することがないセリヌンティウス
二日目、夜。寝ること以外することがない。
私の立場は罪人であるメロスの人質。王にとって余興の一つ。だからだろうか?ご飯も三食しっかりとでてどれも美味しいときた。一日目はほとんど寝ていたからよかったが起きてしまうと何もすることはない。この牢屋も薄暗くはあるがベットもありトイレまである。
中々にいい牢屋だと思う。だが、寝る以外することがない。見張りは近くにはいないが鉄格子にはしっかりと鍵がかかっている。セリヌンティウスは試しに牢の鉄格子を押してみたが……ギィィと鈍い音を立て開いた。「いやいや、これはないだろ」セリヌンティウスは思わず口に出してしまった。セリヌンティウスは慌てて閉めた。別の部屋から慌てて兵士が駆け寄ってきた。
「何か、ありましたか」何かあったというか牢がちゃんとしまっていない。
「いや、すまない少し怖い夢を見ていた」セリヌンティウスは嘘をついた。「そうですか。何もないなら別にいいのです」そして兵士は戻っていった。セリヌンティウスは深いため息をした。まさか牢が閉まっていないなんて思わなかった。確かに食事を持ってきても小さな窓から牢に入れ食べ終わればそこに置いていたら兵士が持って行っていたため気づかないのだろう。
これなら脱獄することはできるだろう。しかし、今逃げたならメロスはどうなる。おそらく結婚式の前に捕まり処刑されるだろう。なら、ドレスが仕上がる六日目くらいに逃げ出せばいいのだろうか。だが、いつ兵士が気づき鉄格子を閉めるかわからない。
いっそのことメロスを見捨て逃げるのは……いや、それなら牢に入る前に断っている。なら、メロスを信じ帰ってくるまで待つ。
五日目、夜。セリヌンティウスは一人頭を悩ませていた。未だ鉄格子に鍵がかかっていない。
待つといってもすぐ抜け出せる状況がセリヌンティウスを苦しめていた。余計なことを考えないように寝ようとするが眠れない。数日で分かったことがある。別の部屋にいる兵士の警備には結構な穴がある。なぜか、警備は一人のみで食事を持ってきたりするもの同じ人物。交代するのは一日で三回ある。
起きているときは外が気になり何度も隣の部屋を確認していた。あと約五日も待っていないといけないとなると地獄のような日々だ。
ドアが開く音がした。ご飯は終わっているから兵士が来るのはおかしいと感じ見てみるとそこには兵士を数人連れて王がきた。
王がこんなところに来る理由……。メロスが帰ってきたのか!!
「ふん、貴様まだいたのか」王がセリヌンティウスの前に立ち、おかしなことを言う。
「何をおっしゃるのですか。私は人質です。いて当たり前でしょう」王は笑っていた。
「なんだ、気付いていないのか。ほら」そう言って王はいきなり鉄格子を開けた。セリヌンティウスは驚いて声もでない。
「鍵など閉まっておらぬ。あやつは貴様を見捨てるだろう。お主も見捨てたければいつでも見捨てればいい」
セリヌンティウスは気付いた。鍵がかかっていないのではなく初めからかけるつもりがなかったのだと。
「私が、逃げたらすぐにでもメロスを殺すのであろう」
「当たり前だ。どちらか一人しか助からない。逃げたいのならいつでも逃げてもよいぞ」
王は遊んでいる。人を信用していないからこそ人が裏切るのを見て楽しんでいるのだ。
「逃げるつもりはない。私はメロスが戻るのを待つ」セリヌンティウスは叫んだ。
「いいやこない。誰しも己の命が大切に決まっておる。待っていればお前が死ぬ。死にたくないならいつでも逃げるがよい」
王は笑いながら出ていった。セリヌンティウスの決意は変わらない。メロスは必ず帰ってくると信じている。
だから、鍵がかかっていないのに気付いたが今まで逃げなかったのだ。逃げるならとうに逃げている。
メロスは必ず戻ってくる。セリヌンティウスはそう信じ瞼を閉じるのであった。