青の粒子発生の地05
1話だけですが
歩いている。
広大な天空大地を歩いている。
視線の位置が高いな。さらに左右でパノラマ状の景色が見られるぞ。
ああ、これは竜の視点だ。
視点が高い上に目が顔の両側についているから、遠くまで大地が眺められる。
ああ、凄い大地だ。
美しい緑色の大地には、様々な動物や魔獣、幻獣が走り回っている。
群れで行動する草食獣類、浮遊岩から飛び立つ鳥獣類、獲物を追いかける昆虫獣類……
多様な生命が溢れ、動きがある躍動の大地! 何という大地なんだ!
俺たちが見てきた天空大地とは、まったく違う!
これが、本来の天空大地の姿なのか!
躍動する動物たちを純白の霊峰リートシュタイン山系が眺め、突き抜けるような青空が見下ろす圧倒的な大地、それがこの大地の真の姿なんだ。
竜は緑色に染まる大地を悠然と闊歩する。ここは竜の縄張りなのかな?
風は冷たいけれど、竜の体は熱いからちょうどいい。
鱗の隙間から蒸気が出て、雲をまとっているかのようだ。
浮遊岩が邪魔だけれど、近づくと浮遊岩が避けて行くな。何か反発しあっているのか?
ああ、竜も腹を空かしている。やはり食事はするよな。
獲物を求めて大地を歩めば、ふと浮遊岩の帯の下に草食獣が入っていくところに出くわした。
ヨタヨタと足元のおぼつかない、トナカイだ。
ケガをしているのか? 狩りやすいだろうな。
竜は浮遊岩の帯の下をのぞき込む。
ああ、浮遊岩が竜を避けて行くぞ。それは海を割って難民を逃がした大賢者モルーゼのよう。
それでも天を見れば浮遊岩がたくさん浮かんでいるから、天井の厚みがありすぎてちょっと薄暗い。
竜は悠然と歩けば、浮遊岩同士がぶつかる大きな音が響く。
おお、構わず進んでいくとキノコの生えた薄暗い大地に、大型のトナカイが座っている。体高三メートルはある大きいトナカイだ。
この竜の腹を満たすには足りないけれど、少しは腹の足しになるだろう。
おや? トナカイは様子がおかしい。竜が近づいているのに、まるで逃げない……
というか気づいていない……
こちら側を向いて、座っているだけ……
違和感に、トナカイをよく見れば、上から薄い薄い、薄い水色の霞が降り注いでいる。
上を見れば、浮遊岩にぶら下がって水色の翅を震わせる、大きさが一メートルほどの蝶蛾。
その蝶蛾の降らせる霞の下で、動かないトナカイ。
霞に包まれた背中や首の根っこ、胴体に複数の何かがくっついている。
何だ?
それは、茶色の翅の蝶蛾だ。
大きさはいずれも一メートルほど……それが複数しがみついている。
複眼と複眼の間にある顔面は、恍惚とした表情で笑みを浮かべている。これは美味い食事にありつけたときの表情だ。
と周囲を見れば、他にも多数いる。
巨大ネズミにしがみつく茶色蝶蛾や、巨大ウサギにしがみつく茶色蝶蛾、肉食獣にしがみつくそれもいる……水色蝶蛾が放つ淡い霞の中で、一匹の動物に茶色の蝶蛾が複数しがみつき、美味しそうな表情を浮かべている。
竜は周囲を俯瞰する。
薄暗闇の大地の中、浮遊岩の至るところに水色に光る翅がしがみついて、水色の霞を落としている。その下には動物が座り、茶色の蝶蛾がしがみついているんだ。ああ、恍惚とした表情の蝶蛾がたくさんいて気持ち悪い。
どうやら水色蝶蛾が餌を集め、茶色蝶蛾が生命エネルギーを吸い取って食すようだ。
ここは、そういった蝶蛾の棲息地なんだ。
水色蝶蛾が催眠性の鱗粉を落とし、その鱗粉を吸い込んだ物は操られ、棲息地に誘引されて来れば、待ち構えている茶色蝶蛾に生命エネルギーを吸い取られる……
竜はこの霞が誘引と催眠を促す特殊な鱗粉だと気づいたようだ。
大地には、何体もの巨大草食獣類が倒れている。
生命力を吸われ、霊力もなくなり動けなくなった動物たちだ。
