつけても消える。(はなは)だ不可思議な性質である。



 物質界の同名のものとは異なる性質を持っている、という点では〈魔術〉の風もそうだ。空気ではないので酸素は含んでいないが、かといって室内を〈魔術〉の風で満たしても窒息しない。こちらも攻撃を加えると消滅する。

 〈魔術〉周りは非常に高度で複雑なシステムになっているので細かい話をしていくとキリがない。攻撃を当てれば相殺できることと現代知識や《全知全能》があっても悪用できないことだけ覚えてくれればいい。

 ある程度近づけたので〈剣術〉を使う。



「〈壊都薙ぎ〉」



 黒剣を水平に振るい巨大化した斬撃を飛ばす。斬撃と衝撃波を《イグニッションスケルトン》は跳んで回避した。この魔物は〈魔術〉関連の能力と《敏捷性》に秀でている分《防御力》に欠けるため大抵の攻撃は避けるようになっている。〈防御系魔術〉も使えるがあくまで非常用、《魔力》は極力攻撃に回しているのだ。

 なのでこうして地上の逃げ場を無くしてやれば安易に跳躍を選択する。



「〈大閃〉」



 予想通りの位置へ跳んだ敵へ地上から長剣による一撃を見舞う。斜めに切り上げた斬撃は若干狙いを外れ腰骨を切断した。二分割された骸骨が墜落する。

 ビル三階くらいの高さから落ちたが未だ死んでいない。どうにか《魔核》を守り切ったようだ。



「〈飛礫撃〉、〈咎串(とがくし)〉」



 だが満身創痍の《スケルトン》に追撃を防ぐ余裕はなかった。〈術技〉の跳躍で近づき伸長された長剣で肋骨の奥、心臓の位置にある《魔核》を貫く。

 これでこの階層も終わり。次はいよいよ三十五階層、《大型迷宮》の《最終守護者》だ。

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