人質になるセリヌンティウス
城につき兵士に王の間まで連れていかれた。メロスは、王の目の前で兵士に囲まれている。
セリヌンティウスはメロス元に駆け寄った。「友よ、無事だったか。いつになっても来なくて心配していたんだぞ」
「すまない。王を許せなかったんだ。セリヌンティウス、君に頼みがある」メロスは少し言いにくそうだった。
「君らしくもない。頼りたいならいつものように頼ってくれ」セリヌンティウスが力強くうなずきメロスに言った。
「私の人質になってくれ」
セリヌンティウスはメロスが言った意味を理解できなかった。全くわからない。セリヌンティウスはメロスに今まで何があったのかを問うた。
メロスは王を許せず王を、殺そうとしたが失敗した。その後、捕まったメロスは妹のことを思い出した。メロスは妹の結婚式を挙げるため、王に情けをもらい、ただ一人の親友を人質にして。完結にまとめるとこういうことだ。普通ならこんな頼み聞くことはないだろう。だが、メロスは必ず帰ると約束した。ならば絶対にメロスは帰ってくる。
メロスは今まで嘘をついたことがない。ならば私の答えは決まっている。
「わかった。君が帰ってくるのを待とう。何日待っていればいいんだ」
セリヌンティウスは何日待つかはまだ聞いていない。それでもシラクスからメロスの村まで十里ほどだ。妹の結婚式の準備を考えて最速で三日、遅くして五日目には帰ってくると考えていた。その間、仕事ができないのは仕方がないが致し方ないだろう。
「すまない、セリヌンティウス。十日間、待っていてく」
「……え」セリヌンティウスは青ざめた。遅くても五日と思っていたのに十日間と言われれば驚きもするだろう。セリヌンティウスは冷静そうにメロスに尋ねた。「メ、メロスそんなにかかるのか」自分では冷静そうに言っているつもりだが声は震えている。王は笑っているようにも見えるが今は些細なことだ。
「すまない。まだドレスが出来上がってないんだ」
いやいや、確かに待つと答えたが十日も待っていたら店がやばいことになってしまう。
そもそも、メロスは妹の結婚式と親友の時間と重みが違いすぎないか。
「メロス、私にも仕事がある。もっと早くに帰って来られないのか」
セリヌンティウスはどうにか早く帰ってこれるのでは、ないのか聞いてみたが変わらなかった。「ドレスが仕上がるのが五日程かかるんだ」
「ドレスにこだわる必要はあるのか」セリヌンティウスは当然の疑問をメロスにぶつけた。親友が人質にされる中、メロスはドレスを待つだけなんて腑に落ちない。「妹は何も知らず楽しみにしている。妹に何の非はない。だからしっかりと準備してあげたい」
「いやいや、私にだって何の非もないだろう」セリヌンティウスは思はず声に出してしまった。
「すまない。だが、こんなことは君にしか頼めない」メロス土下座して頼んできた。
さっきから王が笑っているが見える。セリヌンティウスは一度待つと言ってしまったら前撤回したくはないが十日も待っていられない。
「はあ、わかった。待つよ。だが、なるべく早く帰ってきてくれ」結局、セリヌンティウスは折れることになった。「ありがとう。なるべく早く帰ってくる」
「話は終わったか」さっきまで笑っていた王が話しかけてきた。
「ああ、終わった。彼が私の戻るまで待っていてくれる」メロスは立ち上がり王に言った。メロスはそのまま出ようとしたが王が止める。
「少し待て。お主にいいことを教えてやろう。もし十日の日暮れまでに帰ってこないなら貴様の代わりにこのものを処刑する。いいか、少し遅れてやってくるといい。そしたら貴様の罪を許してやろう」王は楽しそうにメロスに告げた。
「私は絶対に遅れてこない」メロスは王をにらんだ。メロスは一度も約束を破ったことがないのは友である私が一番よく知っている。
「わかっている。余にはわかっているぞ。いいか、少し遅れくるといいそれで貴様の命は保証してやる。だから安心して結婚式の準備をするといい」メロスはセリヌンティウスの肩を力強くたたき「安心してくれ、私は必ず戻る。少しの間待っていてくれ」そしてそのまま抱き合った。「十日間が少しなのか」思わずセリヌンティウスはつぶやいてしまったがメロスには聞かれていないようだ。セリヌンティウスは少しほっとした。
メロスはセリヌンティウスにひと時の別れを、告げ城をあとにした。
王がセリヌンティウスに近づいてきた。「お前は哀れだな、友のため十日間も捕まり最後にはあいつの代わりに処刑されるのだ。実に滑稽だ」王は心底楽しそうにセリヌンティウスの肩をたたいた。「メロスは必ず戻ってくる」セリヌンティウスは王を睨んだ。「ふん、その強がりがいつまで続きだろうな。おい、こいつを牢に入れておけ」
二人の兵士がセリヌンティウスの前に現れ牢に連れていく。
これからセリヌンティウスはメロスが帰ってくる十日間、牢で過ごすことになった