竜は「これはいい」と思ったようだ。
わざわざ狩りをしないでも、ここに倒れているものを狩ればいいのだから。
竜はその日から、動けなくなった動物たちを食べるようになった。
倒れた草食獣を食べに来た肉食獣が、水色の霞に捕らわれて眠らされ、生命エネルギーを吸い取られて行く様を見ながら、竜はその肉食獣も狩った。
竜は蝶蛾に危険性を感じなかった。この鱗粉は、霊力が弱くさらに霊力が少ない動物には効くが、幻獣たる竜の強力で大量な霊力を奪うにはあまりに弱い。その上、熱に弱いようで、蒸気の息を吐けば消滅する。自分の体内に入っても、高温の呼吸と体温で、消滅してしまうのだ。
うまく利用できる昆虫獣類だ、と思ったようだ。
蝶蛾たちはやがて交尾し、産卵し、力を使い果たして次々と死んでいった。寿命は一年ほどだろうか。
竜は蝶蛾が卵から孵るのを待った。早く孵化しないかと、蒸気で温めたり、霊力を送ったり、生命力を与えたりした。
数か月後、蝶蛾は卵から孵った。幼虫ではなく、成虫として卵から出てきた。
蒸気で温めた卵は死んでしまったようで孵化しなかった。
霊力や生命力を送った卵は特に変化はなかったが、ただ一匹だけ翅が他の蝶蛾よりやや青みがかった蝶蛾が孵化した。ほんの少しの青みだが。
その少し青い蝶蛾は、他の蝶蛾よりも鱗粉を多く出し、誘引の力が強いように感じた。
他の水色蝶蛾の鱗粉は風に乗ってもやがては大地に吸収され消えて行くのに対し、少しだけ青みが増した蝶蛾の鱗粉は大地への吸収が遅かったのだ。
竜はこの少し青い蝶蛾を強化して行けるのではないかと思った。
竜はその青い蝶蛾が成長し交尾期を迎えると、より多くのメスと交尾できるよう近くの水色蝶蛾を間引きしていく。選択と集中か……
すべての蝶蛾が散乱を終え、死滅すると、残された卵に再び霊力や生命力を送った。
やがてその卵から孵った蝶蛾のうち、また一匹だけ翅が他よりも青いものが生まれた。
心なしか、以前よりも翅が青くなっているではないか。
体も一回り大きくなり、その分鱗粉を多く生み出すようになった。
また青さを増した鱗粉は大地に吸収・分解されるまでの時間が遅くなった。
さらに誘引の力も、効果時間も、明らかに強くなっていた。
善い事づくめだった。
竜は自分の大きな翼で風を起こし鱗粉を広範囲に撒いた。
すると青の鱗粉は風に乗ってさらに遠くまで飛び、さらに多くの動物が誘引されて来た。
それからは、少し青い蝶蛾が生まれるたびにたくさん交尾できる環境を整え、卵が生まれるたびに霊力や生命力を与え、翅をより青く、体もより大きく育つよう、改良していった。
そう、品種改良だ。
霊力や生命力の与え方を工夫して卵を孵化させる。
世代を重ねるに連れ、青みと鱗粉が強化される蝶蛾に楽しみを覚える竜。全体的に大型化もしてすべての蝶蛾も二メートルを越えるようになった。寿命も少しずつ長くなって行く。
さらに数世代、自分の霊力や生命力を与え続けていった結果だろうか、青の鱗粉には火の属性が感じられるようになった。ある意味、我が子のように可愛く感じ始めていく。
竜は蝶蛾の改良を何年も何年も続けた。
結果、ついに翅が真っ青で、体も十メートルを超える大物を作り出すことに成功した。
竜は満足だった。これでより遠く、より強く、誘引の鱗粉を撒けるのだ。
だが、巨大青蝶蛾の力は竜の想像を超えていた。
巨大青蝶蛾はやおら羽ばたくと、青い鱗粉は霞となって美しく空間を満たす。美しい霞のオーロラがゆらゆらと舞をまう。
感謝の宴だろうか……ここまで進化させてくれた感謝の。
竜は初めて見る青雲のあまりの美しさに見惚れて心を奪われる。こんな素晴らしい光景を見せられようとは……
だがそれは、危険な芸術の雲だった!
巨大青蝶蛾の攻撃だったんだ!
巨大青蝶蛾の鱗粉は、竜の鱗の隙間から入ると竜の霊力を吸い取り、石のように結晶化して竜の動きを封じることとなった。
竜の強力な霊力が仇となったのだ。
蒸気を発して消滅させようにも、一度結晶化し霊石となった石は火の耐性を帯びて消滅させられない。力づくで動こうとすれば、すぐに追加の鱗粉が撒かれ、身動きできなくなる。
身動きの取れない竜は、自ら作り出した青蝶蛾に戦慄を覚えた。
その感情のない黒い複眼は、チカチカと瞬き動けなくなった竜を捕らえる。目玉がないのに竜を見ていることが分かる……
複眼と複眼の間にある顔面は、満面の笑みで竜を見つめる。
気づけば全ての蝶蛾が自分を満面の笑みで見つめている。
動けない竜。見つめる蝶蛾たち……
”アリガトウ……”
巨大青蝶蛾の顔面が口を開く。
マジか! 知性がある! 巨大青蝶蛾には、知性がある!
言葉を発している!
”アリガトウ……アリガトウ”
満面の笑みの巨大青蝶蛾。
ジリジリと近づいて来る、生まれたての蝶蛾たち。
すべての蝶蛾たちの顔面が、同じ笑みで竜を見つめる。
竜を餌だと認識し、笑みを浮かべて近づいてくる蝶蛾たち。
動けない、竜!
動けない! 動けない!
何もできない!
次の瞬間、数えきれないほどの口吻が解き放たれた……!!
■コークリットの視点
「うおおおおっ!」
俺は思わず叫んだ! 口吻が身体中に突き立てられた感触が! 気持ち悪い!
「「うわっ! びっくりしたっ!!」」
「「どうしたっ!?」」
俺を取り囲む面々の驚愕の表情!
どうやら俺は竜の数年分の記憶を一瞬で体感したようだ!
「竜の思念を捉えて過去を体験しました!」
「「竜の思念!?」」
竜は待っていたんだ! この蝶蛾を倒せる存在を!
俺は体験したことを皆に伝える!
「「マジかよ」」
「「竜が、作り上げた存在なのか……」」
「そうです。これでほぼすべての謎や疑問が解けました!」
予測と結果
・予測…青の粒子は、霊的な力を操る幻獣の細胞の一部(鉱物でも植物でもないため)
⇒粒子は青い蝶蛾の鱗粉だった。鱗粉に火属性の霊力を感じたのは、スチームドラゴンの火の属性が伝承されたもの
・予測…目的は肉か霊力を捕食するために散布する
⇒生命エネルギーを捕食するために散布する
・予測…本体は動けないか動きが遅いタイプの幻獣(餌を操って自らの元に誘導するので)
⇒蝶蛾は飛べない。歩いて移動はできるが、遅いと思われる
・予測…本体は大きいか、大きくないなら数が多い
⇒青蝶蛾は大きい。小さい蝶蛾たちもたくさんいる
残る謎の回答
・謎…なぜ、今のタイミングでこのような怪異になったか?(過去に存在しなかった怪異。過去に存在したとしたら、なぜ今回はここまで大きくなったのか?)
⇒過去から存在した「力の弱い蝶蛾」を竜が自らの生命エネルギーや霊力を与えて、品種改良し、強化して作り上げた存在。強化しすぎて、作り出した竜さえも制御不能になった。
「コックリよう、もう放っておこうぜ。竜の自業自得じゃねえか」
ハルさんが頭をボリボリ掻く。
俺もそう思う! 竜に人間の愚かさを感じる。人間も欲望によって様々な開発や乱獲をし、自然を壊して自らの首を締めることが多いからだ。
「いえ! そういう訳には行きません!」 俺はマズイ事実に気づく「竜の記憶から、蝶蛾たちの寿命はせいぜい一年だったのですが、今はすでに二年も生きています!」
「「寿命が延びた?」」
「動けない竜から生命エネルギーを吸い取ることで、全体的に寿命が延びているようです!」
「「延びたらマズイのか!?」」
「マズイです! 卵を生む回数が増える可能性があります!」
「「マジかっ!?」」
そう! 一年の寿命から一回しか生むタイミングがなかった蝶蛾の寿命が二倍に増えた! 卵を生む回数が増える可能性がある! 可能性だけで済んでほしいが、最悪を想定しないといけない! 相手は魔獣なんだから!
俺は千里眼をより広い範囲に向ける!
「うおおっ!(驚愕)」
「「どうした!?」」
「卵が! 一面に!」
コロニーの奥へと千里眼を送れば、青い霞が棚引く大地に異様な光景が……異様、異様だ! 予想以上だ!
「「何個だ!?」」
「たぶん二千以上はある!」
「「二千以上!?」」
予想以上だった! 寿命が延びたことで卵を生む量も増え、なおかつ竜が間引いていないので卵は二千以上ある!
「うおおっ! これもヤバい!(驚愕②)」
「「何がだ!?」」
「十メートルサイズの巨大卵が! 五つ!」
「「五つ!?」」
「「マジかよっ!?」」
青い霞の大地には、他よりも明らかに巨大な卵が小さな卵を見下ろしている! 筋がたくさん入った巨大な卵は、一部が不気味にボコッボコッと動いているんだ!
明らかに、巨大青蝶蛾を上回る霊力反応!
「と、とんでもない奴がいる!」
「「とんでもない奴!?」」
とんでもない奴が、五匹! 今にも生まれようとしている!
うおお、巨大卵には複数の蝶蛾がまとわりついている! サボテンに咲く花のように、蝶蛾が卵の表面で花のよう! 何をしてるんだ!? 守ってる!? おしりを卵につけているぞ!
「分かった! 生命エネルギーを与えているんだ!」
「「何だって!?」」
「この青蝶蛾たちは、生まれた自分の卵に自ら生命力や霊力を送り込み、次世代の! さらに強力な青蝶蛾を作ろうとしているんだ!」
「「マジかよ!?」」
「「竜のやり方を覚えた!?」」
「「究極の巨大青蝶蛾を自ら作る気か!」」
そう! 究極の蝶蛾を作ろうとしているんだ!
竜がやっていたことを学んだ!? 本能か!?
動けない竜はオークたちによって機械的に食事を口に入れられ、巨大青蝶蛾の『 生ける生命エネルギー源 』として生かされ続ける!
蝶蛾たちは、自ら巨大青蝶蛾を作れる体制が出来上がってるんだ! 竜が生き続ける限り数百年でも!
「巨大青蝶蛾は今後も強力な次世代を作り続け、さらなる青の粒子を散布することで、生態系を完全に破壊する可能性がある!」
「「ヤベエッ!!」」
今でさえ、数千キロの距離を隔てながらも人間界まで到達した青の鱗粉だ。今後、巨大青蝶蛾が増えるようならば、被害はさらに甚大になる!
「「で、でもよ! この天空大地からは降りれないんだろ!?」」
「「そ、そうだよ! 降りたら昆虫獣類は重いからって言ってたよな!?」」
「それは自分の推測です! 本当はどうか分かりません!」
そう、天空大地から降りれないというのはあくまでも推測だ! 違う可能性がある!
特に! 竜の霊力を得た巨大青蝶蛾なら、推測を上回る可能性がある! 最悪を想定すれば、下界に降りられる可能性も考えなければ!
「く、駆除しないと!」
とんでもないことになる! とんでもないことになるっ!
生まれる前に! 孵化する前に!
最速で! 最短距離で! どこから!? 最短最速ルートは!?
「うおおっ!?(驚愕③)」
「「今度は何だよ!?」」
「何だこの巣の構造は」
「「構造!?」」
最短最速ルートを探そうとしたら! コロニーは、青い霞で見えにくかったが、よく調べれば驚くべき構造に気づかされる! 卵の領域と孵化した成虫の領域、餌となる動物の領域の三つに分かれている! 蟻や蜂の巣のように目的別に分けている! 知性を持ってプランテーションしている!
「うおおっ!?(驚愕④)」
「「またかよっ!?」」
「「今度は何だ!?」」
「中身のない巨大卵が! 二つ!」
「「何だって!?」」
「「孵化した!?」」
孵化したやつがいる! どこだ!? まだそこまで遠くに行っていないはず! 孵化した成虫のコロニーはどうだ!? いた! デカい成虫が二匹! 一匹は鮮やかな青! もう一匹はっ!
「うおおっ!?(驚愕⑤) 何だこいつっ!? 何だこいつっ!?」
「「もうやめれ!」」
「「今度は何なんだよ!?」」
「雌雄同体! 雌雄モザイク!」
「「雌雄モザイク!?」」
右の翅は鮮やかな青で左の翅が茶色! 触覚も右はゲジゲジ、左は一本! 雌雄同体のモザイク! 一匹でオスでありメスである、自然界では極めて珍しい存在!
「「雌雄モザイクだとマズイのか」」
「最悪の場合! 一匹で生殖と産卵が可能になるかもしれない!」
「「一匹で!?」」
この一匹が別の場所に行くだけで、巨大蝶蛾の活動範囲は劇的に広がる可能性がある! 自然界では雌雄モザイクは生殖機能があるか分かってないが、こいつは! 魔獣! 最悪を想定した方がいい! 最悪を想定しないといけない!
「どうすんだ!? この人数で行けるのかよ!?」 ハルさんが指折り数え「向こうは巨大青蝶蛾三匹に通常の蝶蛾、さらにオークどもだろう!?」
「そうです!」
「一旦戻って戦士の人数を整えるか!?」
「「確かに!」」
俺は敵の戦力を見積もる。通常の蝶蛾がざっと千匹以上! オークどもは餌の領域にいて、おそらく全部合わせると二百……
こちらは獣人と妖精の戦士三十名!
無理だ!
「雌雄モザイクは餌の領域に……まだ遠くへ行かないはず……あ、ああっ!!(驚愕⑥)」
「「もういい加減にしてくれ!」」
「「何なんだよもうっ!」」
「餌の領域でオークが獣人たちを!」
「「何だと!?」」
オークを探していたら、拉致された獣人たちもいた! ここまで連れて来ていたんだ! ケンタウロスやサテュロス、リーフロスなど五十人近くいる!
獣人たちは青の粒子を吸い込んだのか、立ったまま寝ている! ああ、水色や茶色の蝶蛾が獣人たちに近づいて行く!
「くそっ! 助けに行くぞっ!」
「電光石火で人質の皆を背中に乗せれば!」
「「おおっ!」」
色めき立つ獣人たち! 今すぐに駆け出して行かんばかりの勢いだ!
待て待てっ! この人数で行って助けられるわけがない! 逆に捕まるぞ! せめて策を練らないと!
「待たれよ!」 ジーク族長が俺を指さし「今から神殿騎士殿が救出作戦を練る! 寡兵(少ない兵)の我々でも対応可能な策を聞こう!」
「っっ!?(驚愕⑦)」
ええっ!? いきなり何を!? で丸投げ!? ちょっと待ってくれよ!
でも今すぐ駆け出して行きそうだった獣人たちの動きが止まる! 族長の狙いはこれか!
「本当か! コックリよ!」
「どんな策がある!?」
「「頼むぞっ!!」」
一気に詰め寄ってくる獣人たち!
うおお、仲間たちと生態系の命運が! 俺に!? こんな一瞬で何が思いつく!?
ええい、弱音を吐く時間もない! 話しながら考えろ! 思考を爆発させろ!
敵、味方、地形、環境、すべてを思い出せ!
巨大青蝶蛾:二匹、知性あり
巨大雌雄モザイク:一匹、おそらく知性あり
二メートル級蝶蛾:千匹以上、知性は不明
通常卵:二千個以上
巨大卵:五個
ボスオーク・オークの一団:二百前後
獣人の人質:五十人前後
味方の戦士:三十
エルクやアンデルサルクス:十五
考えろ! 考えろっ!
「取り急ぎ、分かっている点や警戒する点などを先にしましょう!(そこが整理できればたぶん良い案が浮かぶ!)」
「「よしっ!」」
「まずは鱗粉への対応です! 竜は鱗粉を体に浴び、体から漏れ出る霊力反応で鱗粉が白石化し、動けなくなっています! まずはできる限り肌の露出を控えてください!」
「「おおっ!」」
「風の守りは脆いので、吸い込まないよう鼻と口は布でガードです!」
「「分かった!」」
「獣人と妖精は離れないよう! 魔法と直接攻撃でお互いをフォローしてください!」
「「おう!」」
「蝶蛾は、動きが遅く攻撃手段は口吻によるものだけです! 攻撃範囲は二メートル超! 鋭いので弓矢に似ています! 口吻が触れたら、生命エネルギーの吸い取りが始まりますので注意ください!」
「「了解!」」
蝶蛾は牙や爪はないが、素早い口吻の攻撃は考えられる! 警戒が必要だ!
とりあえず状況確認や大まかな対策を話していたら、メインとなる作戦が浮かんできた!
「行けます! 『 三つの策 』で蹴散らしましょうっ!」
「「三つの策!!」」
「「おおっ!」」
「「やってやるぜ!!」」




